周産期医療の質と安全の向上のための研究

文献情報

文献番号
201424027A
報告書区分
総括
研究課題名
周産期医療の質と安全の向上のための研究
課題番号
H25-医療-指定-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
楠田 聡(東京女子医科大学 母子総合医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 藤村正哲(大阪府立母子保健総合医療センター )
  • 松田義雄(国際医療福祉大学 周産期センター)
  • 池田智明(三重大学 産科婦人科)
  • 細野茂春(日本大学医学部小児科学系小児科学分野)
  • 米本直裕(国立精神・神経医療研究センター  精神保健研究所 精神薬理研究部)
  • 河野由美(自治医科大学 小児科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
周産期母子医療センターの診療行為を標準化することで、施設間の予後の差が解消され、その結果、わが国全体の周産期医療の水準がさらに改善する可能性がある。そこで、周産期母子医療センターの診療行為を標準化する介入を行い、介入施設群で治療を受けたハイリスク児の予後が対照群の児に比べて向上するかどうかを検証する目的で介入試験を行った。さらに、ハイリスク児出生前の産科の診療行為に関するデータベースを作成した。そして、介入試験で登録された児の長期予後から、後方視的に予後を改善できる産科の介入方法を検討する。また、すでにハイリスク児のデータベースが蓄積されているので、このデータを用いて、ハイリスク児の予後改善に寄与する産科および新生児の介入因子を後方視的に解析し、予後改善に繋がる診療行為を同定した。さらに、ハイリスク児の長期予後の評価システムを構築することも研究目的とした。
研究方法
1. 介入試験:全国の総合あるいは地域周産期母子医療センター40施設で、クラスターランダム化比較試験を実施する。
2. 産科情報のデータベース作成:介入研究に登録されたハイリスク児の母体情報に関するデータベースを構築した。そして、登録児の予後との関係から、予後改善のための母体介入因子を検討する。
3. 既存データベースでの検討:データベースに登録された極低出生体重児の予後から、母体および新生児への介入因子を検討した。
4. 統計解析計画の作成と実施:周産期医療の質と安全の向上のための介入研究(クラスターランダム化試験)の登録、追跡期間中における統計解析課題についての検討を行った。
5. 介入試験の予後評価:主要評価項目が登録児で正確に行われるように体制を構築した。
結果と考察
本研究の主幹部分である介入試験は、平成23年11月25日に参加40施設を決定し、同年12月5日ランダム化割り付けを完了した。そして、平成24年2月11日に症例の登録を開始し、平成26年2月28日で、目標症例数である2,800例に達し登録を終了した。平成25年2月段階では、登録対象は3,333例となっており、当初の研究計画に従い順調に進んだ。一方、登録児のフォローアップは、平成27年1月で1,028例がフォローアップ評価の対象となるが、その約70%で予後が登録されており、フォローアップについても計画通り実施されている。また、本研究の独創的な点である組織・医療スタッフに関する調査研究も、データの収集が進んでおり、予後データとの連結で貴重な解析が可能となる。また、症例登録が終了した後にも、対照施設での介入ワークショップの実施、ガイドラインの全国の周産期母子医療センターへの配布と、周産期医療の向上のための努力が続けて行われており、本研究の果たす役割が大きいと考えられる。
 早産児の慢性肺疾患とCOPD発症との関係は重要で、将来の呼吸障害を予防するために、早産児への早期の予防介入が必要である。今後、早産児とCOPD発症の関係をさらに詳細に検討する必要がある。
産科情報のデータベースは構築されたが、産科側と新生児側のデータの回収にミスマッチがあり、今後はさらに正確に両者をマッチングし、母体への介入因子を検討する必要がある。一方、既存のネットワークデータベースを用いた母体介入因子の検討では、母体ステロイド投与によるハイリスク児の予後改善の有効性が、絨毛膜羊膜炎母体、多胎でも示された。これらの解析結果は、今後産科ガイドラインに反映されると思われる。一方、臍帯ミルキングの有効性がメタ解析で示された。既存のネットワークデータベースを用いた多数例での後方視的検討でも、同様に有効性が示されており、この介入因子も今後ガイドラインに導入されると推測される。したがって、本研究から複数の診療行為について、推奨の科学的なエビデンスを発信することができた。
介入試験の予後登録については、比較的順調に進められているが、本研究の価値は予後の登録率に大きく依存するので、さらなる登録率の向上の努力が必要である。また、発達評価に関しては、新版K式発達検査とBayley III検査との相関が明確に示され、今後のわが国のハイリスク児フォローアップ研究に大きく寄与すると考えられる。
結論
本研究の介入試験が順調に進み、予定症例数に達し、現在登録児の予後が登録中である。本研究による有害事象の報告は無かった。また、母体情報データベースの構築とデータ収集も進められている。一方、既存のネットワークデータベースを用いた検討も多くの成果が認められている。今後は、現在進められているフォローアップ体制の整備および登録児のフォローアップがさらに確実に行われるように研究班としてサポートする必要がある。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

