科学的エビデンスに基づく「新シックハウス症候群に関する相談と対策マニュアル(改訂版)」の作成

文献情報

文献番号
201525012A
報告書区分
総括
研究課題名
科学的エビデンスに基づく「新シックハウス症候群に関する相談と対策マニュアル(改訂版)」の作成
課題番号
H26-健危-一般-006
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
岸 玲子(北海道大学 環境健康科学研究教育センター)
研究分担者(所属機関)
  • 荒木 敦子(北海道大学環境健康科学研究教育センター)
  • 西條 泰明(旭川医科大学医学部)
  • 柴田 英治(愛知医科大学医学部)
  • 河合 俊夫(中央労働災害防止協会大阪労働衛生総合センター)
  • 東 賢一(近畿大学医学部)
  • 大澤 元毅(国立保健医療科学院)
  • 吉野 博(東北大学大学院工学研究科)
  • 大和 浩(産業医科大学産業生態科学研究所)
  • 増地 あゆみ(北海学園大学経営学部経営情報学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
6,068,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
シックハウス症候群(SHS)は、従来は建材等の化学物質を主たる問題として、ホルムアルデヒドなど13物質の指針値が示されるなどの対策がなされた。しかし、室内環境の問題は化学物質に留まらない。本研究は、研究代表者らが平成19年に作成した「シックハウス症候群に関する相談と対策マニュアル」にそれ以降の最新知見を加え、国内外の情報を体系的に整理し直し、科学的根拠に基づく室内空気質およびシックハウス症候群に関する「マニュアル改訂新版」を作成し、我が国のシックハウス症候群の予防や室内環境対策に役立てることを目的としている。
研究方法
平成27年度は、以下に示すとおり、これまでの知見の整理と情報収集を行い、マニュアル改訂新版を執筆した。
1)シックハウス症候群・シックビルディング症候群に関する疫学研究
2)高齢者におけるシックハウス症候群
3)ホルムアルデヒド曝露指標としての尿中ホルムアルデヒドの活用
4)室内環境に関わる因子が健康に及ぼす影響に関する研究
5)狭小空間の空気質、温度、湿度に関する調査研究
6)室内の受動喫煙、三次喫煙の曝露に関する研究
7)室内環境規制、化学物質過敏症の疾患概念およびシックビルディング症候群の課題に関する調査
8)建築物の特性・用途別の環境特性と環境衛生に関する研究
9)健康・快適な室内環境を実現するための設計法に関する調査
10)室内空気質汚染の健康影響に関するリスクコミュニケーション
(倫理面への配慮)
過去に実施した疫学研究は、すべて北海道大学並びに各大学の倫理委員会で承認され、インフォームドコンセントを得て実施した。
結果と考察
PubMed等を用いた情報収集、これまでの知見の整理の結果として、以下の内容を含むマニュアル改訂新版を執筆した。
1)これまでの厚生労働研究班では、①全国6地域で、新築戸建て住宅6080 軒と継続する3年間の自宅環境調査(425軒とその全居住者1479人)、②全国5地域の国公立小学校22校で調査票調査 (10871人)と学童の自宅環境調査(178軒)を実施した。得られたデータから、住宅あたりのSHSの有症率は3.7%であった。SHS症状によってリスク要因が異なり、症状別の予防や対策が重要である。室内環境要因としてホルムアルデヒド13化合物、VOC類29化合物、準揮発性有機化合物(SVOC)、微生物由来MVOCを測定し、日本の住宅における曝露実態とSHSとの関連について記した。
2)諸外国の室内環境規制やSHS研究の世界的な動向について記載した。
3)SHSのリスク要因として、化学的要因、生物学的要因、物理学的要因、喫煙・受動喫煙・三次喫煙、微粒子・ガス状物質について、サンプリングや測定法、健康影響に関する知見を整理して記載した。
