文献情報
文献番号
201411041A
報告書区分
総括
研究課題名
固形がんに対する抗CCR4抗体療法第Ia/Ib相医師主導治験
研究課題名(英字)
-
課題番号
H24-実用化(がん)-一般-006
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
上田 龍三(愛知医科大学 医学部腫瘍免疫寄附講座)
研究分担者(所属機関)
- 中山 睿一(川崎医療福祉大学 医療福祉学部)
- 土井 俊彦(国立がん研究センター 早期・探索臨床研究センター先端医療科)
- 飯田 真介(名古屋市立大学医学部 血液・腫瘍内科)
- 和田 尚(大阪大学大学院医学系研究科・臨床腫瘍免疫学共同研究講座)
- 岡 三喜男(川崎医科大学附属病院 呼吸器内科)
- 垣見 和宏(東京大学免疫細胞治療学)
- 舩越 建(慶応大学附属病院 皮膚科)
- 石田 高司(名古屋市立大学附属病院 血液・腫瘍内科)
- 西川 博嘉(大阪大学 免疫学フロンティア研究センター)
- 鵜殿 平一郎(岡山大学 医歯薬総合研究科)
- 佐藤 永一(東京医科大学 医学総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
199,440,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
腫瘍内における免疫抑制環境は、腫瘍の進行、予後と密接な関係にあることが明らかとなっている。近年、免疫チェックポイント抑制分子である、CTLA-4, PD-1, PD-L1に対する、抗体医薬による治験が実施され、めざましい治療効果を上げていることは周知のとおりであり、癌治療における免疫抑制環境制御の重要性が実証されている。免疫チェックポイント分子と並んで、制御性T細胞(Treg)も強力な免疫抑制を担う主要な免疫細胞であることが明らかになっており、Tregの制御が、がん治療に有効と考えられている。我々は、CCR4の発現が、エフェクターTregに対して選択的に認められることをCD45RA/FoxP3/CCR4 の3重染色によるフローサイトメトリーにより明らかとし、また、抗CCR4モノクローナル抗体によるTreg除去が抗腫瘍免疫活性を亢進させることを確認している。そこで、Treg除去による、安全性の評価、及び、腫瘍免疫亢進と、がん治療効果について明らかにすることを目的として本事業研究課題である「固形がんに対する抗CCR4 抗体療法第Ia/Ib相医師主導治験」を計画、実施した。
研究方法
Ia相治験で0.1 mg/kg - 1 mg/kgでの忍容性が確認されたことを受け、0.1mg/kg(20症例)と1.0mg/kg(20症例)の2群でランダム化試験を実施した。Mogamulizumabを毎週1回計8回投与し、安全性と、末梢血中Treg除去効果を主要評価項目とし、副次目的として、有効性を評価した。第Ia/Ib相ともに有効性はRECIST及びRECIST変法にて評価するとともに、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)を観察した。腫瘍抗原特異的液性反応はELISA法にて評価した。また附随研究として細胞性免疫反応をELISPOT法、サイトカイン捕捉法、細胞内サイトカイン染色法で解析したほか、Tregの機能活性についても検討した。さらに、モニタリングマーカーの探索についても実施した。また、治験と並行して、分担研究者、研究協力者により、治療と免疫動態との関連について明らかにするための付随研究を実施した。
結果と考察
CCR4が、Tregの標的分子として有効であることが今回の治験により明らかとなった。モガムリズマブはTregを標的にできる世界で唯一の抗体医薬である。免疫治療が、第4のがん治療としての地位を築きつつある中、Tregを標的にできるモガムリズマブは、戦略的な活用が望まれる。最近、免疫チェックポイント分子に対するモノクロナル抗体同士の併用や、既存薬物の併用が劇的な効果を収めている。免疫チェックポイントによる免疫制御とTregによる免疫制御は機序が異なっており、今後、この両者の併用が世界中で期待されている。ニボルマブ(PD-1モノクロナル抗体)は、国内企業により開発された抗体医薬で、免疫チェックポイント制御によるがん治療薬として世界をリードしている。従って、世界に先駆け開発されたこれら国産抗体医薬(モガムリズマブ、ニボルマブ)の併用療法の開発を我が国として戦略的に位置付け、がん免疫療法を世界的にリードしていく布石にすることが重要と思われる。現在、第Ib相治験が終了した後、固形がんを対象に、モガムリズマブ、ニボルマブ二剤併用による、医師主導治験を計画中で、そのための基礎調査を開始している。
結論
1) Ib相治験登録、プロトコール治療をほぼ完了した。安全性と、Treg除去効果が確認された。
2) 治療効果は、限定的であったが、腫瘍特異的免疫応答の増強がみられた。PD-1抗体医薬や、腫瘍抗原ワクチン等との併用療法による、治療効果の向上が期待される。
3) 症例によっては、腫瘍内における、Tregの除去が不十分となる可能性が示唆された。投薬後の腫瘍内のTregの減少についての検討が重要と考えられた。
2) 治療効果は、限定的であったが、腫瘍特異的免疫応答の増強がみられた。PD-1抗体医薬や、腫瘍抗原ワクチン等との併用療法による、治療効果の向上が期待される。
3) 症例によっては、腫瘍内における、Tregの除去が不十分となる可能性が示唆された。投薬後の腫瘍内のTregの減少についての検討が重要と考えられた。
公開日・更新日
公開日
2015-09-09
更新日
-