文献情報
文献番号
201426039A
報告書区分
総括
研究課題名
食品を介したダイオキシン類等の人体への影響の把握とその治療法の開発等に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H24-食品-指定-014
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
古江 増隆(九州大学 大学院医学研究院皮膚科学分野)
研究分担者(所属機関)
- 赤羽 学(奈良県立医科大学 健康政策医学講座)
- 内 博史(九州大学大学院医学研究院 皮膚科学分野)
- 平田 輝昭(福岡県保健環境研究所・公衆衛生学)
- 二宮 利治(九州大学大学院医学研究院附属総合コホートセンター)
- 吉村 健清(福岡女子大学国際文理学部食・健康学科)
- 吉村 惠(熊本保健科学大学大学院保健科学研究科)
- 石橋 達朗(九州大学大学院医学研究院眼科学分野 (九州大学))
- 今福 信一(福岡大学医学部皮膚科)
- 岩本 幸英(九州大学大学院医学研究院整形外科学分野)
- 江崎 幹宏(九州大学大学院医学研究院病態機能内科学)
- 古賀 信幸(中村学園大学栄養科学部)
- 月森 清巳(福岡市立こども病院・感染症センター産科)
- 辻 博(北九州津屋崎病院 内科)
- 中西 洋一(九州大学大学院医学研究院呼吸器内科分野)
- 重藤 寛史(九州大学大学院医学研究院神経内科学分野)
- 山田 英之(九州大学大学院薬学研究院分子衛生薬学専攻分野)
- 宇谷 厚志(長崎大学医歯薬学総合研究科皮膚病態学分野)
- 上松 聖典(長崎大学病院眼科)
- 川崎五郎(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科口腔腫瘍治療学分野 )
- 吉村 俊朗(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科リハビリテーション科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
169,124,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者交替
・林 信太郎(平成**年*月*日~26年9月30日)→ 重藤 寛史(平成26年10月1日以降)
・吉村 俊朗(平成**年*月*日~26年9月18日)→ 後任者無し
・松尾 恵太郎(平成**年*月*日~26年9月15日)→ 二宮 利治(平成26年9月16日以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
ダイオキシン類が生体に及ぼす慢性の影響を把握し、油症患者に残存する症状を緩和する方法を開発する。
研究方法
油症検診の結果をもとに、現在の患者の症状や所見の経時的変化、および血液中ダイオキシン類濃度との相関、ダイオキシン類の生体内動態の推測、継世代への影響を解析した。基礎的研究では、動物モデルを用いてダイオキシン類の代謝や排泄など体内動態を解析し、さらに培養細胞等を用いて、ダイオキシン類受容体(AhR)を介した毒性作用について研究を行った。
結果と考察
2014年度の新たな認定者は4名 、同居家族認定は17名(2015年3月末まで)で、全認定患者数は2283名[そのうち同居家族認定262名(既認定患者1名含む)]であった。
2013年度の油症検診受診者は746名で、50歳以上が全体の8割以上を占めた。自覚症状では7割以上に全身倦怠感を認め、眼脂過多の訴えが多かった。患者の高齢化とともに、油症特有の症状に、加齢に伴う症状が加わる傾向を認めた。2013年度に血液中ダイオキシン類濃度を測定した油症認定患者の平均総 TEQ(WHO2005)は53 pg TEQ/g lipid、2,3,4,7,8-PeCDF濃度の平均は83 pg/g lipid であった。骨密度・自己抗体検査・可溶性EGFR受容体・制御性T細胞数・血清微量金属濃度などについて血液中ダイオキシン類濃度との相関を検討した結果、女性において血液中1,2,3,4,6,7,8-HpCDD濃度と骨密度(Zスコア)との間に負の相関を認めた。2014年長崎県油症検診を受診した認定者にて、血液中中性脂肪濃度と制御性T細胞数に有意に正の相関がみられた。また、活性酸素の処理に重要な元素の一つである、銅の血清中濃度は、油症患者で健常者に較べ有意に低下していた。
ダイオキシン類の継世代影響を検討するために、油症患者におけるaryl hydrocarbon receptor(AhR)遺伝子多型と児への健康影響(流産、胎児死亡、性別)との関連を解析したが、いずれの健康影響においても明らかな傾向はなかった。患者のダイオキシン類の半減期の変化と体重の変化の関係を検討した結果、体重が減少すると、半減期が伸びる可能性が示されるもその相関は弱く、更なる検討が必要であると考えられた。
