非ヘルペス性急性辺縁系脳炎の前駆期-先行感染症期の病態解明による障害防止研究

文献情報

文献番号
201419078A
報告書区分
総括
研究課題名
非ヘルペス性急性辺縁系脳炎の前駆期-先行感染症期の病態解明による障害防止研究
課題番号
H24-神経・筋-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 幸利(独立行政法人国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 森 寿(富山大学大学院医学薬学研究部、分子神経科学)
  • 西田 拓司(独立行政法人国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター 臨床研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
非ヘルペス性急性辺縁系脳炎(NHALE)では記憶の障害が高頻度に残り、日常生活の支障が大きい。NHALEの前駆期-先行症状期の病態解明を行い、先行症状出現時点でのNHALE発病予防、早期診断治療を可能にしたい。
研究方法
1. NHALE症例の前駆期保存検体を用いた前駆期自己免疫状況の検討(2012-14年度)
2. Passive transferマウスモデルを用いた前駆期自己免疫状況の検討(2013-14年度)
3. 正常対照の年齢・性別血清GluN2B-NT2抗体の自然経過と抗体高値対照例の検討(2014年度)
4. 免疫調節遺伝子のゲノム解析(2012-14年度)
5. NHALE先行症状期に無菌性髄膜炎を呈した症例の髄液所見の検討(2014年度)
6. Passive transferマウスモデルを用いた先行症状期自己免疫状況の検討(2014年度)
7. 抗神経抗体の測定法開発(2012-14年度)
結果と考察
【前駆期-passive transfer研究】ウサギ抗ヒトGluN2B-NT2抗体をマウス海馬に反復投与することで、生理食塩液投与群と正常ウサギ血清protein A 吸着分画投与群と比較して、挙尾反応が高率に認められ、興奮性の行動変化が起こった。マイクロアレイ解析で脳のnapa、sv2c、pam、fam53bの発現低下が見られ、シナプス機能低下、GABA作動性抑制性シナプス伝達に障害をもたらし、興奮性行動につながる可能性が示唆された。
【先行症状期-一般髄液検査値研究】先行症状期の髄液データがあるNHALE17例では、髄液細胞数が非炎症性の疾病対照群に比べて有意に多く、脳炎発病に向けて低下した。NHALE先行症状期には、感染対照群である無菌性髄膜炎に比べて髄液蛋白濃度は有意に高値で、髄液糖濃度は有意に低値であった。無菌性髄膜炎であっても蛋白がかなり高く糖が低い特徴があれば、NHALEへの移行に注意する必要がある。
結論
NHALEの10%程度の症例に、前駆期症状と推定できる精神障害関連疾患の既往歴があり、20-40歳の女性正常対照の中に血清NMDA型GluR抗体が著しく高値の群が見つかり、NMDA型GluR抗体をマウスにpassive transferすると、マウスに興奮性の行動変化が観察された。これらのことから、NHALE患者には、発病のかなり前からNMDA型GluR抗体が存在し、前駆期として軽度の精神神経症状を呈する症例があると推測できる。先行症状期の無菌性髄膜炎では、NHALEに移行しない症例に比べて髄液蛋白濃度は有意に高値で、髄液糖濃度は有意に低値であり、早期診断に繋がる可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-

