本邦における造血細胞移植一元化登録研究システムの確立

文献情報

文献番号
201322013A
報告書区分
総括
研究課題名
本邦における造血細胞移植一元化登録研究システムの確立
課題番号
H23-免疫-一般-013
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
熱田 由子(名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 長村登紀子(井上登紀子)(東京大学医科学研究所・附属病院)
  • 坂巻 壽(都立駒込病院)
  • 田渕 健(都立駒込病院)
  • 森島泰雄(愛知県がんセンター研究所)
  • 神田善伸(自治医科大学附属さいたま医療センター)
  • 宮村耕一(名古屋第一赤十字病院)
  • 村田 誠(名古屋大学 大学院医学系研究科)
  • 谷口修一(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,193,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、移植医療の登録研究方法論を技術的に分析し、登録研究の効率と質を上げ、本邦の造血細胞移植一元化登録(TRUMP登録)を研究登録データベースとして発展させることがその目的である。本研究により本邦の造血細胞移植臨床研究が発展し、欧米亜の造血細胞移植グループとの連携した国際共同研究の活性化も期待できる。
研究方法
・研究データベース構築と解析(ワーキンググループでの研究)
国内のテーマごと研究グループ(ワーキンググループ)を組織し、研究活動の活性化を図ると同時に、現在の調査項目のいわゆる「基本項目」から、研究データベースへ発展させる。重要項目を中心として解析データセットの質の向上に関する研究を実施する。
・長期フォローアップシステムとリレーショナルデータベースシステムの確立(第二世代TRUMPの開発)
疾患治療グループとのあるいは欧米亜の国際造血細胞移植グループとの共同研究、および移植患者の長期間にわたる追跡に対応できる柔軟な情報収集システムを開発する。
・データ管理・統計解析の効率化の研究
データ管理・統計解析の効率化は研究の進行を早め、質を向上し、生産性に大きな影響を与える。本研究班で開発した統計解析に適したデータ構造書、統計解析手順書、および解析スクリプトは本邦における、あるいは国際共同研究における登録研究の効率と質を高める.登録研究の統計解析に関するセミナーを開催し、教育活動も同時に実施する。
・移植後長期生存者のquality of life (QOL)に関する研究
造血幹細胞移植後の移植後長期生存患者におけるQOLを小児、成人それぞれで横断的に調査する研究を実施する。
・海外登録機関との連携と国際共同研究への発展と活性化
欧米・亜諸国との共同研究が活性化する体制を構築する経験は他分野にも提供できる貴重なノウハウおよび経験となる。
結果と考察
・研究データベースの構築と解析(ワーキンググループ研究の活性化)に関して
2013年12月末時点で23のワーキンググループにて計178件の研究が遂行している。これらの研究からこれらの研究から計143件の学会発表がなされ、26研究が論文化された。また、研究のための解析データセット内のHLAデータ、細胞数データなどの重要なデータの質の向上が実現した。
・長期フォローアップシステムとリレーショナルデータベースシステムの確立(第二世代
TRUMPの開発)
Webを基盤としたデータベースとして構築するが、インターネットにつながったコンピューターで患者臨床情報を管理することを許可されていない施設でも運用な可能なシステムとしての、TRUMP2の開発を実施し、2013年度は主に作動確認に力を入れた上で試験運用を開始した。
・データ管理・統計解析の効率化研究
造血細胞移植の生存解析で用いられる患者基本変数、疾患変数、アウトカム変数の構造書、および構造書に基づいた公開解析スクリプトの更新を行い、および統計ソフトStataを用いた登録研究のセミナーを基礎編、応用編、それぞれ計2回実施した。2012年度に開始した個別の統計相談も実施した。
・移植後長期生存者のQOLに関する研究
造血幹細胞移植後の移植後長期生存患者におけるQOLを小児、成人それぞれで横断的に調査する研究計画書を作成し、2013年1月から研究開始した。2014年2月末時点で、小児研究、成人研究それぞれ264症例、953症例と良好な登録集積が得られている。
・国際共同研究への発展と活性化
北米を中心とする登録機関であるCIBMTR, 欧州を中心とする登録機関であるEBMT, アジア太平洋を中心とするAPBMTとの連携、共同研究を可能とし、活性化する体制の構築に関する研究を行った。CIBMTRのInternational Studies Working Committeeとの共同研究が3研究実施し、2013年度は2研究の学会発表を行い、うち1研究は論文化された。
結論
移植医療の登録研究方法論を技術的に分析することにより、登録研究の効率と質を統計解析の効率と質を含めて向上し、本邦の造血細胞移植一元化登録を研究登録データベースとして発展させつつあり、さらにこれを利用する研究組織の活性化および生産性の向上に貢献している。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-12
更新日
-

