ISO/TC249における国際規格策定に資する科学的研究と調査および統合医療の一翼としての漢方・鍼灸の基盤研究 

文献情報

文献番号
201450002A
報告書区分
総括
研究課題名
ISO/TC249における国際規格策定に資する科学的研究と調査および統合医療の一翼としての漢方・鍼灸の基盤研究 
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
東郷 俊宏(東京有明医療大学 保健医療学部)
研究分担者(所属機関)
  • 新井一郎(日本薬科大学 薬学部)
  • 形井秀一(筑波技術大学 保健科学部)
  • 小野直哉(未来工学研究所)
  • 小田口浩(北里大学 東洋医学総合研究所)
  • 並木隆雄(千葉大学大学院 和漢診療学)
  • 廣瀬康行(琉球大学医学部附属病院 医療情報部)
  • 津谷喜一郎(東京大学大学院薬学系研究科)
  • 木村友昭(東京有明医療大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【委託費】 「統合医療」に係る医療の質向上・科学的根拠収集研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
15,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ISO/TC249における伝統医学(漢方・鍼灸)領域の国際規格策定に関して、国内規格や我が国における伝統医学の実践状況を踏まえ、これらと齟齬を来さない、かつ科学的根拠に基づいた国際規格の策定を主導するために必要な調査と研究(臨床研究を含む)を行う。また、TC249における規格策定に影響を及ぼすその他の国際機関での取り決めや国際条約に関する調査研究を行い、今後のTC249における日本の対応策の決定や伝統医学領域の行政に資する。
研究方法
ISOにおける伝統医学の標準化に関する国際会議(TC249/TC215)へ出席するとともに、以下の研究体制を組み、国際標準策定に必要な研究を行う。
1) 漢方領域の規格と安全性に関する研究
2) 鍼領域の機器の規格と安全性に関する研究  
3) 灸領域の機器の規格と安全性に関する研究 
4) 腹診機器の規格と安全性に関する研究
5) 舌診機器の規格と安全性に関する研究 
6) 伝統医学の情報・用語の国際規格策定に資する調査研究 
7) 東アジア伝統医学標準化の政策分析     
8) 国際条約・機関における伝統医学の遺伝資源及び伝統的知識の研究
結果と考察
1) 漢方領域については、製造工程に関するISO規格文書の素案作成まで行った。2) 鍼領域については国内外で流通する鍼電極低周波治療器の仕様を比較することで、策定中の国際規格の妥当性を検証した。3) 灸領域についてはISOで策定される規格の妥当性を検証するために中国・韓国におけるモグサ製造工程の現地調査を行った。4) 腹診機器については試作機の仕様を本に国際規格案の素案作成を行った。5) 舌診機器についてはISOで提案するために必要な研究成果を国際学会で発表した。6) 鍼灸領域ではしゅ穴の概念範疇に関する国際規格案をTC215会議(2014年10月ベルリン)で発表するとともに、新規提案投票でパスした。漢方領域では生薬方剤に関する文書の準備を行った。7)東アジアン、分けても中国における伝統医薬標準化政策について中国メディアを対象として分析を行った。8) 生物多様性条約・伝統的知識の問題など、ISOにおける国際標準化に間接的に影響を及ぼす国際条約や取り決めの最新状況を調査した。
結論
TC249における国際標準化の背景にある、幹事国中国の伝統医学関連の国際戦略の一端が明らかになるとともに、ISOでの国際規格策定が他の国際的な条約や取り決めとどのような関係を持ち得るのかが明確になってきた。
個別案件についてみると、漢方領域においては、漢方GMPおよびWHO Guidelineを基礎とした製造工程に関する国際規格の素案を作成し、国内の製品が国際規格上不利にならない条件を整えつつある。鍼及び灸領域については、既にTC249で検討対象となっているWD18586およびCD18666の2案件について国内規格や国内での製造状況と齟齬を来たさない国際規格案の策定に資することが可能となった。診断機器については、日本の優れた技術と研究の蓄積を背景に国際規格として提案する準備を調ったといえる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
2016-02-12

