文献情報
文献番号
201451015A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒトiPS細胞由来神経細胞等を用いた新規in vitro医薬品安全性評価法の開発
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 薫(国立医薬品食品衛生研究所 薬理部)
研究分担者(所属機関)
- 宮本憲優(エーザイ株式会社筑波研究所・安全性評価)
- 白尾智明(群馬大学大学院医学系研究科・神経薬理学)
- 池谷裕二(東京大学・大学院薬学系研究科・薬品作用学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【委託費】 医薬品等規制調和・評価研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、認知機能障害、神経異常活動を in vitro で数値化する指標を確立し、これを用いてヒト iPS 細胞由来神経細胞(hiPSC-neuron)等を用いた、再現性の良い医薬品の in vitro 安全性評価法を開発することを目的とする。平成 26-27 年は認知機能障害、神経異常活動の数値化指標を確立し in vitro 定量的薬理試験法の開発を行う。評価に必要な脳機能メカニズムを備えた hiPSC-neuron 等の選抜、機能促進条件の検討を行う。グリア細胞を用いて hiPSC-neuron 等の神経機能発現を促進する条件の検討を行う。
研究方法
1.認知機能障害、神経異常活動の数値化指標の確立、in vitro 定量的薬理試験法の開発
a.認知機能障害:培養神経細胞を用いて、ドレブリンをマーカーとしてシナプスへの特異的集積を数値化した。この数値に基づきシナプス成熟度、シナプス機能障害の定量評価を行った(DIBES 法)。
b.神経異常活動:てんかん in vitro モデルを確立し、異常神経活動の数値化、薬理試験法としての実効性を検討した。
2.評価に必要な脳機能メカニズムを備えた hiPSC-neuron 等の選抜、機能促進条件の検討
a. Ca2+ イメージング法を用いた機能的受容体発現、DIBES 法によるシナプス成熟度、多点平面電極(MEA)を用いた回路形成成熟度をそれぞれ数値化した。これらの指標にもとづき hiPSC-neuron の薬理試験評価適合株選抜を開始した。
b. グリア細胞による hiPSC-neuron の神経機能発現促進を試みた。
a.認知機能障害:培養神経細胞を用いて、ドレブリンをマーカーとしてシナプスへの特異的集積を数値化した。この数値に基づきシナプス成熟度、シナプス機能障害の定量評価を行った(DIBES 法)。
b.神経異常活動:てんかん in vitro モデルを確立し、異常神経活動の数値化、薬理試験法としての実効性を検討した。
2.評価に必要な脳機能メカニズムを備えた hiPSC-neuron 等の選抜、機能促進条件の検討
a. Ca2+ イメージング法を用いた機能的受容体発現、DIBES 法によるシナプス成熟度、多点平面電極(MEA)を用いた回路形成成熟度をそれぞれ数値化した。これらの指標にもとづき hiPSC-neuron の薬理試験評価適合株選抜を開始した。
b. グリア細胞による hiPSC-neuron の神経機能発現促進を試みた。
結果と考察
1-a. アルツハイマー病による認知機能障害の原因として示唆されるアミロイド beta オリゴマー(ADDL)がマウス初代培養神経細胞に惹起するシナプス機能不全をドレブリンをマーカーとして定量解析することに成功した。凍結神経細胞を用いた培養法、ドレブリン各アイソフォームの ELISA 定量的測定法を開発した。
1-b. 内側側頭葉てんかん患者の海馬顆粒細胞軸索では異常発芽がおこり、神経異常活動と神経形態変化に相関関係があることが示唆される。ラット海馬組織切片で異常興奮と異常発芽を誘導し、異常興奮を複数形態パラメーターに置き換え精度の高い定量化を実現した。ラット培養海馬組織切片で熱性けいれん様状態を誘導し、てんかん脳の過剰な同期活動を数値化可能な in vitro 実験系を確立した。
