除染等作業における作業環境の線量率・土壌中放射能濃度と労働者の身体汚染の関係に関する研究

文献情報

文献番号
201425015A
報告書区分
総括
研究課題名
除染等作業における作業環境の線量率・土壌中放射能濃度と労働者の身体汚染の関係に関する研究
課題番号
H25-労働-一般-011
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
辻村 憲雄(独立行政法人日本原子力研究開発機構 核燃料サイクル工学研究所放射線管理部線量計測課)
研究分担者(所属機関)
  • 斎藤 公明( 独立行政法人日本原子力研究開発機構 福島環境安全センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
2,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,福島第一原子力発電所事故によって環境中に放出された放射性物質の除染等作業において,作業現場の線量当量率及び土壌中放射能濃度と,労働者の身体汚染の程度,すなわち作業服,手袋及び長靴の放射性表面汚染の密度の関係を明らかにするとともに,作業現場での簡易な測定から労働者の身体の表面密度を十分な安全裕度で推定する手法を確立し,除染等作業における労働者の合理的な防護対策の立案・実施に資することを目的とする。
研究方法
研究は,(1)線量当量率と土壌中放射能濃度の関係,(2)作業服等への土壌の付着密度,さらに(3)除染等作業における労働者の身体の放射性表面汚染に係る研究の三つからなる。(1)の研究では,日本原子力研究開発機構が文部科学省からの委託研究として福島県内各地において実施した放射線モニタリングの結果をもとに線量当量率と放射性セシウムの沈着密度の関係を評価する。さらに,モンテカルロ計算シミュレーションによってスポット的な汚染箇所における放射能濃度と線量当量率の関係を得る。(2)の研究では,一般的な作業服及び手袋に黒土(含水率:10%以下~約50%)を接触させ適当な荷重をかけつつ土を擦り付けるなどしたときの土の付着量を前後の質量の差分測定によって評価し,それを土との接触面積で除することによって付着密度を得る。長靴については,土が露出した屋外(畑・運動場等)を異なる天候条件のときに歩行することによって土を付着させる。(3)では,福島県内の居住制限区域において除染作業に従事した労働者が着用した作業服,手袋及び長靴に付着した土の放射能をGe半導体検出器で測定し,作業現場の線量当量率及び土壌中放射能濃度との関係性を調べる。
結果と考察
(1) 福島県内での直近の環境放射線モニタリングから得られた放射性セシウムの土中深さ分布(緩衝深度)に基づき構築した局所的土壌汚染モデルについて,線量当量率と放射能濃度の関係を計算シミュレーションによって評価した。その結果,少なくとも幅30 cmの広がりを持つ汚染土壌については,緩衝深度の大小に関係なく,その表面から高さ5 cmでの線量当量率が5 μSv/h未満であれば,放射能濃度は500 Bq/g(平成26年4月現在)を超えないと判断できることが分かった。
(2) 作業服等への土壌の付着密度は,土の種類よりも水分量に依存し,水分量が増えるにつれ増加することを確認した。作業服及び手袋の付着密度は,含水率30~50%の黒土で10~30 mg/cm2であり,放射能濃度500 Bq/gを仮定したとしても表面密度限度を超えそうにない。一方,長靴については,降雨後の畑での歩行において500 mg/cm2を超える付着密度が観測され,濃度によっては表面密度限度を大きく超える可能性が高い。付着しやすい土壌での作業で,かつ高濃度の場合は,汚染検査を受ける前に土汚れをできるだけ取り除く等の対応が必要である。
(3) 居住制限区域の環境(線量当量率:1~2 μSv/h,土壌中放射能濃度:5~15 Bq/g)で除染作業に従事した作業者(15人)の着用した作業服,手袋,及び長靴について放射能測定を行った結果,比較的ウエットな農地での除染作業に従事した者の長靴から最大2000 Bqを超える放射能が観測されたものの,表面密度は最大でも 5.1 Bq/cm2と低い値であった。また,靴底に付着した土の付着密度を調べた結果,(2)の歩行試験で得られた値と同程度の値であることが確認された。実験的に得られた作業服等への土壌の最大付着密度(g/cm2)と作業現場の土壌中放射能濃度(Bq/g)の乗算から作業服等の最大表面密度(Bq/cm2)を推定する方法を,作業者が実際に着用した作業服等に適用したところ,その表面密度を十分な安全裕度で保守的に推定可能であることが示された。
結論
放射性セシウムに汚染された地域の線量当量率及び土壌中放射能濃度と,その環境下で作業を行う労働者の身体の表面密度の関係を実験及び計算によって評価した。その結果,作業服等への土の最大付着密度(g/cm2)と土中放射能濃度(Bq/g)の乗算によって,作業服等の最大表面密度(Bq/cm2)を推定可能であることが分かった。土中放射能濃度を直接的に評価できない場合は,汚染土壌の広がりに多少依存するが,線量当量率サーベイメータの指示値から放射能濃度の上限値の見積もりが可能であることも分かった。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
-