文献情報

文献番号
201322013B
報告書区分
総合
研究課題名
本邦における造血細胞移植一元化登録研究システムの確立
課題番号
H23-免疫-一般-013
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
熱田 由子(名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 長村登紀子(井上登紀子)(東京大学医科学研究所・附属病院)
  • 坂巻 壽(都立駒込病院)
  • 田渕 健(都立駒込病院)
  • 森島泰雄(愛知県がんセンター研究所)
  • 神田善伸(自治医科大学附属さいたま医療センター)
  • 宮村耕一(名古屋第一赤十字病院)
  • 村田 誠(名古屋大学医学部附属病院)
  • 谷口修一(国家公務員共済組合虎の門病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、移植医療の登録研究方法論を技術的に分析し、登録研究の効率と質を上げ、本邦の造血細胞移植一元化登録(TRUMP登録)を研究登録データベースとして発展させることがその目的である。本研究により本邦の造血細胞移植臨床研究が発展し、欧米亜の造血細胞移植グループとの連携した国際共同研究の活性化も期待できる。
研究方法
・研究データベース構築と解析(ワーキンググループでの研究)
国内のテーマごと研究グループ(ワーキンググループ)を組織し、研究活動の活性化を図ると同時に、現在の調査項目のいわゆる「基本項目」から、研究データベースへ発展させる。重要項目を中心として解析データセットの質の向上に関する研究を実施する。
・長期フォローアップシステムとリレーショナルデータベースシステムの確立(第二世代TRUMPの開発)
疾患治療グループとのあるいは欧米亜の国際造血細胞移植グループとの共同研究、および移植患者の長期間にわたる追跡に対応できる柔軟な情報収集システムを開発し、2013年度内に試験運用を開始する。
・データ管理・統計解析の効率化の研究
データ管理・統計解析の効率化は研究の進行を早め、質を向上し、生産性に大きな影響を与える。本研究班で開発した統計解析に適したデータ構造書、統計解析手順書、および解析スクリプトは本邦における、あるいは国際共同研究における登録研究の効率と質を高める.登録研究の統計解析に関するセミナーを開催し、教育活動も同時に実施する。
・移植後長期生存者のquality of life (QOL)に関する研究
造血幹細胞移植後の移植後長期生存患者におけるQOLを小児、成人それぞれで横断的に調査する研究を実施する。
・海外登録機関との連携と国際共同研究への発展と活性化
欧米・亜諸国との共同研究が活性化する体制を構築する経験は他分野にも提供できる貴重なノウハウおよび経験となる。
結果と考察
・研究データベースの構築と解析(ワーキンググループ研究の活性化)に関して
2013年12月末時点で23のワーキンググループにて計178件の研究が遂行している。これらの研究からこれらの研究から計143件の学会発表がなされ、26研究が論文化された。また、研究のための解析データセット内のHLAデータ、細胞数データなどの重要なデータの質の向上が実現した。
・長期フォローアップシステムとリレーショナルデータベースシステムの確立(第二世代
TRUMPの開発)
Webを基盤としたデータベースとして構築するが、インターネットにつながったコンピューターで患者臨床情報を管理することを許可されていない施設でも運用な可能なシステムとしての、TRUMP2の開発を実施し、予定期間内に試験運用を開始した。
・データ管理・統計解析の効率化研究
造血細胞移植の生存解析で用いられる患者基本変数、疾患変数、アウトカム変数の構造書、および構造書に基づいた解析スクリプトを2011年度末に公開し、2012-2013年度はスクリプトの更新および統計ソフトStataを用いた登録研究のセミナーを計3回実施した。セミナーアンケート結果を巻末に添付する。さらに、2013年2月より登録研究個別の統計解析相談を開始し、16名が参加した。
・移植後長期生存者のQOLに関する研究
造血幹細胞移植後の移植後長期生存患者におけるQOLを小児、成人それぞれで横断的に調査する研究計画書を作成し、2013年1月から研究開始した。2014年2月末時点で、小児研究、成人研究それぞれ264症例、953症例と良好な登録集積が得られている。
・国際共同研究への発展と活性化
北米を中心とする登録機関であるCIBMTR, 欧州を中心とする登録機関であるEBMT, アジア太平洋を中心とするAPBMTとの連携、共同研究を可能とし、活性化する体制の構築に関する研究を行った。CIBMTRのInternational Studies Working Committeeとの共同研究が3研究実施し、2研究は学会発表され、うち1研究は論文化された。
結論
移植医療の登録研究方法論を技術的に分析することにより、登録研究の効率と質を統計解析の効率と質を含めて向上し、本邦の造血細胞移植一元化登録を研究登録データベースとして発展させつつあり、さらにこれを利用する研究組織の活性化および生産性の向上に貢献している。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-02-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201322013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
造血細胞移植登録データベースの研究活用を活性化するシステムを構築し、同時に研究活用に不可欠なデータマニピュレーション・統計解析の質を向上しかつ効率化するプログラムを教育活動含め、適応したことにより、期間内に140件を超える登録研究が立案、実行され、研究期間内に25件を超える造血細胞移植登録データベースを活用した論文が公表され、国内外から反響があった。
臨床的観点からの成果
造血細胞移植登録データベースを活用した研究成果では、患者のドナー・幹細胞選択や移植前治療の選択に影響を与える重要な知見が得られた。これらの知見は臨床現場でのドナー・幹細胞選択や移植前治療における抗がん剤の選択などに影響を与える重要な知見として認識された。さらに、日本骨髄バンクや臍帯血バンクからの推奨選択の改訂の際の、また、日本造血細胞移植学会が定期的に刊行する移植治療のガイドライン策定や改訂における基礎資料となった。
ガイドライン等の開発
造血細胞移植登録データベースを活用した研究における基本項目の定義を定め、日本造血細胞移植学会内のホームページで公開した。
その他行政的観点からの成果
