文献情報
文献番号
201423004A
報告書区分
総括
研究課題名
肝硬変に対する細胞治療法の臨床的確立とそのメカニズムの解明
課題番号
H24-肝炎-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
坂井田 功(国立大学法人山口大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 柳瀬 幹雄(独立行政法人国立国際医療研究センター)
- 上野 義之(山形大学医学部内科学第二講座)
- 宮島 篤(東京大学分子細胞生物学研究所)
- 仁科 博史(東京医科歯科大学難治疾患研究所)
- 小川 佳宏(東京医科歯科大学分子代謝医学分野)
- 稲垣 豊(東海大学医学部再生医療科学)
- 大河内 仁志(国立国際医療研究センター細胞組織再生医学研究部)
- 寺井 崇二(新潟大学大学院医歯学総合研究科)
- 酒井 佳夫(金沢大学医薬保健研究域)
- 梅村 武司(信州大学医学部附属病院消化器内科)
- 高見 太郎(山口大学大学院医学系研究科)
- 疋田 隼人(大阪大学大学院医学系研究科消化器内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
寺井崇二(平成26年4月1日~同年12月31日山口大学大学院医学系研究科准教授、平成27年1月1日~同年3月31日新潟大学大学院医歯学総合研究科教授)
研究報告書(概要版)
研究目的
申請者らは「自己骨髄細胞投与療法(ABMi療法)」を世界に先駆けて開発し、その臨床的安全性・有効性を報告、技術移転を行った山形大学及び韓国延世大学でも同様の安全性・有効性が改めて確認、報告された。また国立国際医療研究センターでは、HIV合併C型肝硬変症に対するABMi療法を「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針(以下、ヒト幹指針)」の承認後に開始した。このようにABMi療法は臨床的に安全性が確認され有効性が証明されつつあるが、保険適応されるにはより質の高いエビデンスが必要である。そこで「C型肝炎ウイルスに起因する肝硬変患者に対するABMi療法のランダム化比較試験(以下、本試験)」を計画している。
また基礎研究では、肝線維化・非アルコール性脂肪肝炎(NASH)モデルマウスの解析から骨髄または脂肪組織由来細胞の抗線維化メカニズムやNASH病態を解明しABMi療法の治療効果を検討することで、B型肝炎ウイルスやNASHに起因する肝硬変症への適応拡大を目指す。さらに間葉系だけでなく骨髄球系(マクロファージ系)細胞の肝硬変に対する治療効果がマウス基礎研究から示唆され、培養マクロファージ系細胞投与による新規肝臓再生修復療法の開発のための検討も行う。
また基礎研究では、肝線維化・非アルコール性脂肪肝炎(NASH)モデルマウスの解析から骨髄または脂肪組織由来細胞の抗線維化メカニズムやNASH病態を解明しABMi療法の治療効果を検討することで、B型肝炎ウイルスやNASHに起因する肝硬変症への適応拡大を目指す。さらに間葉系だけでなく骨髄球系(マクロファージ系)細胞の肝硬変に対する治療効果がマウス基礎研究から示唆され、培養マクロファージ系細胞投与による新規肝臓再生修復療法の開発のための検討も行う。
研究方法
臨床研究では、本試験を先進医療Bとして実施しつつ、多施設での実施体制整備を行う。
基礎研究では、骨髄由来細胞による肝線維化改善メカニズムを解明するため、骨髄中で存在比率の高い骨髄球系細胞の遺伝子発現解析や、四塩化炭素を頻回投与して肝線維化を誘導したマウスでの線維化の改善効果を解析するなど、様々な肝線維化モデル系の解析評価を行う。また、骨髄から分離された直後と継代培養を経た間葉系幹細胞分画におけるコラーゲンとMMP産生を定量解析する。
さらにABMi療法のNASHに起因する肝硬変症での検討のために、「高脂肪食負荷メラノコルチン4型受容体(MC4R)欠損マウスモデル系」において経時的な解析を行う。またヒト肝臓病理検体を用いた解析も行う。
基礎研究では、骨髄由来細胞による肝線維化改善メカニズムを解明するため、骨髄中で存在比率の高い骨髄球系細胞の遺伝子発現解析や、四塩化炭素を頻回投与して肝線維化を誘導したマウスでの線維化の改善効果を解析するなど、様々な肝線維化モデル系の解析評価を行う。また、骨髄から分離された直後と継代培養を経た間葉系幹細胞分画におけるコラーゲンとMMP産生を定量解析する。