文献情報

文献番号
201425015B
報告書区分
総合
研究課題名
除染等作業における作業環境の線量率・土壌中放射能濃度と労働者の身体汚染の関係に関する研究
課題番号
H25-労働-一般-011
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
辻村 憲雄(独立行政法人日本原子力研究開発機構 核燃料サイクル工学研究所放射線管理部線量計測課)
研究分担者(所属機関)
  • 斎藤 公明(独立行政法人日本原子力研究開発機構 福島環境安全センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,福島第一原子力発電所事故によって環境中に放出された放射性物質の除染等作業において,作業現場の線量当量率及び土壌中放射能濃度と,労働者の身体汚染の程度,すなわち作業服,手袋及び長靴の放射性表面汚染の密度の関係を明らかにするとともに,作業現場での簡易な測定から労働者の身体の表面密度を十分な安全裕度で推定する手法を確立し,除染等作業における労働者の合理的な防護対策の立案・実施に資することを目的とする。
研究方法
研究は,(1)線量当量率と土壌中放射能濃度の関係,(2)作業服等への土壌の付着密度,さらに(3)除染等作業における労働者の身体の放射性表面汚染に係る研究の三つからなる。(1)の研究では,日本原子力研究開発機構が文部科学省からの委託研究として福島県内各地において実施した放射線モニタリングの結果をもとに線量当量率と放射性セシウムの沈着密度の関係を評価する。さらに,モンテカルロ計算シミュレーションによってスポット的な汚染箇所における放射能濃度と線量当量率の関係を得る。(2)の研究では,一般的な作業服及び手袋に黒土(含水率:10%以下~約50%)を接触させ適当な荷重をかけつつ土を擦り付けるなどしたときの土の付着量を前後の質量の差分測定によって評価し,それを土との接触面積で除することによって付着密度を得る。長靴については,土が露出した屋外(畑・運動場等)を異なる天候条件のときに歩行することによって土を付着させる。(3)では,福島県内の居住制限区域及び帰還困難区域において除染等作業に従事した労働者が着用した作業服,手袋及び長靴に付着した土の放射能をGe半導体検出器で測定し,作業現場の線量当量率及び土壌中放射能濃度との関係性を調べる。
結果と考察
(1) 福島県内での直近の環境放射線モニタリングから得られた放射性セシウムの土中深さ分布(緩衝深度)に基づき構築した局所的土壌汚染モデル(スポット汚染,排水路)について,線量当量率と放射能濃度の関係を計算シミュレーションによって評価した。その結果,少なくとも幅30 cmの広がりを持つ汚染土壌については,緩衝深度の大小に関係なく,その表面から高さ5 cmでの線量当量率が5 μSv/h未満であれば,放射能濃度は500 Bq/g(平成26年4月現在)を超えないと判断できることが分かった。また,その関係が,放射性セシウムの壊変に伴いどのように今後推移するかを評価した。
(2) 作業服等への土壌の付着密度は,土の種類よりも水分量に依存し,水分量が増えるにつれ増加することを確認した。作業服及び手袋の付着密度は,含水率30~50%の黒土で10~30 mg/cm2であり,放射能濃度500 Bq/gを仮定したとしても表面密度限度を超えそうにない。一方,長靴については,降雨後の畑での歩行において500 mg/cm2を超える付着密度が観測され,濃度によっては表面密度限度を大きく超える可能性が高い。付着しやすい土壌での作業で,かつ高濃度の場合は,汚染検査を受ける前に土汚れをできるだけ取り除く等の対応が必要である。
(3) 茨城県東海村の原子力機構核燃料サイクル工学研究所構内,福島県内の居住制限区域,及び同県内の帰還困難区域において除染等作業に従事した作業者の着用した作業服,手袋,及び長靴について放射能測定を行った。その結果,例えば,比較的ウエットな農地での除染作業に従事した者の長靴から最大2,000 Bqを超える放射能が観測されたものの表面密度に換算すると5.1 Bq/cm2であったなど,いずれの作業においても表面密度限度を超える事例は観察されなかった。また,靴底に付着した土の付着密度を調べた結果,(2)の歩行試験で得られた値と同程度の値であること,また実験的に得られた土壌付着密度と作業現場の放射能濃度の乗算から表面密度の予測が可能であることが確認された。
結論
放射性セシウムに汚染された地域の線量当量率及び土壌中放射能濃度と,その環境下で作業を行う労働者の身体の表面密度の関係を実験及び計算によって評価した。その結果,作業服等への土の最大付着密度(g/cm2)と土中放射能濃度(Bq/g)の乗算によって,作業服等の最大表面密度(Bq/cm2)を推定可能であることが分かった。土中放射能濃度を直接的に評価できない場合は,汚染土壌の広がりに多少依存するが,線量当量率サーベイメータの指示値から放射能濃度の上限値の見積もりが可能であることも分かった。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201425015C

成果

専門的・学術的観点からの成果
日本放射線安全管理学会第13回学術大会(平成26年12月)での発表「局所的土壌汚染における土壌中放射性セシウム濃度と線量当量率の関係」において,「優秀ポスター賞」を受賞した。本結果は,汚染検査実施の必要性の判断基準の見直しに活用できると考えられる。
臨床的観点からの成果
特になし
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
JPS Conference Proceedings 11, 070003 (2016)
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
日本原子力学会(3件),日本放射線安全管理学会(2件),環境放射能除染学会(1件)
学会発表(国際学会等)
1件
International Symposium on Radiation Detectors and Their Uses, 18-21 Jan 2016, Tsukuba, Japan
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tsujimura, Norio, Tadayoshi Yoshida, and Katsuya Hoshi
Measurement of Radioactive Contamination on Work Clothing of Workers Engaged in Decontamination Operations
JPS Conference Proceedings , 11 , 070003-1-070003-6  (2016)
http://dx.doi.org/10.7566/JPSCP.11.070003

公開日・更新日

公開日
2015-06-15
更新日
2019-06-17

収支報告書

文献番号
201425015Z