食品添加物の規格試験法の向上及び摂取量推定等に関する研究

文献情報

文献番号
201327025A
報告書区分
総括
研究課題名
食品添加物の規格試験法の向上及び摂取量推定等に関する研究
課題番号
H25-食品-一般-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 恭子(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
  • 北村 陽二(金沢大学 学際科学実験センター)
  • 山田 雅巳(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
  • 久保田 浩樹(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
  • 大槻 崇(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
  • 建部 千絵(佐々木 千絵)(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品添加物の安全確保には、その品質と適正な使用を欠かすことができない。食品添加物の品質の担保には、成分規格、試験法の向上及び摂取量等使用実態の把握が重要であることから、本研究では、成分規格及び試験法に関する研究、日本独自の香料化合物について遺伝毒性評価予測システムの研究、摂取量の推定、食品添加物の食品中における消長と副生成物に関する研究を行った。
研究方法
1)香料化合物規格の国際整合化に関わる調査研究:18項目の類又は誘導体として指定されている香料化合物の自主規格(1,453品目)とJECFA規格を比較し、さらに、国際的に使用量の多い品目の流通実態調査及びJECFA規格との比較を行った。2)食品添加物の規格試験法向上のための赤外スペクトルに関する調査研究:ポリビニルピロリドン(PVP)類及びポリソルベート類(PB)について、KBr法、ペースト法、液膜法、薄膜法及びATR法によりIRを測定した。3)定量NMR法(qNMR)による定量用標準物質の純度分析法の確立:qNMRを用い、グルタミルバリルグリシンの定量を行った。4)ICP-MS等を用いた食品添加物中の鉛分析法に関する研究:固相カートリッジによる鉛抽出法の検討を行った。5)日本独自の香料化合物についての遺伝毒性評価予測システムの研究:構造活性相関手法(SAR)モデルによる予測と簡易Ames試験を実施した126化合物の結果について、SARモデルの予測性、予測結果の組合せの検討などを実施した。6)天然香料の使用量調査に関わる調査研究:使用量調査の方法についての調査研究として、調査対象品目を絞り、予備調査を行った。 7)食品添加物の生産量統計調査を基にした摂取量の推定に関わる研究:食品添加物製造(輸入)業者を対象に指定添加物の及び既存添加物の使用量に関する調査を行うとともに、輸入食品中の発色剤3品目及び酸化防止剤2品目の含有量を推定した。8)食品添加物の食品中における消長と副生成物に関する研究:過酸化ベンゾイル(BPO)を添加して焼成したパンをモデル試料として、ダイナミックヘッドスペース-ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて副生成物を分析した。
結果と考察
1)979品目の自主規格とJECFA規格に違いがみられたが、JECFA規格の中には、設定の根拠に問題がある場合があることがわかった。2)PVP及びPBについては、従来法とATR法ではスペクトルが異なっており、ペースト法でも吸湿の生じるような取り扱いの難しい化合物には、ATR法による測定が最も適していると考えられた。3)他のシグナルに比べ高い結果が得られたシグナルが存在したが、これは、シグナルが部分的に重り、それぞれ多重に分裂し、積分範囲が通常よりも広なったためと考えられた。4)1価の陽イオンを含む無機塩類については、固相カートリッジ(Inert Sep ME-1)による抽出が有効であった。5)126の香料について、構造活性相関の予測と簡易Ames試験の結果を精査したところ、72物質は試験結果どおりに予測していたが、12物質はFATの陽性結果を陰性と予測していた。6)天然香料の使用量は、12品目を調査対象とし、18社に対する限定的な調査であったにもかかわらず約1,600tと、我が国における香料化合物の総使用量(平成23年度、1,249 t)を上回っていた。7)指定添加物の摂取量推定では、国際汎用添加物の加工デンプンが摂取量の多い品目に加わり、既存添加物では、出荷量の多い品目の多くは製造用剤であった。8)BPOを添加して焼成したパンからは微量のベンゼンが検出されたが、推計されたパン及び菓子パンからのベンゼンの経口暴露量は、20歳以上における一人当たりの耐容一日摂取量を大きく下回ることが確かめられた。
結論
香料化合物規格の国際整合化のためには、実測値の調査に加え、JECFA規格に関する検討も必要と考えられた。IR法については、ATR法は試料調製が不要のため、本来のスペクトルが得られる一方、物性の違いに応じて、適切な測定法を確立する必要があることが明らかとなった。qNMRについては、定量用標準物質の規格試験法への本法の適用に向けた基礎的データが得られた。鉛分析法に関しては、1価の塩を含む無機塩類には、Inert Sep ME-1を用いた鉛の抽出が有用と考えられた。日本独自の香料化合物の適切な安全性評価を目指す、構造活性相関手法(SAR)を基にした遺伝毒性評価予測システムには、カスタマイズが有効と思われた。これらの研究は、食品添加物の規格及び試験法の向上に寄与するものであり、天然香料の使用量調査及び生産量統計調査を基にした摂取量推定に関わる研究及びBPO添加小麦粉による副生成物の解明では食品添加物の適正な使用に関わる知見が得られ、食品の安全の確保に資すると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-05-12
更新日
-

収支報告書

文献番号
201327025Z