危険ドラッグを含む薬物乱用・依存状況の実態把握と薬物依存症者の社会復帰に向けた支援に関する研究

文献情報

文献番号
201523004A
報告書区分
総括
研究課題名
危険ドラッグを含む薬物乱用・依存状況の実態把握と薬物依存症者の社会復帰に向けた支援に関する研究
課題番号
H27-医薬A-一般-001
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
嶋根 卓也(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
14,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「第四次薬物乱用防止五か年戦略」および「危険ドラッグの乱用の根絶のための緊急対策」が示すように、危険ドラッグ乱用者による犯罪や、重大な交通死亡事故を引き起こす事案が後を絶たず、深刻な社会問題となっている。本研究は、「危険ドラッグ」を含む薬物乱用・依存状況の実態把握および、薬物依存症者の社会復帰に向けた支援に関する研究を実施することでわが国の薬物乱用・依存対策に資する科学的知見を得ることを目的とする。平成27年度は、薬物使用に関する全国住民調査を実施した。
研究方法
対象者は、全国の一般住民5,000名である。住民基本台帳から、層化二段無作為抽出法(調査地点:350)によって標本抽出を行った。選ばれた対象者に対して、調査員の戸別訪問による自記式調査(無記名)を実施した。調査期間は2015年9~10月であった。調査実施にあたり、国立精神・神経医療研究センター倫理委員会の承認を得た。
結果と考察
計3085名から調査票を回収した(回収率61.7%)。計3076名(女性52.3%、平均年齢43.3歳)の有効回答から以下の知見を得た。
1.危険ドラッグの生涯経験率は0.4%(2013年)から0.3%(2015年)に減少し、1年経験率は0.1%(2013年)から0%(2015年)となった。
2.危険ドラッグの生涯経験者人口は、約40万人(2013年調査)から約31万人(2015年調査)に減少した。
3.危険ドラッグの有害性に対する周知率は、61.5%(2013年)から85.8%(2015年)に増加し、危険ドラッグ対策としての指定薬物制度は56.9%が周知していた。
4.薬物使用の生涯経験率は、有機溶剤1.5%、大麻1.0%、覚せい剤0.5%、MDMA0.1%、コカイン0.1%、危険ドラッグ0.3%、何れかの薬物2.4%であった(いずれも補正値)。ヘロインは統計誤差内であった。
5.薬物使用者の平均年齢は、有機溶剤47.9歳、大麻41.3歳、覚せい剤44.1歳、MDMA40.0歳、コカイン45.4歳、ヘロイン45.7歳、危険ドラッグ40.8歳、何れかの薬物45.5歳であった。
6.薬物使用の生涯経験者人口は、有機溶剤(約138万人)、大麻(約95万人)、覚せい剤(約50万人)、コカイン(約12万人)、MDMA(約12万人)、危険ドラッグ(約31万人)であった。いずれの薬物も2013年調査から減少した。
7.薬物使用に誘われる経験(被誘惑経験者人口)も概ね減少傾向であったが、覚せい剤(約93万人→約94万人)、MDMA(約42万人→約58万人)のみ増加していた。
8.鎮痛薬1年経験率は、34.3%(1995年)から62.9%(2015年)に増加した。鎮痛薬の習慣的使用(週3回以上)は、1.6%(1999年)から2.5%(2015年)に増加した。
9.睡眠薬1年経験率は、1995年(4.0%)から2007年(7.7%)にかけて増加し、その後減少したが、2015年(6.1%)では再び増加した。睡眠薬の習慣的使用も同様に、2007年(2.7%)にピークがあり、その後(2011年、1.9%)減少するが、2015年(2.9%)は再び増加した。
結論
危険ドラッグの生涯経験者は減少し、過去1年経験者がいなくなった。使用者減少の背景には、指定薬物の対象物質の拡大(2,297物質、2015年5月時点)、指定薬物制度の強化(検査命令、販売・広告停止命令など)により、販売店や販売サイトが一掃されたことで、危険ドラッグの入手機会が減ったことが影響していると考えられる。社会問題化した危険ドラッグ問題は沈静化されつつあると判断できる。しかし、住民の約20%が危険ドラッグを「入手できる」としており、危険ドラッグ対策は引き続き継続する必要がある。薬物使用の生涯経験者人口の推計値によれば、有機溶剤、大麻、覚せい剤、コカイン、MDMAいずれも2013年調査から減少していた。これらの結果を踏まえると、危険ドラッグ同様、違法薬物使用についても減少傾向にあるのかもしれない。ただし、覚せい剤およびMDMAのみ増加している点には注意が必要である。鎮痛薬および睡眠薬の使用機会は確実に増加傾向にあることが示された。使用頻度から使用者の乱用・依存リスクを予測することは困難であるが、依存が形成される可能性のある薬剤を服用している住民が一定の割合で存在していることから、こうした医薬品に関わる医師や薬剤師が「適正使用」を推進していくことが今後も重要であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2019-04-15
更新日
-

収支報告書

文献番号
201523004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
14,500,000円
(2)補助金確定額
14,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 208,843円
人件費・謝金 204,896円
旅費 90,316円
その他 13,995,945円
間接経費 0円
合計 14,500,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
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