HAMの革新的な治療法となる抗CCR4抗体療法の実用化に向けた開発

文献情報

文献番号
201324139A
報告書区分
総括
研究課題名
HAMの革新的な治療法となる抗CCR4抗体療法の実用化に向けた開発
課題番号
H25-難治等(難)-一般-023
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 難病治験研究センター )
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川 泰弘(聖マリアンナ医科大学 医学部神経内科)
  • 松本 直樹(聖マリアンナ医科大学 医学部薬理学)
  • 菊地 誠志(独立行政法人 国立病院機構 北海道医療センター)
  • 藤原 一男(東北大学大学院 医学系研究科多発性硬化症治療学寄附講座)
  • 中川 正法(京都府立医科大学大学院 医療フロンティア展開学)
  • 竹之内 徳博(関西医科大学 微生物学講座)
  • 永井 将弘(愛媛大学大学院 医学系研究科病態治療内科学)
  • 吉良 潤一(九州大学大学院 医学研究院神経内科学分野)
  • 中村 龍文(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 感染免疫学講座)
  • 高嶋 博(鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科神経病学講座)
  • 渡嘉敷 崇(琉球大学大学院 医学研究科 循環器・腎臓・神経内科学)
  • 高田 礼子(聖マリアンナ医科大学 予防医学教室)
  • 中島 孝(独立行政法人 国立病院機構新潟病院)
  • 山海 嘉之(筑波大学大学院 システム情報工学研究科)
  • 齊藤 峰輝(川崎医科大学 医学部微生物学教室)
  • 外丸 詩野(北海道大学大学院医学研究科  病理学講座)
  • 植田 幸嗣(独立行政法人理化学研究所  統合生命医科学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
101,054,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HTLV-1関連脊髄症(HAM)は、進行性の脊髄障害を特徴とする疾病で、有効な治療法がなく患者の生活の質は大きく損なわれており、アンメットニーズの高い、極めて深刻な難治性希少疾患である。本研究は、HAM患者の生活の質の向上に必須である、画期的な新規医薬品の実用化を実現するために、医師主導治験を実施する。本研究班では、平成24年度までに、国内企業が開発したヒト化抗CCR4抗体(KW-0761)の、HAMにおける抗感染細胞活性と抗炎症活性を証明し(特許出願)、治験プロトコールの作成、PMDAの対面助言を完了。また、GCP準拠の治験実施体制を整備し、HAMに対するKW-0761の医師主導治験を実施できるレベルを達成している。本研究ではその成果を踏まえ、HAMに対するKW-0761の医師主導治験を実施する。また、治験の症例集積性を確保するために構築した、HAM患者登録システム(HAMねっと)を充実させ、治験の円滑な運営を図る。
研究方法
試験デザインは、HAMが希少難病であることを踏まえ、出来るだけ早期に新薬承認がなされるよう、第 I/IIa相試験と工夫した。第 I相では、最初に静脈内投与し、その後は4週毎に12週間観察、抗KW-0761阻害抗体が検出されなければ第IIa相に移行する。第IIa相では、4週毎に観察し、末梢血中のウイルス量が検出された場合、8~12週間隔で再投与となり、平成27年10月まで観察する。対象は、既存治療で効果不十分なステロイド維持療法中のHAM患者。主要評価項目は安全性で、用量制限毒性(DLT)の発現状況に基づき、最大耐用量(MTD)を明らかにし、同時に薬物動態について検討する。また副次的に、抗感染細胞効果と10m歩行時間の非増悪期間(臨床効果)を検討して有効性を探索する。KW-0761の投与量は、5段階の投与量レベルからなり、低いレベルから段階的に高いレベルへと移行し、投与量レベル移行の判断は効果安全性評価委員会で諮られる。なお、モニタリング、データマネジメント、安全性情報管理、治験薬管理、生物統計解析(北里大学臨床研究機構へ委託)、CRCの確保、監査、効果安全性評価委員会など、GCPに準拠した治験実施体制が整備されている。実施施設は、聖マリアンナ医科大学付属病院で、治験審査委員会の承認を得て、治験届を提出した後に実施する。また治験薬は企業より無償提供される。また本治験では、付随研究として、髄液中のウイルス定量、各種炎症マーカー、血液中の制御性T細胞率、抗HTLV-1免疫応答、ATL前駆細胞率、次世代シークエンサーを用いた感染細胞のクローナリティなどを解析し、KW-0761の有効性や宿主免疫応答への影響、ATL発症予防効果などについても詳細に検討する。また、HAMねっとの質の向上と、それを利用した前向き疫学調査を実施する。
結果と考察
 本事業は平成25年9月に採択され、同年10月10日に治験審査委員会で承認、11月12日に治験届を提出した。PMDAからの照会事項もなく、11月28日を治験開始日とした(UMIN 000012655)。12月5日から文書同意取得のもと各種検査を開始し、平成26年2月4日に1例目、3月4日に2例目、3例目への投与を実施した。これら3例に用量制限毒性は認められず、投与レベル1の安全性が効果安全性評価委員会で確認され、平成26年度4月から投与レベル2へ移行することができた。予定被験者(18例)のリクルートも、本研究班が構築した患者登録システム(HAMねっと:既登録359例)を活用して順調で、投与基準を満たす患者の待機リストは既に20例を超えている。本治験でproof of conceptが得られれば、オーファンドラッグ認定を前提とした検証的試験を実施し、企業が薬事申請する予定である。
 また、「HAMねっと」に関する満足度調査を実施して患者のニーズを把握、その内容に応じた情報誌を作成して治験等に関する最新情報を登録患者へ配信した。さらに、「HAMねっと」を活用した前向き疫学調査を実施し、HAMは発症早期の高い疾患活動性が重要な予後不良因子であること、しかしながら診断までに長期間を有していること、また、1年間で臨床的に有意に悪化していること、ステロイド内服療法の継続が有意に悪化を抑制すること、を明らかにし、HAM患者の長期予後改善には、早期診断・早期治療の実現に向けた全国的な啓蒙・対策の実施と、ステロイド薬の保険承認に向けた治験の実施が重要であることを示した。
結論
本研究は、これまで有効な治療法がなかったHAMに対する日本発の革新的な医薬品を実用化し、さらにHAMの最適な治療法の確立に結びつくエビデンスの創出につながることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-03-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201324139Z