高齢者介護サービスの質の包括的評価に関する研究

文献情報

文献番号
201501002A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者介護サービスの質の包括的評価に関する研究
課題番号
H25-政策-一般-002
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
池上 直己(慶應義塾大学医学部 医療政策・管理学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 石橋 智昭(公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団)
  • 高野 龍昭(東洋大学 ライフデザイン学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
7,650,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、わが国においてアセスメントデータを二次利用したサービスの質の評価体制の実現可能性を探るため、介護保険制度導入後に日本でも主要なアセスメント方式として定着しているインターライ方式(旧名:MDS方式)を対象として、利用者の状態変化に基づく客観的な質の評価指標であるQuality Indicators(以下、QI)を算出するモデルを構築する。そのうえで、算出された質の指標に基づく事業者の評価を試行するとともに事業者のサービスの質の改善に対する有用性を検証する。
研究方法
3年目にあたる今年度は、サービスの質の改善に対するQIの有用性を検証するため、協力介護事業所のアセスメント担当者(主に介護支援専門員)にQI算定によって「転倒」「ADLの悪化」「痛み」が確認された利用者のケアプランの見直しを求めた。
ケアプランの見直しは、平成27年8月作成データセットの結果に基づいて行われた。対象となったのは居宅が6法人21事業所から660件、施設では4法人7事業所から323件のQI算出可能データであった。取得したアセスメントデータは平成24年4月1日から平成27年6月30日の期間における直近の2回分であり、かつ平成27年7月から8月にかけて行われたデータダウンロード時点で前回ダウンロード(平成26年11月)以降に新たなアセスメントデータの入力が行われた事業所を分析対象とした。
結果と考察
居宅では調査票を36部配布し、28部を回収した(回収率は77.8%)。施設では15部配布し、11部を回収した(回収率73.3%)。実際に検討されたケースの内容は、居宅では「転倒」23件、「ADLの悪化」17件、「痛みのコントロールが不十分」13件で、施設では「転倒」10件、「ADLの悪化」1件であった。このうち、ケアプラン変更の提案に結びついたのは、居宅35.8%、施設36.4%であった。また、「QIに基づくケアプラン見直しが役に立ったか」との設問には、「やや役立った」40.6%、「おおいに役立った」28.1%、「どちらともいえない」21.9%、「全く役立たなかった」6.3%、「あまり役立たなかった」3.1%と回答した。
結果を総括すると、事業所のアセスメント担当者がQIに基づくケアプランの見直しを試行した結果、現状の問題点が可視化されるなどサービスの内容を見直すことで質改善に寄与する可能性が示され、担当者の多くはこうした質の改善サイクルを有用と考えていた。
結論
客観的な質の指標であるQIの結果を個々の利用者のケアプラン見直しにつなげる方法は、事業者の評価も高くTQM(Total Quality Management)サイクルとして有用であることも確認された。

公開日・更新日

公開日
2016-11-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201501002B
報告書区分
総合
研究課題名
高齢者介護サービスの質の包括的評価に関する研究
課題番号
H25-政策-一般-002
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
池上 直己(慶應義塾大学医学部 医療政策・管理学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 石橋 智昭(公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団)
  • 高野 龍昭(東洋大学 ライフデザイン学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、わが国においてアセスメントデータを二次利用したサービスの質の評価体制の実現可能性を探るため、介護保険制度導入後に日本でも主要なアセスメント方式として定着しているインターライ方式(旧名:MDS方式)を対象として、利用者の状態変化に基づく客観的な質の評価指標であるQuality Indicators(以下、QI)を算出するモデルを構築する。そのうえで、算出された質の指標に基づく事業者の評価を試行するとともに事業者のサービスの質の改善に対する有用性を検証する。
研究方法
 本研究は3年間の計画で取り組み、1年目にデータベースの構築を行い、2年目に事業所単位のQIを算出してサービスの質の評価指標としての妥当性を検討する。研究最終年度の3年目には、事業所数を増やして再算出したQIに基づき事業所においてケアプランの見直しを試行して、サービスの質の改善に対する有用性を検証し、研究成果の総括を行う。
結果と考察
本研究では、ICTの活用により社会基盤が異なる多様な地区の介護事業者からアセスメントデータを得ることができた。構築したデータベースからQI値を算出した結果、各QI値は事業所によって異なる分布を見せており、サービスの質の評価指標として活用できることが確認できた。さらに、各QIを「改善」と「悪化」に分けた分析では、改善に優れた事業所、悪化防止(維持)に優れた事業所といった特徴が示され、利用者が事業者選択する際や事業者自身の強みを検討する際の判断材料になりうることが示唆された。また、評価対象となった事業所における利用者の構成は、要介護度をはじめ、ADL、認知機能、うつの傾向等が大きく異なっており、適切な質の評価にはリスク調整が不可欠であることが明らかになった。さらに、事業所のアセスメント担当者がQIに基づくケアプランの見直しを試行した結果、現状の問題点が可視化されるなどサービスの内容を見直すことで質改善に寄与する可能性が示され、担当者の多くはこうした質の改善サイクルを有用と考えていた。
結論
本研究により、まずアセスメントデータを二次利用したサービスの質の評価がわが国においても実現可能であり、リスク調整を採用することで広範な事業者に適用できることが明らかとなった。次に、客観的な質の指標であるQIの結果を個々の利用者のケアプラン見直しにつなげる方法は、事業者の評価も高くTQM(Total Quality Management)サイクルとして有用であることも確認された。以上から、インターライ方式のアセスメントデータを用いたQIを算出するモデルは、客観的なサービスの質の評価に対応するだけでなくサービスの改善を支援する側面も有した仕組みである。

公開日・更新日

公開日
2016-11-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201501002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
利用者のアセスメントデータから計算されるQI(Quality Indicator、質の指標)を用いて、利用者の特性が大きく異なる広範な事業者においても適用できることが明らかとなった。また、各QIにおいて、当該QIが発生する可能性の低い利用者を特定し、その結果をケアプラン担当者にフィードバックすることでケアプランを見直す、というTQM(Total Quality Management)サイクルを形成できる可能性が示唆された。
臨床的観点からの成果
質の評価体制の構築には介護事業者の協力が不可欠であり、そのためにはデータ取得の負担を最小化し、実際のケアプラン改善に活用できる仕組みが必要である。こうした観点から本研究では、提示した既存データを二次利用ることによってQIを算出し、ケアプランの見直しが必要なQI領域を提示できるので、制度として導入されれば事業者の積極的な参加が期待できる。本成果を活かすためには、利用者の状態を体系的に把握する必要があるが、ケアプランの質を担保するうえでこれは必須の条件である。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
平成27年6月 第57回日本老年医学会学術集会
学会発表(国際学会等)
1件
平成25年6月 第20回国際老年学会(The 20th IAGG World Congress of Gerontology and Geriatrics, Seoul)
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2016-08-03
更新日
2018-06-19

収支報告書

文献番号
201501002Z