関節治療を加速する細胞シートによる再生医療の実現

文献情報

文献番号
201406003A
報告書区分
総括
研究課題名
関節治療を加速する細胞シートによる再生医療の実現
課題番号
H24-再生-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 正人(東海大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 阿久津 英憲(国立成育医療研究センター研究所 再生医療センター 生殖医療研究部)
  • 長嶋 比呂志(明治大学 農学部)
  • 加藤 玲子(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部)
  • 小林 広幸(東海大学 医学部)
  • 三上 礼子(東海大学 医学部)
  • 三谷 玄弥(東海大学 医学部)
  • 沓名 寿治(東海大学 医学部)
  • 海老原 吾郎(東海大学 医学部)
  • 長井 敏洋(東海大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
38,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 細胞シートによる修復・再生効果を動物実験で確認し、細胞シート工学という日本オリジナルな技術により、変形性関節症の治療にまで踏み込んだ再生医療の実現を目指している。本研究事業の柱は「自己軟骨細胞シートによる先進医療の実現」と、「同種軟骨細胞シートによる再生医療を目指したヒト幹細胞臨床研究の実現」である。自己細胞シートによるヒト幹細胞臨床研究で安全性評価を速やかに行い、先進医療での実施を目指す。一方、治療として普及させるためには免疫応答の低い軟骨組織では大量生産によるレディメイドの同種細胞シートでの実施が不可欠であると考える。企業治験の可能性を検討しながら、First in humanの臨床研究で安全性評価を行い、所定の症例数を経て治療効果を確認していく。
研究方法
1.自己軟骨細胞シートによる先進医療の実現
 1)自己細胞シートによる臨床研究「細胞シートによる関節治療を目指した臨床研究」の実施

2.同種軟骨細胞シートによる再生医療を目指したヒト幹細胞臨床研究の実現
 1)複数の同種細胞ソースの検討と細胞ソースの選択とバンキングシステムの構築
  ①多指症軟骨由来細胞シートの作製
  ②多指症軟骨細胞シートのフローサイトメーターによる解析
 2)細胞シートの保存技術開発とパッケージ技術開発
 3)軟骨細胞シートの同種免疫反応に関する研究
結果と考察
1-1):総症例数として11症例エントリーし、8症例に軟骨細胞シート移植を施行した。移植術後の経過はいずれも良好である。全8症例が移植後1年を経過し、平成26年12月に臨床研究を終了した。臨床研究中に重篤な有害事象は生じず、軟骨細胞シート移植による安全で有効な関節軟骨の再生治療による効果が得られている。
2:同種細胞を用いた「同種細胞シートによる関節治療を目指した臨床研究」は、厚生労働大臣通知(厚生労働省発医政0806第9号平成26年8月6日)によりヒト幹細胞臨床研究の実施が認められた。現在、移植に適した細胞の選定作業中である。
2-1)① :多指症手術で廃棄される軟骨組織から細胞シートの作製及びその特性を解析した。凍結細胞ストックを用いて細胞シートを作製後、組織切片を作製し、構造および厚みを解析した。その結果、重層化した細胞シートの作製が可能であった。
2-1)② :多指症由来軟骨細胞シートの特性を解析し、自己膝軟骨細胞シート治療で移植された細胞シート(成人膝軟骨細胞シート)のデータと比較した。その結果、多指症由来軟骨細胞シートは、成人膝軟骨細胞シートと同等の細胞数から構成され、生細胞率は95%以上を示し、成人膝軟骨細胞シートと同様に、CD31,CD45陰性、CD81,CD90陽性を示した。
2-2):ウサギ軟骨細胞シートガラス化凍結保存法の改良を行った。今年度は、非積層化細胞シートへの応用拡大、長期保存を目的とするパッケージング素材と保存法の検討、市販予定ガラス化保存液の有効性確認、長期保存後の細胞シートの評価を行った。その結果、非積層化シートに有効であり、特に非積層化細胞シートでは前処理時間の大幅な短縮が可能である、アルミフィルムでパッケージングされたガラス化細胞シートは、液体窒素ガス気相中 (約-150℃)、液体窒素中 (-196℃) いずれの保存状態にも耐え得る、市販ガラス化液の使用によって、自家作製液と同等の成績が得られる、細胞シートの長期安定保存が可能であること、などが示された。
2-3):多指症軟骨組織由来細胞 が同種T細胞に与える影響をin vitroで検討した。接触培養条件下において、多指症軟骨由来細胞の活性化T細胞増殖抑制効果には、PGE2やTGF-β1といった液性因子よりも細胞間接触による抑制効果が強いことが示唆された。また、活性化条件下にあるCD4+TCsは軟骨細胞と共培養することで、免疫寛容に関与する制御性T細胞が優位になっていることが示唆された。
結論
 主要課題である「自己軟骨細胞シートによる先進医療の実現」並びに「同種軟骨細胞シートによる再生医療を目指したヒト幹細胞臨床研究の実現」は何れも、当初の予想以上の成果が得られた。平成23年10月3日に承認された自己細胞を用いたヒト幹細胞臨床研究は、平成26年12月に臨床研究を終了し、臨床研究中の重篤な有害事象は生じず、軟骨細胞シート移植による安全で有効な関節軟骨再生効果が得られていることである。また、同種細胞を用いたヒト幹細胞臨床研究は、平成26年8月6日に実施が認められ、臨床研究が開始された。現在、移植に適した細胞の選定作業中である。
 国民にわかりやすく研究内容を発信するためにHPを作製し、下記URLで情報を公開している。http://cellsheet.med.u-tokai.ac.jp/index.htmlで情報を公開している。

公開日・更新日

公開日
2015-05-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201406003Z