4)建築衛生の視点から、汚染濃度を低く維持し、快適な室内環境をつくるため、「汚染発生と流入を抑える」「換気により速やかに希釈・排出・排除を図る」方策を記載した。
5)最近の室内環境に関する問題として、仮設住宅、浸水被害、あるいは夏の熱中症・冬のヒートショックに関する方策を記載した。
6)文献調査と、札幌市における個別インタビュー調査の結果から、室内空気質汚染の健康影響のリスクコミュニケーションのあり方について、重要な点を記した。
7)室内環境に関わる体調不良相談への対応として、シックハウス症候群や、いわゆる化学物質過敏症の場合に注意すべき重要な点を記載した。
この結果、序章には、室内環境の重要性を疫学および建築学の両面から記載した。第Ⅱ部は、疫学研究に基づく室内環境による健康影響やいわゆる化学物質過敏症に関する知見、世界の規制の動向についてまとめた。第Ⅲ部は健康影響を及ぼす化学的要因、生物学的要因、ダンプネス、受動喫煙、粉塵、建築学的な要因を示した。第Ⅳ部は建物の用途や構造による課題、仮設住宅、居住者の年齢や季節に応じた予防策、熱中症などを整理した。第Ⅴ部では、リスクコミュニケーションや住宅や職場での支援、本態性環境不耐症などの症状を訴える相談への対応を述べた。最後に資料として、関連法規やガイドライン等を記した。
結論
SHSの実態や対策を疫学および建築学の両面からまとめたマニュアル改訂新版を全5部11章に構成した。保健所職員や地域・職域・学校の保健担当者の利用により、SHSに関する正しい知識の普及と、質問や相談に対して、科学的根拠を踏まえた回答が可能になる。今後は、「シックハウス症候群に関する相談と対策マニュアル(改訂新版)」のPDF配信をWEB公開するとともに、より効果的な活用に向けて、新聞やメディア等を通じた周知や啓発を実施する。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201525012B
報告書区分
総合
研究課題名
科学的エビデンスに基づく「新シックハウス症候群に関する相談と対策マニュアル(改訂版)」の作成
課題番号
H26-健危-一般-006
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
岸 玲子(北海道大学 環境健康科学研究教育センター)
研究分担者(所属機関)
  • 荒木 敦子(北海道大学環境健康科学研究教育センター)
  • 西條 泰明(旭川医科大学医学部)
  • 柴田 英治(愛知医科大学医学部)
  • 河合 俊夫(中央労働災害防止協会大阪労働衛生総合センター)
  • 東 賢一(近畿大学医学部)
  • 大澤 元毅(国立保健医療科学院)
  • 吉野 博(東北大学大学院工学研究科)
  • 大和 浩(産業医科大学産業生態科学研究所)
  • 増地 あゆみ(北海学園大学経営学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
シックハウス症候群(SHS)は、従来は建材等の化学物質を主たる問題として、ホルムアルデヒドなど13物質の指針値が示されるなどの対策がなされた。しかし、室内環境の問題は化学物質に留まらない。本研究は、我が国のシックハウス症候群の予防や室内環境対策に役立てることを目的に、研究代表者らが平成19年に作成した「シックハウス症候群に関する相談と対策マニュアル」にそれ以降の最新知見を加え、国内外の情報を体系的に整理し直し、科学的根拠に基づく室内空気質およびシックハウス症候群に関する「マニュアル改訂新版」を作成する。
研究方法
班構成は公衆衛生学、環境疫学、衛生学、産業医学、建築学、リスク心理学の専門家である。これまでの疫学研究から得られた知見の整理、PubMed等を用いた国内外の科学的研究の整理、規制等に関する情報収集を行い、マニュアル改訂新版を執筆する。