基礎的研究では、1)マウス肺傷害モデルにおけるsurfactant proteinについての検討、2)ダイオキシンが大腸上皮細胞に与える影響についての研究、3)PCB170の動物肝ミクロゾームによる代謝の研究、4)2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin (TCDD)によるleukotriene B4蓄積の毒性学的意義と機構の解析、5)TCDDによる胎児脳下垂体ホルモンへの影響についての検討、6)ダイオキシンによる末梢神経伝導速度に対する選択的作用の研究を行った。主な結果を示すと、3)ラット、モルモットおよびヒト肝ミクロゾームにおいて、PCB170は非常に代謝されにくいことが明らかになった。ダイオキシンは AhR を介する 5-lipoxygenase 誘導によってleukotriene B4を肝臓に蓄積させ、これが好中球浸潤による炎症亢進ひいては肝毒性を規定する一つの要因であった。TCDD 曝露母体にクエン酸回路の必須補酵素である-リポ酸 (LA) を補給すると、胎児視床下部におけるクエン酸回路の停滞および ATP 減少のみならず、胎児脳下垂体の黄体形成ホルモン (LH)低下が回復した。ダイオキシンの経口投与によってラット末梢神経の太い有髄線維の伝導速度が選択的に抑制された。また、その作用は長期に渡り回復せず、脊髄内での可塑的な変化は見いだし得なかった。
患者代表者からなる油症対策委員会を開催し、研究成果の公表および、次年度の実態調査票の改正点の検討を行った。
2013年度の油症検診受診者は746名で、50歳以上が全体の8割以上を占めた。自覚症状では7割以上に全身倦怠感を認め、眼脂過多の訴えが多かった。患者の高齢化とともに、油症特有の症状に、加齢に伴う症状が加わる傾向を認めた。2013年度に血液中ダイオキシン類濃度を測定した油症認定患者の平均総 TEQ(WHO2005)は53 pg TEQ/g lipid、2,3,4,7,8-PeCDF濃度の平均は83 pg/g lipid であった。骨密度・自己抗体検査・可溶性EGFR受容体・制御性T細胞数・血清微量金属濃度などについて血液中ダイオキシン類濃度との相関を検討した結果、女性において血液中1,2,3,4,6,7,8-HpCDD濃度と骨密度(Zスコア)との間に負の相関を認めた。2014年長崎県油症検診を受診した認定者にて、血液中中性脂肪濃度と制御性T細胞数に有意に正の相関がみられた。また、活性酸素の処理に重要な元素の一つである、銅の血清中濃度は、油症患者で健常者に較べ有意に低下していた。
ダイオキシン類の継世代影響を検討するために、油症患者におけるaryl hydrocarbon receptor(AhR)遺伝子多型と児への健康影響(流産、胎児死亡、性別)との関連を解析したが、いずれの健康影響においても明らかな傾向はなかった。患者のダイオキシン類の半減期の変化と体重の変化の関係を検討した結果、体重が減少すると、半減期が伸びる可能性が示されるもその相関は弱く、更なる検討が必要であると考えられた。
基礎的研究では、1)マウス肺傷害モデルにおけるsurfactant proteinについての検討、2)ダイオキシンが大腸上皮細胞に与える影響についての研究、3)PCB170の動物肝ミクロゾームによる代謝の研究、4)2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin (TCDD)によるleukotriene B4蓄積の毒性学的意義と機構の解析、5)TCDDによる胎児脳下垂体ホルモンへの影響についての検討、6)ダイオキシンによる末梢神経伝導速度に対する選択的作用の研究を行った。主な結果を示すと、3)ラット、モルモットおよびヒト肝ミクロゾームにおいて、PCB170は非常に代謝されにくいことが明らかになった。ダイオキシンは AhR を介する 5-lipoxygenase 誘導によってleukotriene B4を肝臓に蓄積させ、これが好中球浸潤による炎症亢進ひいては肝毒性を規定する一つの要因であった。TCDD 曝露母体にクエン酸回路の必須補酵素である-リポ酸 (LA) を補給すると、胎児視床下部におけるクエン酸回路の停滞および ATP 減少のみならず、胎児脳下垂体の黄体形成ホルモン (LH)低下が回復した。ダイオキシンの経口投与によってラット末梢神経の太い有髄線維の伝導速度が選択的に抑制された。また、その作用は長期に渡り回復せず、脊髄内での可塑的な変化は見いだし得なかった。
患者代表者からなる油症対策委員会を開催し、研究成果の公表および、次年度の実態調査票の改正点の検討を行った。
結論
油症発生45年以上経過した現在も、患者、および継世代への影響が懸念された。今後も、ダイオキシン類による慢性毒性機構の解明、およびダイオキシン類中毒の治療法開発にむけて、油症患者の病態の把握、基礎研究を継続する。研究を通じて明らかになった事実は、患者への広報のため、パンフレットや油症新聞とし発行した。また論文化したものは、日本語、英語でホームページに掲載している。
公開日・更新日
公開日
2015-06-11
更新日
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