性感染症に関する特定感染症予防指針に基づく対策の推進に関する研究

文献情報

文献番号
201420013A
報告書区分
総括
研究課題名
性感染症に関する特定感染症予防指針に基づく対策の推進に関する研究
課題番号
H24-新興-一般-004
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
荒川 創一(神戸大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 晴夫(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 松本 哲朗(産業医科大学 医学部)
  • 余田 敬子(東京女子医科大学 医学部)
  • 三鴨 廣繁(愛知医科大学 医学部)
  • 川名 敬(東京大学 医学部)
  • 小野寺 昭一(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 岡部 信彦(川崎市健康安全研究所)
  • 白井 千香(大阪市立大学 大学院医学研究科)
  • 小森 貴(公益社団法人日本医師会)
  • 大西 真(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 田中 一志(神戸大学 医学研究科)
  • 中瀬 克己(岡山大学 医療教育総合開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
5,618,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者交替(追加) 中瀬 克己(平成26年7月4日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
性感染症発症者は、2012年以降、増加が見られている。特定感染症予防指針に基づく対策の推進につながる、各種研究に取り込む。
研究方法
(1)発生動向から見た性感染症
 性器クラミジア感染症、性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、淋菌感染症及び梅毒の最近の動向を解析。
(2)性感染症全数把握調査(センチネルサーベイランス)から見た動向
 全国7県データから、人口10万人対人年値を、性別、5歳刻み毎に推計。
(3)Mycoplasma genitalium検査の実用化
M.genitaliumの検査法を確立し、保険適用を目指す。
(4)尖圭コンジローマの妊娠中発症への対応
尖圭コンジローマ合併妊婦への病巣レーザー蒸散による母子感染予防。
(5)健康な日本人女性におけるHPV感染の現状
子宮頸管擦過検体のHPVウイルスジェノタイピング検査および細胞診。
(6)淋菌の分子タイピング、耐性検索に関する研究
関東地域分離淋菌370株の分子タイピング解析を行なった。
(7)耳鼻咽喉科外来における咽頭の淋菌・クラミジア検査
耳鼻科受診患者で、咽頭および上咽頭の淋菌・クラミジア検査実施。
(8)性感染症のサーベイランスの充実強化に関する研究
Englandで行われている多様なHIV/STIサーベイランス事業の解析。
結果と考察
(1)性器クラミジア感染症数は例年通りで、20代後半の男性と20代前半の女性で多かった。性器ヘルペスウイルス感染症は幅広い年齢の女性で2011年から増加。尖圭コンジローマの定点当たり報告数は、概ね例年通りであり、男性では30代前半、女性では20代前半に多かった。淋菌感染症の定点当たり報告数は、男性では20代後半、女性では20代前半に多く、2014年は30-40代男性と25歳以上の幅広い年齢の女性で増加していた。淋菌感染症の定点当たり報告数は、男性では20代後半、女性では20代前半に多く、2014年は30-40代男性と25歳以上の幅広い年齢の女性で増加していた。
(2)性器クラミジア感染症は3年間で男女とも増加、淋菌感染症と性器ヘルペスは女性で増加していた。性感染症全体では、3年間で明らかな増加が認められた。
(3)Anyplex systemで、最低検出保障DNAコピー数は約50コピー/検体と考えられた。
(4)尖圭コンジローマの垂直感染予防法としての、母体病巣へのレーザー蒸散術の有用性が示された。またコンジローマ合併妊婦のピークが20才代であること、その多くが不顕性感染後に妊娠を契機に発症したことがわかった。
(5)HPVハイリスク型が2株以上検出される症例が全体の27.3%(18/66)存在していた。HPV陰性者は30.4% (24/79)であり、HPVワクチン株のみ保有者は全体の25.3%(20/79)、HPVワクチン型株+HPV非ワクチン型株保有者は7.6%(6/79)、HPV非ワクチン型株のみ保有者は36.7%(29/79)を占めていた。
(6)CFM-DS/Rの世界的拡散は大きく2つの波が存在していたことが想像されている。第1波はPBP 2 X 遺伝子を保持するMLST7363型株によるものであり、第2波はPBP 2 XXXIVを保持するMLST1901型株によるものであると考えられている。いずれも、国内で最も早く分離されていることが示された。
(7)男性84人、女性78人の計163人に実施され、11人の咽頭から淋菌が、7人の咽頭からクラミジアが検出された。淋菌・クラミジアの同時検出例はなかった。
(8)感染症発生動向調査に留まらず、多様な動向把握は目的を明確にして実施する事で効果的な事業への改善が行いやすくなると考えられた。
結論
2012年から2014年の3年間で、性感染症は動向調査(定点把握)でも、横ばい~増加がみられ、センチネルサーベイランスでは、クラミジアの男女ともにおける増加、性感染症全体で増加が見られた。その他の研究課題には満足すべき成果と進展が見られた。

