呼吸不全に関する調査研究

文献情報

文献番号
201415111A
報告書区分
総括
研究課題名
呼吸不全に関する調査研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-076
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
巽 浩一郎(千葉大学大学院医学研究院 呼吸器内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 三嶋 理晃(京都大学大学院医学研究科 呼吸器内科学)
  • 平井 豊博(京都大学大学院医学研究科 呼吸器内科学)
  • 林田 美江(信州大学医学部附属病院 呼吸器・感染症内科)
  • 瀬山 邦明(順天堂大学大学院医学研究科 呼吸器内科学)
  • 井上 義一(国立病院機構近畿中央胸部疾患センター 臨床研究センター)
  • 陳 和夫(京都大学大学院医学研究科 呼吸管理睡眠制御学講座)
  • 中西 宣文(国立循環器病センター研究所 肺高血圧先端医療学研究部)
  • 田邉 信宏(千葉大学大学院医学研究院 先端肺高血圧症医療学)
  • 西村 正治(北海道大学大学院医学研究科 呼吸器内科学分野)
  • 谷口 博之(公立陶生病院 呼吸器・アレルギー疾患内科)
  • 田村 雄一(慶應義塾大学医学部 循環器内科)
  • 塩谷 隆信(秋田大学医学部保健学科 理学療法学)
  • 花岡 正幸(信州大学医学部 内科学第一講座)
  • 長瀬 隆英(東京大学大学院医学系研究科 呼吸器内科学)
  • 伊達 洋至(京都大学大学院医学研究科 呼吸器外科学)
  • 別役 智子(慶應義塾大学医学部 呼吸器内科)
  • 井上 博雅(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 呼吸器内科学)
  • 佐藤 徹(杏林大学医学部 循環器内科学)
  • 植田 初江(国立循環器病研究センター 病理部)
  • 葛西 隆敏(順天堂大学医学部 循環器内科学)
  • 木村 弘(奈良県立医科大学 内科学第二講座)
  • 多田 裕司(千葉大学大学院医学研究院 呼吸器内科学)
  • 坂尾 誠一郎(千葉大学医学部附属病院 呼吸器内科)
  • 津島 健司(千葉大学医学部附属病院 呼吸器内科)
  • 寺田 二郎(千葉大学大学院医学研究院 呼吸器内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
15,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 呼吸器系難治性疾患の横断的・縦断的研究を通して、1) 患者生命予後とQOLの向上の実現、2) 厚生労働省の医療政策に活用しうる知見の収集が大きな目的である。日本呼吸器学会との連携を図りながら、「重症度分類を含めた診断基準の作成」、「診療ガイドラインの作成」を実施する。難治性呼吸器疾患の治療には「肺移植」も含まれる。その結果、「医療政策に活用しうる知見の収集・活用」を通して、「難治性呼吸器疾患患者QOL向上」が期待される。
研究方法
 呼吸不全に関する調査研究班の対象疾患、対象治療は下記のとおりである。(1) 肺動脈性肺高血圧症(PAH)、(2) 慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)、(3) 肺静脈閉塞症(PVOD)/肺毛細血管腫症(PCH)、(4) リンパ脈管筋腫症(LAM)、(5) 肺胞低換気症候群(AHS)、(6) α1-アンチトリプシン欠乏症(AATD)、遺伝的素因が発症に関与するCOPD、(7) 遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)(HHT)、(8) 成人型ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)、(9) Birt-Hogg-Dube(バード・ホッグ・デュベ:BHD)症候群、(10) 肺移植。これら対象疾患および肺移植に関して、診療ガイドラインWGを作成して、疾患概要/重症度分類/新臨床調査個人票(PAH、CTEPH、PVOD、LAM)/難病情報センター情報の更新(PAH、CTEPH、PVOD、LAM)/難病指定医テキストの作成(PAH、CTEPH、PVOD、LAM)を行った。
結果と考察
 平成26年度、対象呼吸器疾患に関する疾患概要/診断基準/重症度基準を策定して、平成27年度以降の継続研究の基盤をつくった。研究結果概要の一部を示す。1) PAH:診断には右心カテーテル検査による肺動脈性の肺高血圧の診断とともに、臨床分類における鑑別診断、および他の肺高血圧を来す疾患の除外診断が必要である。2) CTEPH:器質化した血栓により肺動脈が閉塞し、肺血流分布ならびに肺循環動態の異常が6か月以上にわたって固定している病態である。3) PVOD/PCH:病理組織学的には肺内の静脈が主な病変部位であり、肺静脈の内膜肥厚や線維化等による閉塞を認める。4) LAM:LAMはTSC-LAMと孤発性LAMに分類されるが、両者ともTSCの原因遺伝子として同定されたTSC 遺伝子の異常が発症に関与している。5) AHS:呼吸器・胸郭・神経・筋肉系に異常がなく、肺機能検査上明らかな異常が認められないにもかかわらず、日中に肺胞低換気(高度の高二酸化炭素血症と低酸素血症)を呈する病態である。 肺胞低換気は覚醒中よりも睡眠中に悪化する。6) AATD:通常のCOPDとは異なる疾病であり、喫煙の影響をその発症要因としては、ほぼ考慮から外せる疾病である。7) HHT:HHTに合併する肺動静脈奇形:責任遺伝子としては、ENG(Endoglin)、ACVRL1(ALK1)、SMAD4の3つが確認されている。8) 成人型LCH:ランゲルハンス細胞のポリクローナルな増殖と臓器浸潤により特徴付けられる全身性の難治性稀少疾患である。9) BHD症候群:気胸・肺嚢胞は、皮膚疾患や腎疾患より早く発症し20歳代から医療機関を受診するため、BHD症候群は呼吸器領域で診断される頻度が高い。10) 肺移植:肺動脈性肺高血圧症患者の肺移植適用に関してClinical Question and Answer案を策定した。 
 呼吸不全調査研究班は、1) 肺・気道系疾患(遺伝的素因が発症に関与するCOPD、alpha-1アンチトリプシン欠乏症)、2) 嚢胞性肺疾患(リンパ脈管筋腫症、成人型ランゲルハンス組織球症、Birt-Hogg-Dube症候群)、3) 肺血管系疾患(肺動脈性肺高血圧症、慢性血栓塞栓性肺高血圧症、肺静脈閉塞症、肺動静脈瘻を有するオスラー病)を対象疾患としている。研究代表者が統括し、日本呼吸器学会学術部会が支える体制を組んでいる。診療ガイドラインの継続的作成のため、患者会との連携、肺移植の適用基準の作成を含めるため日本呼吸器外科学会、日本循環器学会との連携も常にとっている。最終目標としては、医療政策に活用しうる知見の収集・活用を通して、難治性呼吸器疾患患者QOL向上を目指す。
結論
 平成26年度、呼吸器系難治性疾患の横断的・縦断的研究を通して、1) 患者生命予後とQOLの向上の実現、2) 厚生労働省の医療政策に活用しうる知見の収集を目的として、「重症度分類を含めた診断基準の作成」、一部「診療ガイドラインの作成」を実施した。これらの結果はさらに平成27年度に引き継ぎ、「医療政策に活用しうる知見の収集・活用」を通して、「難治性呼吸器疾患患者QOL向上」を目指す。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201415111Z