文献情報
文献番号
201506010A
報告書区分
総括
研究課題名
未就学児の睡眠・情報通信機器使用の実態把握と早期介入に関する研究:保健指導マニュアルの構築
課題番号
H27-健やか-一般-003
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
岡 靖哲(愛媛大学 医学部附属病院 睡眠医療センター)
研究分担者(所属機関)
- 堀内 史枝(愛媛大学 医学部附属病院 子どものこころセンター)
- 伊藤 一統(宇部フロンティア大学短期大学部 保育学科)
- 山本 隆一郎(上越教育大学 学校教育研究科)
- 高田 律美(愛媛県立医療技術大学 母性小児看護学講座)
- 上西 孝明(広島文化学園大学 看護学部)
- 福田 光成(愛媛大学 医学部附属病院 小児科)
- 松原 圭一(愛媛大学 医学部附属病院 周産母子センター)
- 松原 裕子(愛媛大学 医学部附属病院 周産母子センター)
- 上野 修一(愛媛大学 医学系研究科 精神神経科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
4,358,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は,未就学児の睡眠をめぐる現状を把握するとともに,睡眠の確保を困難にする要因の中でも情報通信機器使用に着目し,睡眠・情報機器の適正使用についての知識の浸透と行動改善を通じた早期の介入により,児の健全な睡眠を確保するために現場で広く活用できる保健指導マニュアルを作成することを目的とする.また夜間の睡眠と日中の覚醒・睡眠(午睡)は一体として考える必要があることから,保育所での午睡の実態を調査する.保育所での午睡においては,年齢とともに午睡の必要度が変化することが現状では十分勘案されておらず,また乳幼児突然死症候群(SIDS)予防対策を含めた年齢に応じた適切な午睡についてのガイドラインを作成することも研究目的とした.
研究方法
初年度は,睡眠習慣・情報機器使用の実態と,児の行動・発達への影響を検討するための横断面の研究,ならびに保育園を対象とした睡眠(午睡)実態調査を行った.地域における未就学児の睡眠・情報機器使用の実態の検討では,新潟県上越市の保育園児とその保護者を対象として,児童思春期睡眠チェックリスト(CASC),成人睡眠チェックリスト(ASC),情報機器使用質問票,強さと困難さ質問票(SDQ)日本語版を配布し,子どもと保護者の睡眠・情報機器使用の実態と,子供の行動面への影響について検討した.臨床群における未就学児の睡眠・情報通信機器使用の研究では,愛媛大学病院睡眠医療センターならびに子どものこころセンターを受診した児を対象に,問診票調査を実施した.保育現場における睡眠・情報通信機器使用の研究では,全国の保育所24593ヶ所より2割にあたる4919ヶ所を無作為に抽出して,保育所の午睡実態・睡眠環境等について,調査票を配布した.
結果と考察
地域における未就学児の睡眠・情報機器使用の実態の検討では,保護者のインターネット依存傾向が、保護者自身の睡眠問題、子どもの睡眠問題を媒介し、子どもの困難さに与える影響についてパス解析を行ったところ,保護者のインターネット依存傾向は、直接的にも間接的にも(自身の睡眠問題そして子どもの睡眠問題を介して)子どもの困難さに影響する可能性が示唆される結果であった臨床群における未就学児の睡眠・情報通信機器使用の検討では,保護者による未就学児の睡眠および詳細な行動面の問題を把握する問診票には,地域横断調査には含まれていない臨床患者用問診票を構成した.また,未就学児の兄弟姉妹の睡眠・情報通信機器使用との関連性を評価するため,年少~高校生までを対象とした問診票を作成し,こちらも配布を開始している.臨床群の症例は現在継続して蓄積中であり,平成28年度に初回の集計・解析作業を行う予定である.保育現場における睡眠・情報通信機器使用については,調査を平成28年2~3月にかけて実施回収したため,平成27年3月末時点でアンケートは回収途中であるが,年度末時点で1885施設(回収率38.3%)から回答が得られた.平成28年度初めに回収が完了次第,データ入力・解析を行う予定としている.
結論
本年度の研究において,横断面の調査の段階で,保護者のインターネット依存が,児の行動面の問題に影響することが示されており,保護者や同胞を含めた家庭内での情報通信機器使用を詳細に調査することの重要性が改めて示された.午睡を中心とする保育園での睡眠調査では,未就学児の睡眠を考える上で見過ごされていた,保育園での午睡環境,午睡習慣に踏み込んで調査を実施しており,今後の解析結果が待たれる.また,地域を対象とした調査では,保育所・幼稚園や健診を通じての調査が主体となることから,回答にかけられる時間の制約に加え,設問数の多い調査には協力が得られないことから,使用できる問診票の量的な制限が生じる.このため,地域での調査では子どもの行動面への影響を詳細に検討することは困難であるが,臨床患者での調査において,使用できる問診票が年齢群毎に異なるという手法上の制限はあるものの,臨床場面での詳細な検討により,発達期全般をカバーする問診バッテリーを構築することができ,今後の検討に資する成果が得られている.
公開日・更新日
公開日
2018-06-01
更新日
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