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201420013B
報告書区分
総合
研究課題名
性感染症に関する特定感染症予防指針に基づく対策の推進に関する研究
課題番号
H24-新興-一般-004
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
荒川 創一(神戸大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 小野寺 昭一(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 岡部 信彦(川崎市健康安全研究所)
  • 松本 哲朗(産業医科大学 医学部)
  • 白井 千香(大阪市立大学 大学院医学研究科)
  • 小森 貴(公益社団法人日本医師会)
  • 大西 真(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 余田 敬子(東京女子医科大学 医学部)
  • 三鴨 廣繁(愛知医科大学 医学部)
  • 川名 敬(東京大学 医学部)
  • 田中 一志(神戸大学 医学研究科)
  • 伊藤 晴夫(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 中瀬 克己(岡山大学 医療教育総合開発センター)
  • 谷畑 健生(国立保健医療科学院 健康危機管理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
性感染症の特定感染症予防指針に基づく対策を推進するため、2012年~2014年の3年間にわたって、様々な角度から検討を加える。
研究方法
(1) 発生動向から見た性感染症の調査
性器クラミジア感染症、性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、淋菌感染症及び梅毒の動向を各年度調査し、2000年からの推移を検討。年代別にも解析。
(2) 性感染症全数把握調査(センチネルサーベイランス)から見た実数調査
全国から選定した7モデル県での、人口10万人対人年値を、5歳刻み毎に推計。男女別、既婚・未婚別にも解析。
(3) 非クラミジア非淋菌性感染症における微生物の検討とその検査キット評価
Mycoplasma genitaliumの種々の検査法を比較検討し、最も妥当な方法で保険診療への適用を目指す。
(4) HPV 感染症と子宮頸癌についての啓発
若年者を中心に、HPV感染の拡がりを把握し、低リスク型(尖圭コンジローマ)においてはその不顕性感染の発症リスクとしての妊娠時の実態調査。高リスク型においては、子宮頸癌との関係を啓発し、予防にむすびつける。
(5)C. trachomatisの変異検索と有効な治療法確立に向けて
C. trachomatis, M. genitalium, U. urealyticum感染に対する抗菌薬の有効性をシタフロキサシン100mg×2/日・7日間とアジスロマイシン2g単回とを比較。
(6)性感染症の若者が受診しやすいシステムの構築~HPVワクチンアンケート調査および健常婦人のHPV保有調査~
中高教師のHPV感染、ワクチン等に対する理解・認識のアンケート調査および、健常婦人子宮頸部擦過検体からのHPV型別同定。
(7)淋菌の微量液体希釈法での薬剤感受性(MIC)測定結果について
兵庫県下での分離淋菌の各種抗菌薬への感受性調査。
(8)分子タイピング、耐性検索に関する研究
セフィキシムやアジスロマイシンにおける耐性機序の解明。
(9)耳鼻咽喉科外来における咽頭の淋菌・クラミジア検査
口内炎、咽頭炎、扁桃炎、咽喉頭異常感の患者、咽頭の性感染検査希望者に咽頭と上咽頭の淋菌・クラミジア検査を実施し、分離数等に一定の傾向があるかどうか、経年的検討。
(10)若年者の口腔内クラミジア・淋菌感染に関する研究、同性行動調査
保健所HIV検診若年者に口腔内保菌検査と、性行動アンケート調査。
(11)性感染症サーベイランス手法について海外でのそれを調査
英国での多様なHIV/STIサーベイランス事業の情報を解析。
結果と考察
(1)性器クラミジア感染症は再上昇してきている。梅毒の3年間での急速な増加が目立つ。性器ヘルペスは増加傾向で尖圭コンジローマも微増。淋菌感染症は全体では横ばいであるが、年齢層によっては増加。
(2)男女ともクラミジア感染症は3年間で徐々に増加。性器ヘルペス・淋菌感染症は女性で経年増加。梅毒も増加傾向。全体的に性感染症総数は3年間で増加してきている。
(3)M.genitalium検査の新しいキットの有用性が立証された。
(4)妊婦での尖圭コンジローマの顕在化とそれに対するレーザー療法での分娩時新生児への伝播防止が可能であった。
(5)シタフロキサシンとアジスロマイシンとが非淋菌性尿道炎全般に有効であることが確認された。
(6)中高での生徒がHPVワクチン接種をしているか否かの調査はほとんどなされていない。健常婦人で高リスク型HPVの重複感染の頻度が高く、非ワクチン型も少なくないことが判明。
(7)スペクチノマイシンとセフトリアキソンへの耐性は無し。アジスロマイシンに1部が耐性。その他の承認薬は多くが耐性。
(8)セフィキシムやアジスロマイシンにおける耐性機序が分子レベルで明確となった。
(9)淋菌が扁桃窩から検出されることが多く、うがい液を検体とするときの偽陰性が今後の課題となる。
(10) 口腔性交が日常化しているにもかかわらず、その感染防止については無防備である実態が明らかとなった。
(11) 英国におけるモデル地域でのサーベイランス結果の比較に特長がある。
結論
2012年からの3年間の全数把握調査で、性感染症は全体的に見て、増加してきている。定点動向調査の推移から、性感染症の有病率を導くには、全数把握調査の結果から、推計調整倍率を求め、年齢階級ごとの定点報告数と人口データがあれば、都道府県毎の真値に近いそれ(有病率)が得られるものと考えられる。また、耐性淋菌や、口腔内保菌・伝播の問題、HPV感染の侵淫など、多くの課題も浮かび上がってきている。
今後の3年間の新たな研究期間において、これらを好転させる啓発などを強化していく必要性を結論としたい。

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201420013C

収支報告書

文献番号
201420013Z