厚生科学審議会疾病策部会造血幹細胞移植委員会では、移植実施状況の把握と需要の推定に造血細胞移植登録データが用いられ、第40回の造血幹細胞移植委員会では、造血細胞移植登録データベースを用いた登録研究の重要性に関する議論も行われた。
その他のインパクト
造血細胞移植登録データベースを活用した研究成果は、日本造血細胞移植データセンターホームページで一般国民にも分かりやすい形での公開に向けて準備されている。臨床研究の分野においては、国際共同研究の実施が他国に比べ少ないとされているが、国際共同研究の枠組みを設定したうえで、研究期間内に3つの共同研究を北米と開始し、2件の学会発表と1件の論文公表を実施した。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
32件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
72件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kuwatsuka Y,Atsuta Y, Horowitz MM et al.
Graft-versus-host disease and survival after cord blood transplantation for acute leukemia: a comparison of the Japanese versus Caucasian population.
Biol Blood Marrow Transplant , 20 (5) , 662-667  (2014)
10.1016/j.bbmt.2014.01.020
原著論文2
Nakasone H, Kanda J,Atsuta Y et al.
A case-control study of bronchiolitis obliterans syndrome following allogeneic hematopoietic stem cell transplantation.
Transpl Int , 26 (6) , 631-639  (2013)
10.1111/tri.12093
原著論文3
Sawada A, Ohga S,Atsuta Y et al.
Feasibility of reduced-intensity conditioning followed by unrelated cord blood transplantation for primary hemophagocytic lymphohistiocytosis: a nationwide retrospective analysis in Japan.
Int J Hematol , 98 (2) , 223-230  (2013)
10.1007/s12185-013-1391-z
原著論文4
Atsuta Y, Kanda J, Takanashi M et al.
Different effects of HLA disparity on transplant outcomes after single-unit cord blood transplantation between pediatric and adult patients with leukemia.
Haematologica , 98 (5) , 814-822  (2013)
10.3324/haematol.2012.076042
原著論文5
Nishiwaki S, Atsuta Y, Tanaka J.
Allogeneic hematopoietic cell transplantation from alternative sources for adult Philadelphia chromosome-negative ALL: what should we choose when no HLA-matched related donor is available?
Bone Marrow Transplant , 48 (11) , 1369-1376  (2013)
10.1038/bmt.2013.20
原著論文6
Kanda Y, Kanda J, Atsuta Y et al.
A retrospective analysis of 3003 patients from the HLA Working Group of the Japan Society for Blood and Marrow Transplantation.
Br J Haematol , 161 (4) , 566-577  (2013)
10.1111/bjh.12279
原著論文7
Fuji S, Nakamura F, Atsuta Y et al.
Peripheral Blood as a Preferable Source of Stem Cells for Salvage Transplantation in Patients with Graft Failure after CBT: A Retrospective Analysis of the Registry Data of the Japanese Society for Hematopoietic Cell Transplantation.
Biol Blood Marrow Transplant , 18 (9) , 1407-1414  (2012)
10.1016/j.bbmt.2012.02.014.
原著論文8
Atsuta Y, Morishima Y, Suzuki R et al.
Comparison of unrelated cord blood transplantation and HLA mismatched unrelated bone marrow transplantation for adults with leukemia.
Biol Blood Marrow Transplant , 18 (5) , 780-787  (2012)
10.1016/j.bbmt.2011.10.008

公開日・更新日

公開日
2014-06-10
更新日
2018-05-31

収支報告書

文献番号
201322013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,750,000円
(2)補助金確定額
6,750,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,311,782円
人件費・謝金 1,040,558円
旅費 691,160円
その他 2,149,500円
間接経費 1,557,000円
合計 6,750,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-04-21
更新日
-