文献情報

文献番号
201419078B
報告書区分
総合
研究課題名
非ヘルペス性急性辺縁系脳炎の前駆期-先行感染症期の病態解明による障害防止研究
課題番号
H24-神経・筋-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 幸利(独立行政法人国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 森 寿(富山大学大学院医学系研究科分子神経科学)
  • 西田 拓司(独立行政法人国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター 臨床研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
非ヘルペス性急性辺縁系脳炎(NHALE)では記憶の障害が高頻度に残り、日常生活の支障が大きい。NHALEの前駆期-先行症状期の病態解明を行い、先行症状出現時点でのNHALE発病予防、早期診断治療を可能にしたい。
研究方法
1. NHALE症例の前駆期保存検体を用いた前駆期自己免疫状況の検討(2012-14年度)
2. Passive transferマウスモデルを用いた前駆期自己免疫状況の検討(2013-14年度)
3. 正常対照の年齢・性別血清GluN2B-NT2抗体の自然経過と抗体高値対照例の検討(2014年度)
4. 免疫調節遺伝子のゲノム解析(2012-14年度)
5. NHALE先行症状期に無菌性髄膜炎を呈した症例の髄液所見の検討(2014年度)
6. Passive transferマウスモデルを用いた先行症状期自己免疫状況の検討(2014年度)
7. 抗神経抗体の測定法開発(2012-14年度)
結果と考察
【前駆期-既往歴研究】非傍腫瘍性のNHALE患者の約10%に、うつなどの気分障害およびアルコールや覚醒剤に対する依存症といった精神障害関連疾患の既往歴が見られ、NMDA型GluR抗体がNHALE発病前から存在し、前駆期症状として精神障害をもたらしている可能性がある。卵巣奇形腫のある傍腫瘍性NHALE患者では約4%に脳炎・髄膜炎の既往がみられ、NMDA型GluR抗体が以前から存在し、自己免疫介在性の髄膜炎・脳炎を繰り返している可能性がある。
【前駆期-NMDA型GluR抗体陽性患者髄液in vitro研究】NMDA型GluR抗体陽性脳炎患者髄液は培養神経細胞のアポトーシスを促進するが、髄液IgG分画はシナプス外NMDA型GluRを内在化し、興奮毒性によるアポトーシスを抑制する。NHALE患者髄液中のIgG分画がAktリン酸化を抑制することを見出し、シナプスNMDA型GluRを内在化していると考えた。
【前駆期-合成NMDA型GluR抗体によるPassive transfer研究】ウサギ抗ヒトGluN2B-NT2抗体をマウス海馬に反復投与することで、挙尾反応(興奮性行動変化)が認められ、GluN2BのN末に対する抗体が行動変化を起こすことが分かった。マイクロアレイ解析で、海馬napa、sv2c、pam、fam53bの発現低下が見られ、シナプス機能低下、GABA作動性抑制性シナプス伝達に障害をもたらし、興奮性行動につながる可能性があると考えている。
【先行症状期-症状・検査の検討】NHALE207例中78%に先行症状を認め、感染病原体が確定される症例は小児主体で11%と少なく、発熱、頭痛といった不明熱的な症状が多い。脳炎症状出現前に髄液検査された18例中18例で無菌性髄膜炎の診断がされていた。一般血液検査では、リンパ球、血小板の減少、IgA高値、CRPの比較的低値が特徴として見られ、早期診断に資する特徴の可能性がある。先行症状期の髄液一般データでは、髄液細胞数が非炎症性の疾病対照群に比べて有意に多く、脳炎発病に向けて低下すること、無菌性髄膜炎に比べて髄液蛋白濃度は有意に高値で、髄液糖濃度は有意に低値であった。無菌性髄膜炎で蛋白高値、糖比較的低値の場合は、NHALEへの進展に注意する。先行症状期髄液albumin濃度が対照に比べて高く、末梢血albumin濃度は、対照より有意に低値で、血液脳関門の破綻によるものと推測している。NHALE発病予防には血液脳関門の保護も重要であると思われる。
【その他-新規抗体測定系開発研究】浮遊性293F細胞株を用いたNMDA型GluR抗体測定系を開発している。
結論
3年間の研究で、NHALEの10%程度の症例に前駆期症状と推定できる精神障害関連疾患の既往歴があり、20-40歳の女性正常対照の中に血清NMDA型GluR抗体が著しく高値の群が見つかり、NMDA型GluR抗体をマウスにpassive transferすると、マウスに興奮性の行動変化が観察された。これらのことから、NHALE患者には、発病のかなり前からNMDA型GluR抗体が存在し、前駆期として軽度の精神神経症状を呈する症例があると推測した。先行症状期にはリンパ球減少等からNMDA型GluR抗体産生、血液脳関門破綻などが加わり、脳炎発病に至る可能性を推測した。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201419078C

収支報告書

文献番号
201419078Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,000,000円
(2)補助金確定額
7,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,154,472円
人件費・謝金 0円
旅費 122,520円
その他 4,723,618円
間接経費 0円
合計 7,000,610円

備考

備考
預金利息610円

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-