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-09-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201450002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
TC249における伝統医学領域の国際標準化は2016年に8年目を迎え、第7回全体会議がローマで開催された。平成28年度は生薬・漢方領域ではTCM製品の製造工程、ラベリング要求事項に関する提案がDIS段階に進捗した。鍼灸機器関係では通電用鍼の試験方法の規格策定に必要な研究を行と同時に国内で生産された無煙灸の安全性調査を行った。またWG4では、舌診機器規格に関連してColor chartのプロトタイプ作成を行った。医療情報領域ではツボと植物薬に関する範疇概念の規格が技術仕様として出版された。
臨床的観点からの成果
本課題では、伝統医学領域の診断で使用される腹診機器、舌診機器の国際規格策定に必要な各要求事項について、その科学的根拠を与えるための研究を行っている。将来、本課題の成果を盛り込んだ国際規格が発行されれば、これまで治療者の主観的な観察に大きく依拠してきた患者の身体所見の収集を高い客観性をもって世界的に行う事が可能になる。また、WG2で提出してるTCM製品の製造工程規格案は高品質を誇る日本の漢方製剤のGMPを踏まえており、これも規格出版されれば、国内のみならず国際的にも伝統医薬の品質向上に寄与する。
ガイドライン等の開発
WG3において鍼灸領域の安全性に関する提案(感染防止ガイドライン)が提出されたことを受け、国内外における同分野のガイドラインの調査を行っているが、平成27年度は米国の最新ガイドラインをもとに、日本としての鍼灸領域安全性ガイドライン作成を引き続き行っている。また、WG2では日本漢方生薬製剤協会が作成した漢方製剤のGMPをもとに、TCM製品の製造工程管理に関する要求事項を国際規格案として開発を進めており、平成27年12月に第2次作業原案を提出した。
その他行政的観点からの成果
本課題はTC249で策定される伝統医学関連の国際規格が本邦の公定文書・認証基準・国内規格と齟齬を来さないこと、かつ科学的な根拠を有さない提案については可能な限り科学的な根拠を提示し、本邦の伝統医学実践に負の影響を与えないことを大きな目標として推進している。現時点では日本における伝統医学実践、薬事行政に負の影響を与えるような状況は存在しない。
その他のインパクト
2016年3月29日に飯田橋レインボーホールにて、森岡 一(国立遺伝学研究所),田上麻衣子(東海大学法学部)、磯崎博司(岩手大学名誉教授)をシンポジストとして公開シンポジウム「2015年度 日本の伝統医学を取り巻く最新の国際状況」を行い、TC249における国際標準策定が、伝統的資源へのアクセス、世界知的所有権機関における伝統的知識の議論の枠組みと大きく関与する可能性があることを指摘した。また外部識者からは、「日本伝統医学振興基本法」(仮称)の素案を作成する事などが提言としてあげられた。