結果と考察
以下の内容を含むマニュアル改定新版を執筆した
1)研究代表者らによる全国規模の疫学研究から、既に国際誌に出版されている成果をSHSの予防と対策としてまとめた。具体的には、
①住宅あたりのシックハウス症候群有症率は3.7%。カビ臭・結露といった湿度環境がシックハウス症候群のリスクとなる。
②ホルムアルデヒド濃度はシックハウス症候群の発症と量反応関係を示し,連続する2年間の濃度差を5分位としたとき、最も濃度が下がった群と比較し、最も上がった群では新たなシックハウス症候群発症のリスクが3.3倍だった。
③連続する3年間でホルムアルデヒドやトルエン濃度は減少したが,リモネン濃度はむしろ増加した。居住者の住宅内持込による化学物質の濃度増加に注意が必要である。
④ダスト中フタル酸エステルDEHP,有機リンTBEPなどの濃度は欧米よりも日本では濃度が高かった。DEHP濃度は内装材としてPVCの使用量が多い程高い。
⑤フタル酸エステル類DiBPとDEHAが喘息のリスクを有意に上げ,DEHPがアレルギー性結膜炎を,BBzPとDEHPがアトピー性皮膚炎のオッズ比を有意に上げ,大人よりも学童のほうがリスクは高かった。
⑥難燃剤TNBPが喘息の,TCIPPとTDCIPPがアトピー性皮膚炎のオッズ比を有意に上げた。
⑦尿中フタル酸エステル代謝物濃度は大人(両親)よりも学童が高濃度であった。
⑧Rhodotorula、Aspergillus等の真菌やダニアレルゲン量はシックハウス症候群のオッズ比を有意に上げた。
⑨MVOCのうち1-octen-3-olはシックハウス症候群粘膜刺激症状,アレルギー性鼻炎や結膜炎と有意の関連を認めた。
⑨室内のダンプネスや燃焼暖房機器の使用は,子どものアトピー性皮膚炎や喘息のリスクを有意に上げた。
2)諸外国の室内環境規制やSHS研究の世界的な動向について記載した。
3)SHSの化学的要因、生物学的要因、物理学的要因、喫煙・受動喫煙・三次喫煙、微粒子・ガス状物質について、サンプリングや測定法、健康影響に関する知見を整理して記載した。
4)建築衛生学の視点から、汚染濃度を低く維持し、快適な室内環境をつくるための方策を記載した。
5)仮設住宅、浸水被害、熱中症・ヒートショックに関して記載し、方策を記載した。
6)文献および個別インタビュー調査から、室内空気質汚染の健康影響に関するリスクコミュニケーションのあり方について重要な点を記した。
7)室内環境に関わる体調不良の相談への対応として、シックハウス症候群や、いわゆる化学物質過敏症の場合に注意すべき重要な点を記載した。
この結果、序章には、室内環境の重要性を疫学および建築学の両面から記載した。第Ⅱ部は、疫学研究に基づく室内環境による健康影響やいわゆる化学物質過敏症に関する知見、世界の規制の動向についてまとめた。第Ⅲ部は健康影響を及ぼす化学的要因、生物学的要因、ダンプネス、受動喫煙、粉塵、建築学的な要因を示した。第Ⅳ部は建物の用途や構造による課題、仮設住宅、居住者の年齢や季節に応じた予防策、熱中症などを整理した。第Ⅴ部では、リスクコミュニケーションや住宅や職場での支援、本態性環境不耐症などの症状を訴える相談への対応を述べた。最後に資料として、関連法規やガイドライン等を記した。
結論
SHSの実態や対策を疫学および建築学の両面からまとめし、マニュアル改訂新版を全5部11章に構成した。保健所職員や地域・職域・学校の保健担当者の利用により、SHSに関する正しい知識の普及と、質問や相談に対して、科学的根拠を踏まえた回答が可能になる。今後は、「シックハウス症候群に関する相談と対策マニュアル(改訂新版)」のPDF配信をWEB公開するとともに、より効果的な活用に向けて、新聞やメディアを通じた周知や啓発を実施する。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201525012C

収支報告書

文献番号
201525012Z