2-a. Ca2+ イメージング法を用いて機能的受容体発現プロファイルに基づく選抜条件の整備を行った。シナプス機能に必須かつ神経特異的細胞障害の原因となる NMDA 受容体を発現する hiPSC-neuron 2 種を見いだした。ドレブリンはステージング、軸索成長の速さ等についても評価が可能であるたことに着目し、これらの成熟スピードも評価項目として整備した。市販 hiPSC-neuron を MEA で解析し、マウス由来アストロサイト(グリア細胞)調整培地が複数電極間で同調し周期性を持った自発性興奮を誘導することを見いだした。この同調自発性興奮は、神経伝達物質放出阻害薬により阻害され、シナプスが形成されたことが示された。シナプス形成を複数電極間の活動電位ピーク記録時間の同期性をパラメーターとして数値化することを可能とした。
2-b. 市販 hiPSC-neuron を用いて、NMDA 受容体機能的発現を促進するグリア細胞由来因子 Xを見いだした。グリア細胞由来因子による MEA 自発性興奮誘導の機序を解析するため、グリア細胞調整培地共存培養下 hiPSC-neuron の網羅的遺伝子発現解析を行い候補因子を見いだした。初期マーカーおよびその上流物質によるシナプス成熟促進が期待される。hiPSC-neuron とグリア細胞の相互作用を確認するため、ラット脳組織片を用いたスライスオーバーレイ法を確立した。
1-b. 内側側頭葉てんかん患者の海馬顆粒細胞軸索では異常発芽がおこり、神経異常活動と神経形態変化に相関関係があることが示唆される。ラット海馬組織切片で異常興奮と異常発芽を誘導し、異常興奮を複数形態パラメーターに置き換え精度の高い定量化を実現した。ラット培養海馬組織切片で熱性けいれん様状態を誘導し、てんかん脳の過剰な同期活動を数値化可能な in vitro 実験系を確立した。
2-a. Ca2+ イメージング法を用いて機能的受容体発現プロファイルに基づく選抜条件の整備を行った。シナプス機能に必須かつ神経特異的細胞障害の原因となる NMDA 受容体を発現する hiPSC-neuron 2 種を見いだした。ドレブリンはステージング、軸索成長の速さ等についても評価が可能であるたことに着目し、これらの成熟スピードも評価項目として整備した。市販 hiPSC-neuron を MEA で解析し、マウス由来アストロサイト(グリア細胞)調整培地が複数電極間で同調し周期性を持った自発性興奮を誘導することを見いだした。この同調自発性興奮は、神経伝達物質放出阻害薬により阻害され、シナプスが形成されたことが示された。シナプス形成を複数電極間の活動電位ピーク記録時間の同期性をパラメーターとして数値化することを可能とした。
2-b. 市販 hiPSC-neuron を用いて、NMDA 受容体機能的発現を促進するグリア細胞由来因子 Xを見いだした。グリア細胞由来因子による MEA 自発性興奮誘導の機序を解析するため、グリア細胞調整培地共存培養下 hiPSC-neuron の網羅的遺伝子発現解析を行い候補因子を見いだした。初期マーカーおよびその上流物質によるシナプス成熟促進が期待される。hiPSC-neuron とグリア細胞の相互作用を確認するため、ラット脳組織片を用いたスライスオーバーレイ法を確立した。
結論
認知機能障害やてんかんの神経異常活動のin vitroでの数値化に成功した(認知機能障害:DIBES法、神経異常活動:神経形態パラメーター、過剰な同期活動)。医薬品の認知機能障害、神経異常活動リスクin vitro評価技術基盤が確立した。機能受容体発現や発達ステージング、MEA活動電位ピーク同期性等を安全性評価適合hiPSC-neuron選抜項目として整備した。これらの条件に基づき、興奮毒性評価に使用可能な細胞を見いだした。神経機能発現を促進するグリア由来候補因子を見いだした。医薬品開発における安全性評価の臨床試験に協力してくださる方々の安全確保につながる基盤技術が確立した。
公開日・更新日
公開日
2015-06-29
更新日
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