発表件数

原著論文(和文)
12件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
17件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
18件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nakaguchi T, Takeda K, Ishikawa Y,et al.
Proposal for a New Noncontact Method for Measuring Tongue Moisture to Assist in Tongue Diagnosis and Development of the Tongue Image Analyzing System, Which Can Separately Record the Gloss Components of the Tongue
Bio Med Research International , 2015 , 10-  (2014)
ID 249609
原著論文2
Yakubo S, Ueda Y, Ishino S, Adachi Hi,et al.
The Development of an Abdominal Palpitation Model for the Fukushin Simulator: Towards Improvement and Standardization of Kampo Abdominal Diagnosis
Int.Med. J , 21 (Issue 2) , 201-203  (2014)
原著論文3
Yakubo S, Ueda Y, Muroga K, Tanekura N,et al.
Students’ Impressions of an Abdominal Diagnosis Workshop Using the Fukushin Simulator
Int. Med. J , 21 (Issue 4) , 408-4011  (2014)
原著論文4
Oji T, Namiki T, Nakaguchi T, Ueda K,et al.
Study of factors involved in tongue color diagnosis by kampo medical practitioners using the farnsworth-munsell 100 hue test and tongue color images
Evidence Based Complementary and Alternative Medicine , 2014 , 9-  (2014)
ID 783102
原著論文5
王子 剛, 並木 隆雄, 三谷 和男,他
多施設での統一した舌診臨床診断記載の作成を目的とした日本の舌診文献調査.
日本東洋医学雑誌 , 3 (65) , 224-230  (2014)
原著論文6
木村友昭・新原寿志・ 斉藤宗則・他
ISO/TC249 第6 回全体会議を終えて ―国際規格制定の現場とは―
鍼灸OSAKA , 31 (2) , 93-111  (2015)
原著論文7
東郷俊宏・木村友昭・ 新原寿志・他
ISO/TC249 ISO 国際規格策定の最前 線から―鍼・灸・医療情報の国際標準 化
全日本鍼灸学会 誌 , 65 (4) , 232-241  (2015)
原著論文8
東郷俊宏
補完代替医療と国際標準化機構(ISO) における国際規格策定―漢方・鍼灸を 中心に
週間医学のあゆ み(特集:補完 代替医療とエビ デンス) , 79-85  (2016)
原著論文9
Takeshi Matsumoto, Shuichi Katai, Takao Namiki.
Safety of Smoke Generated by Japanese Moxa upon Combustion Article reference.
European Journal of Integrative Medicine 2016  (2016)
DOI: 10.1016/j.eujim.2016.03.005
原著論文10
形井秀一
台湾のもぐさ事情を訪ねて
鍼灸OSAKA , 119 , 105-114  (2015)
原著論文11
形井秀一
日本鍼灸を明日へ伝える ―明治維新後の鍼灸の歴史を踏まえて―
全日本鍼灸学会 誌 , 65 (4) , 242-255  (2015)
原著論文12
形井秀一・松本毅
日本産と中国産のヨモギの違いに関する 研究―モグサの質と施灸時の印象に関 する検討―
日本東洋医学会 誌  (2016)
原著論文13
津谷喜一郎・柳川俊之
中医薬の国際化と標準化に関する中国の 政策第17 回ISO と中国伝統医学 ―ISO/TC249 第1 回全体会議―
雑誌和漢薬 , 54 (5) , 8-11  (2015)
原著論文14
津谷喜一郎・柳川俊之
中医薬の国際化と標準化に関する中国の 政策第18 回ISO と中国伝統医学 ―ISO/TC249 第2 回全体会議―
雑誌和漢薬 , 65 (7) , 13-18  (2015)
原著論文15
津谷喜一郎・柳川俊之
中医薬の国際化と標準化に関する中国の 政策第19 回ISO と中国伝統医学 ―ISO/TC249 第3 回全体会議―
雑誌和漢薬 , 65 (9) , 10-15  (2015)
原著論文16
津谷喜一郎・柳川俊之
中医薬の国際化と標準化に関する中国の 政策第20 回ISO と中国伝統医学 ―ISO/TC249 第4 回全体会議―
雑誌和漢薬 , 65 (11) , 18-22  (2015)
原著論文17
津谷喜一郎・柳川俊之
中医薬の国際化と標準化に関する中国の 政策第21 回ISO と中国伝統医学 ―ISO/TC249 第5 回全体会議―
雑誌和漢薬 , 66 (1) , 24-29  (2016)
原著論文18
津谷喜一郎・柳川俊之
中医薬の国際化と標準化に関する中国の 政策第22 回ISO と中国伝統医学 ―ISO/TC249 第6 回全体会議―
雑誌和漢薬 , 66 (4) , 9-16  (2016)
原著論文19
津谷喜一郎・柳川俊之
中医薬の国際化と標準化に関する中国の 政策第23 回シリーズのまとめと今後 の課題
雑誌和漢薬 , 66 (5) , 8-13  (2016)

公開日・更新日

公開日
2016-02-12
更新日
2017-05-25

収支報告書

文献番号
201450002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
20,000,000円
(2)補助金確定額
20,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,463,868円
人件費・謝金 3,527,512円
旅費 5,512,760円
その他 3,895,860円
間接経費 4,600,000円
合計 20,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2016-02-12
更新日
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