B型肝炎ウイルス感染受容体の分離・同定と感染系の樹立及び感染系による病態機構の解析と新規抗HBV剤の開発

文献情報

文献番号
201423032A
報告書区分
総括
研究課題名
B型肝炎ウイルス感染受容体の分離・同定と感染系の樹立及び感染系による病態機構の解析と新規抗HBV剤の開発
課題番号
H24-B創-肝炎-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
上田 啓次(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 森石 恆司(山梨大学医学工学研究部 微生物学講座)
  • 黒田 俊一(名古屋大学大学院 命農学研究科生命技術科学専攻産業生命工学研究分野)
  • 黒木 和之(金沢大学がん進展制御研究所)
  • 岡本 徹(大阪大学微生物病研究所)
  • 三善 英知(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 三崎 亮(大阪大学生物工学国際交流センター)
  • 竹原 徹郎(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 考藤 達哉(独立行政法人国立国際医療研究センター国府台病院肝炎・免疫研究センター)
  • 吉山 裕規(島根大学医学部 微生物学教室)
  • 大崎 恵理子(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 斉藤 伸一(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
176,924,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 HBVの特性に基づいた新規薬剤・治療法の開発は急務である。
 これまでの成果として、HBVppなどの組換えHBVの作製に成功し、感染能を指標にしたHBV感染受容体のスクリーニング系を開発した。HBVppを用いた実験で肝癌由来培養細胞株にHBV付着因子が存在するという結果も得つつある。HBV感染受容体全容の解明し簡易なHBV感染の構築による薬剤探索を促進させたい。
 HBV感染病態(肝炎、肝硬変、肝癌)では糖鎖修飾状態が変動しHBV感染による免疫抑制にも関わると思われるので、糖鎖修飾を標的にした抗HBV剤の開発も重要と思われる。HBVの人工的持続産生細胞(HB611)や遺伝子発現系で糖鎖修飾の変動や免疫制御系遺伝子のプロファイルを探索し、肝炎発症機序の解明に迫る。
 また、HBVpol高純度・大量精製し、活性測定系と立体構造の解明により薬剤探索を目指す。
研究方法
HBV受容体の分離・同定と感染系の確立.
1)HBV preS1~SSN結合因子のORFをクローニングし、合成preS1(myristoyl-2-47)ペプチドとの結合性を確認した。
2)NTCP発現細胞を作製し、HBV感染能やBNC取込み能を検討した。
3)PreS1に結合能によりNTCP発現細胞を分画し、NTCP高発現株を分離し、種々の感染法を検討した。
4)NTCP発現HBV感染系で抗HBV化合物の同定を試みた。
5)各種蛍光標識したBNCを調製し、in vitroにおいてヒト肝臓由来細胞(Huh7,HepG2),HepG2-NTCP、非ヒト肝臓由来細胞(HEK293)への結合と侵入について解析した。
6)hNTCP-TGを樹立し、初代肝細胞を取得してHBV感染性を検討した。
7)GFP等を挿入した組換えHBV産生ベクターを作製、及び HBV core、pol、X、env遺伝子を発現するHBVパッケージング細胞を樹立した。
糖鎖修飾とHBV感染・増殖・病態.
1)ヒト肝がん細胞株Huh6とHB611とで最も差の見られたフコース転移酵素Fut8の過剰発現とKOによるBNCの取り込み変化を検討した。
2)EndoM-N175Qを利用し糖鎖改変HBVの作製のための予備実験を行った。
HBVによる免疫抑制機構の解明.
1)HBV産生細胞株HepG2.2.15、HB611、その親株であるHepG2、Huh6を用いてPD-L1の発現頻度を解析した。
2)健康成人の末梢血単核球とHBV発現細胞株とを共培養することで、NK細胞、T細胞、NKT細胞のPD-1、Tim-3発現頻度の変化を検討した。
3)B型肝炎患者の末梢血単核球を採取し、フローサイトメトリーにてNK細胞(CD3-CD56+細胞)、T細胞(CD3+CD56-細胞)、NKT細胞(CD3+CD56+細胞)のPD-1、Tim-3の発現を解析した。
4)DCサブセット(PDC、MDC、BDCA3DC)とNK細胞を採取し、HBV-Huh7と共培養して、I型、II型、III型IFNの産生と肝細胞ISGの誘導とIDOの発現、及びHBV複製抑制効果を検討した。
HBVポリメラーゼの発現・精製とアッセイ系の確立.
1)HBVポリメラーゼ逆転写ドメイン(RT)の大腸菌のコドン変換Strep-RT-His6を構築、変性条件下で発現・精製し、巻き戻しによる活性測定系構築を試みた。
結果と考察
1)HBV-RX1はpreS1結合因子と結合するが、細胞質局在でHBVの付着・侵入に機能している可能性は低いと思われた。
2)NTCP発現HBV感染系において、Trypsin EDTA処理がHBV感染に有効であった。
3)Proscillaridin A(EC50 = 7.2 nM、SI値75.5)が抗HBV活性を示した。
4)NTCP非依存的なHBVの感染機構が示唆された。
5)BNCの感染と細胞表面のコアフコースの重要性が明らかになった。
6)EndoM-N175Qの糖転移反応においてはオキサゾリン化糖転移効率が良いことが分かった。
7)肝障害にPD-1陽性NK細胞が関与している可能性が示唆された。
8)T細胞におけるTim-3発現が、免疫機能を抑制しウイルスの増殖・持続感染に関与している可能性が示唆された。
9)急性期の免疫細胞によるHBV複製抑制効果にIDOが関与していることが示された。
10)変性条件下でのStr-RT-Hisの高純度・精製と活性検出に成功した。
結論
 培養細胞系を用いたHBV感染系を構築し、抗HBV剤を見出した。新規preS1結合因子を分離するとともに、HBV感染におけるコアフコースの重要性、NTCP非依存性感染機構が示唆された。またPD1陽性NK細胞やIDOによる免疫抑制機構が示唆された。HBVpol活性測定系による抗HBV剤探索の可能性が開かれた。

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201423032Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
230,000,000円
(2)補助金確定額
230,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 144,345,113円
人件費・謝金 22,817,201円
旅費 2,386,761円
その他 7,588,922円
間接経費 53,076,000円
合計 230,213,997円

備考

備考
本差額に関しては、自己資金により補填した。

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
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