さらにABMi療法のNASHに起因する肝硬変症での検討のために、「高脂肪食負荷メラノコルチン4型受容体(MC4R)欠損マウスモデル系」において経時的な解析を行う。またヒト肝臓病理検体を用いた解析も行う。
結果と考察
<臨床研究>エビデンスレベルの高い自己骨髄細胞投与療法の有効性・安全性を確認するため、「C型肝炎ウイルスに起因する肝硬変患者に対する自己骨髄細胞投与療法の有効性と安全性に関する研究」のランダム化比較試験を山口大学で「先進医療B」として2014年12月12日に第1例目を実施し、2015年1月30日に2例目を標準的治療群として登録した。また、国立国際医療研究センターや山形大学への支援を行い、両施設とも2014年9月17日に厚生労働省ヒト幹細胞臨床研究審査委員会を経て大臣承認を得た。また骨髄細胞HCV RNA定量測定系における洗浄・ヘパリナーゼ添加処理による定量の感度が改善した。
<基礎研究>線維化過程における骨髄間葉系幹細胞もしくは造血幹細胞に由来する細胞の肝組織への生着や分化動態解析により、生着した造血幹細胞由来の血球系細胞がMMP-13やMMP-9を産生することで線維化の改善に寄与することを確認し、骨髄間葉系幹細胞及び細胞由来分泌物(細胞外小胞)の酸化ストレス抑制作用を確認し、肝硬変における肝線維化改善機序のひとつであることを明らかにした。また肝線維化刺激に対して肝細胞及び非実質細胞のいずれの細胞でもCTGF産生が亢進し、両細胞のCTGF産生抑制で肝線維化が改善することを確認するなど、様々な肝線維化モデル系を解析評価した。さらに、四塩化炭素肝線維化モデルマウスに骨髄中の単球を単離して投与した結果、投与群でコラーゲン産生が抑制されることが示され、一方、肝硬変マウスに対してマウス脂肪組織由来間質細胞を経脾経門脈的投与し、2週間以上の生着及び肝線維化・肝機能の改善を確認し、門脈または脾臓から投与の有用性が示唆された。マウスNASHモデル早期段階で肝Crown-like structureを認め、肝線維化面積と正相関を示し、ヒトNASHでもhCLSを認め肝細胞風船様変性と正相関を示し、質量顕微鏡法を用いて、マウス部分肝切除後の肝再生における分子量1000以下の低分子を網羅的に解析し、いくつかのリン脂質は肝臓小葉構造に沿って濃度勾配で存在することを初めて明らかにした。
<基礎研究>線維化過程における骨髄間葉系幹細胞もしくは造血幹細胞に由来する細胞の肝組織への生着や分化動態解析により、生着した造血幹細胞由来の血球系細胞がMMP-13やMMP-9を産生することで線維化の改善に寄与することを確認し、骨髄間葉系幹細胞及び細胞由来分泌物(細胞外小胞)の酸化ストレス抑制作用を確認し、肝硬変における肝線維化改善機序のひとつであることを明らかにした。また肝線維化刺激に対して肝細胞及び非実質細胞のいずれの細胞でもCTGF産生が亢進し、両細胞のCTGF産生抑制で肝線維化が改善することを確認するなど、様々な肝線維化モデル系を解析評価した。さらに、四塩化炭素肝線維化モデルマウスに骨髄中の単球を単離して投与した結果、投与群でコラーゲン産生が抑制されることが示され、一方、肝硬変マウスに対してマウス脂肪組織由来間質細胞を経脾経門脈的投与し、2週間以上の生着及び肝線維化・肝機能の改善を確認し、門脈または脾臓から投与の有用性が示唆された。マウスNASHモデル早期段階で肝Crown-like structureを認め、肝線維化面積と正相関を示し、ヒトNASHでもhCLSを認め肝細胞風船様変性と正相関を示し、質量顕微鏡法を用いて、マウス部分肝切除後の肝再生における分子量1000以下の低分子を網羅的に解析し、いくつかのリン脂質は肝臓小葉構造に沿って濃度勾配で存在することを初めて明らかにした。
結論
先進医療B「C型肝炎ウイルスに起因する肝硬変患者に対するABMi療法のランダム化比較試験」として実施を開始した。本臨床研究の実施により質の高いエビデンスを得られれば、救命が必要な肝硬変症患者に対してABMi療法を広く行うことが可能になり得ると考える。また他の細胞源として脂肪組織由来細胞、マクロファージ系細胞に注目して基礎研究を行うことで、本治療法の今後の展開が期待でき、さらに今後増えると予測されるNASH研究を行うことで、肝硬変患者救命のため臨床及び基礎の両面から研究の進捗が期待される。
公開日・更新日
公開日
2017-01-20
更新日
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