人工血小板/H12(ADP)リポソーム:臨床研究への移行を目指した品質管理と薬物試験

文献情報

文献番号
201407017A
報告書区分
総括
研究課題名
人工血小板/H12(ADP)リポソーム:臨床研究への移行を目指した品質管理と薬物試験
課題番号
H24-創薬総合-一般-008
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
半田 誠(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 康夫(早稲田大学 理工学術院)
  • 武岡 真司(早稲田大学 理工学術院)
  • 木下   学(防衛医科大学校)
  • 丸山   徹(熊本大学 薬学部)
  • 鈴木 英紀(日本医科大学)
  • 鎌田 徹治(慶應義塾大学 医学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 創薬基盤推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
16,660,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
人工血小板/H12(ADP)リポソーム(LP)の臨床研究への移行を目標として、本試験物の製造・品質管理体制を確立し、薬物試験(薬理試験、薬物動態試験、毒物試験)について非臨床データの集積を行う.
研究方法
集積されたLPロットデータに基づき、新たに導入した製造工程のスケールアップ化に対応した製造工程及び品質管理の標準化に向けて、標準手順書(SOP)等を整備した.より重症化させた希釈性血小板減少症ウサギモデルを用いて肝臓損傷に伴う致死性の出血性ショックへの適応を赤血球輸血併用プロトコルで評価した.健常および希釈性血小板減少ラットを用いて、標識LPの体内動態、抗LP抗体の発現及び反復投与によるABC現象を検討した.表面プラズモン共鳴法によるin vitro性能評価系の確立に向けて、LPとの結合活性を有し、センサー表面に固相化できるαIIbβ3複合体の精製法を検討した.
結果と考察
試験物の標準仕様、品質管理及び製造工程管理に関するSOPとチェックリストが作成され、研究施設内でのGMP準拠製造・品質管理体制が確立された.止血能や貧血はあるレベルまで補正されたにもかかわらず、LPの救命効果は洗浄赤血球の併用で改善しなかった.希釈性血小板減少モデルでのLP(単回投与)の体内動態は健常動物と変わりなかった.しかし、健常動物と同様に、抗LP抗体(Ig M)が惹起され、ABC現象により追加投与のLPは速やかに血中から消失した.組替え遺伝子導入動物細胞の培養上清より可溶型活性化複合体タンパクを、アフィニティーカラムを用いて精製することができた.
結論
臨床研究への移行を目標として、ラボスケールにて、品質保証、製造体制の確立へのステップを順調に踏み、H12(ADP)リポソームの人工血小板として次なる開発ステップに向けた基礎資料に資するデータが集積された.