文献情報

文献番号
201424027B
報告書区分
総合
研究課題名
周産期医療の質と安全の向上のための研究
課題番号
H25-医療-指定-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
楠田 聡(東京女子医科大学 母子総合医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 藤村正哲(大阪府立母子保健総合医療センター)
  • 松田義雄(国際医療福祉大学 周産期センター)
  • 池田智明(三重大学 産科婦人科)
  • 細野茂春(日本大学医学部小児科学系小児科学分野)
  • 米本直裕(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神薬理研究部)
  • 河野由美(自治医科大学 小児科カ学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
周産期医療の進歩により、ハイリスク児の救命率は向上し、わが国は国際的に高い水準を維持している。しかしながら、ハイリスク児の予後は、死亡あるいは神経学的障害に繋がることも多い。一方、わが国の周産期医療水準を評価するために、全国規模のハイリスク児のデータベースを厚労省研究班の事業として構築された。このデータベースの解析の結果、出生体重1500g以下のハイリスク児の生存退院率は平均としては国際的にも優れているが、施設間格差が存在することが明らかとなった。同様に、各施設での診療行為にも大きな差を認めた。そのため、周産期母子医療センターの診療行為を標準化することで、施設間の予後の差が解消され、その結果、わが国全体の周産期医療の水準がさらに改善する可能性が示された。そこで、周産期母子医療センターの診療行為を標準化する介入を行い、介入施設群で治療を受けたハイリスク児の予後が対照群の児に比べて向上するかどうかを検証する目的で介入試験を行った。なお、ハイリスク児の予後は診療行為の介入だけでは十分でなく、周産期母子医療センターの組織文化等の医療組織としての評価とその介入も行うこととした。一方、今回の介入試験での診療行為は、評価の基礎とすべきデータベースが整備されていなかったため、出生後のハイリスク児の管理とした。しかし現実には、出生前の産科の診療行為もより密接に予後と関係する。そこで、どのような産科領域での診療行為がハイリスク児の予後を改善できるかを検討するために、今回の介入試験の対象児への出生前の産科の診療行為に関するデータベースを作成し、登録された児の予後から、後方視的に予後を改善できる産科の介入方法を検討する。また、すでにハイリスク児のデータベースが蓄積されているので、このデータを用いて、ハイリスク児の予後改善に寄与する産科および新生児の介入因子を後方視的に解析し、予後改善に繋がる診療行為の検討行った。さらに、ハイリスク児の長期予後を評価するシステムがわが国では従来十分に整備されていなかったため、ハイリスク児の長期予後の評価システムを構築するために、発達検査を実施できる臨床心理士の育成、発達評価を行うための発達テストの国際標準化を行い、国際比較が可能な指標を開発することも研究目的とした。
研究方法
1. 介入試験:全国の総合あるいは地域周産期母子医療センター40施設で、クラスターランダム化比較試験を実施。
2. 産科情報のデータベース作成:介入研究に登録されたハイリスク児の母体情報に関するデータベースを構築し、登録児の予後との解析から、予後改善のための母体介入因子を検討する。
3. 既存データベースでの検討:データベースに登録された極低出生体重児の予後から、母体および新生児への介入因子を検討する。
4. 介入児の予後評価:主要評価項目が登録児で正確に行われるように体制を構築する。
結果と考察
平成24年2月から開始された介入試験の症例登録は、平成26年2月に目標症例数に達した。一方、平成25年9月からは、退院児の修正1.5歳の神経発達評価が開始された。また、ハイリスク児の予後に影響する産科の診療行為についても、産科情報のデータが収集された。したがって、研究計画全体が当初の研究計画書に従い遂行されていることが示された。一方、現時点では、明らかな有害事象を認めないこと、介入によるハイリスク児の予後の悪化を認めないことから、研究の安全性については、特に問題は存在しないと判断された。分担研究では、産科データベースについては、登録が順調に行われているが、産科登録例と新生児登録例で乖離が認められ、今後両者の正確なマッチング作業が必要である。一方、既存のデータベースを用いた後方視的研究でも、種々の予後改善因子が明らかとなり、今後の介入試験での検証が待たれるところである。予後評価については、評価方法の標準化が行われ、正確に介入効果を判定できるシステムが構築された。また、脱落例に対する補完検査方法も確立し、データの欠損例を極力減らすことが可能となった。
結論
介入試験が順調に進み、予定症例数に平成26年2月に達した。一方、本研究による有害事象の報告は無かった。また、介入研究の遂行に必要な母体情報データベースの構築、フォローアップ体制の整備も行われた。さらに、周産期医療分野の診療ガイドラインへの新たな提言も作成できた。したがって、研究計画書に従い、研究が遂行されていることが示された。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

総合研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
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研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201424027C

収支報告書

文献番号
201424027Z