痙性や体重による車椅子過負荷に対応した試験方法の開発に関する調査研究

文献情報

文献番号
201446010A
報告書区分
総括
研究課題名
痙性や体重による車椅子過負荷に対応した試験方法の開発に関する調査研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
白銀 暁(国立障害者リハビリテーションセンター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 半田 隆志(埼玉県産業技術総合 センター)
  • 田中 敏明(東京大学先端科学技術研究センタ ー)
  • 前田 佑輔(目白大学保健医療学部理学療法学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 障害者対策総合研究開発
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
車椅子や座位保持装置は自立移動や座位姿勢の保持が困難な者にとって欠かせない機器であり、近年、その重要性に対する認識が高まっている。一方、日本人の肥満は年々増加傾向にあるとされる。車椅子や座位保持装置の強度は関連するJIS、厚生労働省の基準などで規定されるが、現状、JISは体重100kgまでしか想定していないため、それを超える対象者は基準外となり安全性は十分保障されない。また他方、脳性マヒ等において、痙性と呼ばれる不随意の筋収縮が強く出現する者がおり、痙性による強い運動が車椅子や座位保持装置の破損に繋がる事例が報告されている。以上の問題から、より安全な機器の開発供給のため体重や痙性についての使用者の現状を把握し、新たな試験方法やガイドライン等の開発の必要性が高まっている。本研究では、車椅子・座位保持装置のより安全な使用環境の実現を目指し、痙性や体重による車椅子過負荷に対応した新たな基準案やその確認方法の開発を目的とした。
研究方法
本研究では、(1)車椅子・座位保持装置の過負荷に関する現状把握、(2)車椅子・座位保持装置の過負荷値の明確化、(3)車椅子走行耐久性試験、(4)過負荷に対応した基準案の作成、の4つの課題を設定した。(1)では、文献調査により車椅子使用者の肥満について情報を収集した。さらに、車椅子・座位保持装置の供給に関与する事業者らを対象に、体重が100kgを超える使用者に対する装置供給の経験や、その使用場面における対応や問題等についての情報を収集した。(2)では、強度の痙性により車椅子・座位保持装置への強い負荷が見込まれる被験者3例を対象に、フットサポートおよびヘッドサポートにかかる荷重の定量的計測を実施し、最大荷重(瞬間値)および荷重の持続時間について解析した。(3)では、JIS T 9201-2006 手動車いす「10.2.14 走行耐久性試験」を元に、100kg超ダミーを用いて、現在、国内で市販される車椅子2車種(耐荷重が100kgとされる標準型車椅子、および耐荷重が100kg超とされる大型車椅子)を対象に走行耐久性試験を実施した。(4)では、(1)~(3)で得られた成果を元に、体重増加や痙性などによる車椅子・座位保持装置への過負荷に対応できる新たな基準案の作成およびその確認方法の提案を行った。
結果と考察
文献調査では、国内の車椅子使用者の肥満についての情報は見当たらなかった。海外では、アメリカ退役軍人病院データベースに登録される脊髄損傷者408人の約65%がBMI25以上であり、同じくアメリカの発達障害児において、6-17歳の移動に障害がある者は無い者に比較して有意に肥満者が多いと報告された。車椅子使用者は体重増加の危険性が高い可能性があり、国内においては、今後の調査の必要性が示唆された。車椅子・座位保持装置にかかる過負荷値は、フットサポートで最大525N(瞬間値)、体重比1.34倍、継続時間としては500N以上が0.6秒であった。ヘッドサポートでは、346N(瞬間値)、体重比0.88倍、200N以上が最長2.6秒であった。使用者の体重に匹敵するか、それを超える負荷がかかっていることが明らかになった。車椅子走行耐久性試験では、耐荷重100kgの標準型車椅子は、47213回転時に右側キャスターが破損した。耐荷重100kg超の車椅子は、199874回転時に左車輪のスポーク2本が破損、前側クロスパイプ2本が交点のボルト穴部で破損した。試験品に関しては、100kg超の荷重下においては破損の可能性が示唆された。ここまでの結果を踏まえ、現行の基準を含めて総合的に検討した結果、痙性や体重による車椅子過負荷に対応した新たな基準案の作成およびその確認方法を、以下のように提案した。(1)適用使用者体重として、100kgを超える値の設定を追加。(2)フットサポートについては、現行の基準値を維持。(3)ヘッドサポートについては、体重に相当する程度の負荷による衝撃試験を行う。また今後、使用者の体重増加や肥満についての実態調査の実施、車椅子・座位保持装置における適用使用者体重の基準値の追加、実際の使用者における実計測の継続とデータ蓄積による基準値の信頼性の向上などが必要と考えられた。
結論
車椅子・座位保持装置使用者の体重増加や痙性による過負荷の状況を把握するための調査計測を実施して結果を取り纏め、過負荷に対応した新たな基準案の作成およびその確認方法の提案を行った。いくつかの課題は残ったが、現行の基準では対応し切れない状況の存在を確認し、新たな基準案の提案とともに今後の基準改定に向けた資料を示すことができた。今回我々の示した基準案は実際の計測などを踏まえた結果であるが、これによりすべての利用者の安全性が保障されるものではなく、今後の継続的な調査が必要である。

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201446010C

収支報告書

文献番号
201446010Z