公開日・更新日

公開日
2015-05-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201407017B
報告書区分
総合
研究課題名
人工血小板/H12(ADP)リポソーム:臨床研究への移行を目指した品質管理と薬物試験
課題番号
H24-創薬総合-一般-008
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
半田 誠(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 池田康夫(早稲田大学理工学術院)
  • 武岡 真司(早稲田大学理工学術院)
  • 木下   学(防衛医科大学校)
  • 丸山   徹(熊本大学薬学部)
  • 鈴木 英紀(日本医科大学)
  • 鎌田 徹治(慶應義塾大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 創薬基盤推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
人工血小板/H12(ADP)リポソーム(LP)の臨床研究への移行を目指して、本試験物の施設内製造・品質管理体制を確立し、薬物試験(薬理試験、薬物動態試験等)について非臨床データの集積を行い、その適格性を評価する.
研究方法
LPの作製は押出(エクストルージョン)造粒法 (孔径2 μm)を用い、製造物の諸物性(粒子経、ゼータ電位、脂質膜組成比、ADP内包量、H12脂質担持量)をロット毎に測定した.LPの長期保存安定性について、粒子径、ゼータ電位、ADP漏出率を各温度条件下(4℃、25℃、40℃)で、最長約一年間評価した.LPの人工血小板としての機能評価するために、想定する適応症である大量出血/輸血に合併する希釈性血小板減少症のウサギモデルを使用した薬効試験を行った.薬物動態試験及びABC(Accelerated Blood Clearance )現象は、アイソトープ標識LPを使用し、健常及び血小板減少症モデル動物で評価した.安全薬理試験は二種類のDICラットモデルを使用して、血栓症の誘発・促進作用を検討した.LPのin vitro機能評価法として、活性化血小板(αIIbβ3インテグリン)との結合を、細胞系及び無細胞系の環境下で、LigandTracer及び表面プラズモン共鳴法(Biacore 2000)を用いて検討した
結果と考察
試験物の暫定仕様に基づき、集積されたロットデータを検証して、製造工程・品質管理に係る標準手順書やチェックリストを整備した.4℃の保存条件下で少なくとも一年間は、試験物として長期保存が可能であった.LPの想定適応症である大量出血・輸血に伴う希釈性血小板減少症のウサギモデルで、致死的出血性ショックに対して、実臨床に即した投与プロトコルで血小板輸血に匹敵する効果(出血量の抑制や救命)を認めた.超微形態観察で肝臓損傷部位でのLPの集積が確認された.健常及びモデルラットを用いてRI標識LPの体内動態及び抗体によるABC現象の発現を検討し、希釈性血小板減少モデルでのLP(単回投与)の体内動態は健常動物と変わりなかったが、抗LP抗体(IgM)が惹起され、ABC現象により追加投与のLPは速やかに血中から消失した.2種類のDICラットモデルで、LP投与による血栓及び臓器障害マーカに変動なく、血栓の促進傾向は認められなかった.表面プラズモン共鳴法によるLPの機能評価系に用いる可溶型活性型αIIbβ3蛋白を培養動物細胞上清より精製した.
結論
臨床研究への移行を目標として、ラボスケールにて、品質保証、製造体制の確立へのステップを順調に踏み、長期保存安定性などの、LPの人工血小板としての適格性を示唆するデータが集積できた.薬理試験により、血栓の誘発や増強の危惧なく、外傷や手術に伴う大量出血/危機的出血を適応症とすることを強く支持する成果が示された.薬物動態試験では、LPの安全性(組織蓄積性がなく)や良好な血中滞留性を示すデータが集積され、想定される用法・用量が単回投与であることから、リポソーム製剤に共通して備わる欠点であるABC現象は、考慮に入れる必要はないことが示唆された.今回の3年間の検討により、当該製造物の開発研究を次のステップに引き上げるのに十分な成果が得られたと考える.しかしながら、更なる開発ステップへの移行の前提となるのがGMP準拠体制での試験物の製造であり、我々にように大学等の研究施設での検討は今回で限界に達した.当該試験物は災害や有事に緊急避難的に使用することを想定しているため、営利を目的とする企業を巻き込んだ産業化は大変困難である.抗がん剤による造血障害を対象とした場合は、短い血中半減期(8時間程度)やABC現象のため、適応は困難である.人工血液の開発研究の推進は血液法の基本方針に盛り込まれているため、国家的なリスク管理の観点から、行政への働きかけは妥当性がある.今後も、オールジャッパンでの医薬品創出を目的としたプロジェクトのなかで、防衛省関連事業やAMED等へ、当該人工血小板創薬に対して大型の研究開発費を盛込むような働きかけを行ってゆく.

公開日・更新日

公開日
2015-05-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201407017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
試薬レベルでのH12(ADP)リポソームの製造体制が確立され、災害や有事で想定される外傷等による大量出血に起因した希釈性血小板減少症に対して、H12(ADP)リポソームは、緊急時に利用不可能であるヒト血小板に代わって、安全かつ有効な人工血液になる可能性を示唆する動物データが得られた.
臨床的観点からの成果
特になし
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
血液法(安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律)の基本的方針に示されている人工血液の開発推進の観点から、人工血小板としてH12(ADP)リポソームの開発推進を支持するデータが示された.
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
23件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hagisawa K, Nishikawa K, Yanagawa R, et al.
Treatment with fibrinogenγ-chain peptide-coated, ADP-encapsulated liposomes as an infusible haemostatic agent against active liver bleeding in acute thrombocytopenic rabbits
Transfusion , 55 (2) , 314-325  (2015)
原著論文2
Taguchi K, Ujihira H, Watanabe H, et al.
Pharmacokinetic study of adenosine diphosphate-encapsulated liposomes coated with fibrinogen γ-chain dodecapeptide as a synthetic platelet substitute in an anticancer drug-induced thrombocytopenia rat model
J Pharm Sci , 102 (10) , 2852-2859  (2013)
原著論文3
Taguchi K, Ujihira H, Ogaki S, et al.
Pharmacokinetic study of the structural components of adenosine diphosphate-encapsulated liposomes coated with fibrinogen γ-chain dodecapeptide as a synthetic platelet substitute
Drug Metab Dispos , 41 (8) , 1584-1591  (2013)
原著論文4
Kamata T, Handa M, Takakuwa S, et al.
Epitope mapping for monoclonal antibody reveals the activation mechanism for αVβ3 integrin
Plos One , 8 (6) , e66096-  (2013)
原著論文5
Nishikawa K, Hagisawa K, Kinoshita M, et al.
Fibrinogen γ-chain peptide-coated, adenosine diphosphate-encapsulated liposomes rescue thrombocytopenic rabbits from non-compressible liver hemorrhage
J Thromb Haemost , 10 (10) , 2137-2148  (2012)

公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201407017Z