文献情報
文献番号
201320004A
報告書区分
総括
研究課題名
ウイルス性肝疾患患者の食事・運動療法とアウトカム評価に関する研究
課題番号
H23-肝炎-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
森脇 久隆(岐阜大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 西口修平(兵庫医科大学)
- 村上啓雄(岐阜大学 大学院医学系研究科)
- 加藤昌彦(椙山女学園大学 生活科学部)
- 福澤嘉孝(愛知医科大学 医学部医学教育センター)
- 水田敏彦(佐賀大学 医学部)
- 海堀昌樹(関西医科大学)
- 清水雅仁(岐阜大学 医学部附属病院)
- 白木 亮(岐阜大学 医学部附属病院)
- 永田知里(岐阜大学 大学院医学系研究科)
- 岡本康子(浜松医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
慢性ウイルス性肝疾患とくに肝硬変は高頻度に蛋白・エネルギー栄養障害を合併し、生命予後や生活の質(QOL)を悪化させる。このため最近の肝硬変診療ガイドラインは栄養障害に対する具体的な推奨を記載した。しかしこの根拠となったエビデンスの刊行は2005-7年、患者のリクルートは1995-2000年であり、その後栄養状態の大きな変化が示唆され、ガイドラインの再検討が求められている。本研究は現在の肝硬変患者が如何なる栄養状態にあるかを評価し、新たな推奨の根拠を明らかにすることを目的とした。
研究方法
共同研究:班員各施設において肝硬変患者の栄養評価を行った。欠損データのない300例を目標症例数とし、蛋白栄養は血清アルブミン、上腕筋周囲、エネルギー栄養は間接熱量測定、体格指数(BMI)、上腕周囲径、上腕三頭筋部皮下脂肪厚を指標とした。
結果と考察
共同研究:欠損データのない294症例を集積し、以下の結果を得た。
1.蛋白栄養状態は1995年の調査と比較し有意の変動が無い。
2.エネルギー栄養状態は蛋白エネルギー低栄養、エネルギー低栄養のいずれも1995年に比べ有意に減少した。逆に肥満肝硬変患者は1995年の18%から今回33%まで増加した。
3.以上から現在の肝硬変患者では蛋白エネルギー低栄養(30%)とともに肥満も同程度存在することが明らかとなった。従って蛋白に重点を置いた従来の栄養評価に加えエネルギー栄養評価の重要性が増した。またエネルギー栄養過剰を有する患者には栄養指導と共に安全な運動療法も必要と考えられる。そこで低栄養、エネルギー過剰の両者に個別対応可能な栄養指導ツールを開発した。運動指導については水田分担研究者の研究成果からチャイルド分類Aの患者で安全域を1回1エクササイズ、1日1回、週4日に設定し指導ツールを開発した。さらに6か月までの有効性が海堀分担研究者によって確認された。
個別研究:
西口分担研究者は共同研究結果について新たな患者コホート(755例)でバリデーション解析を行った。さらに栄養状態層別化閾値として、血清アルブミン濃度は3.5g/dlから3.9g/dlに、非蛋白呼吸商も0.85から0.88にシフトしている可能性を指摘した。
村上分担研究者は地域連携パスに盛り込む指導ツールの適格性を示した。
加藤分担研究者は慢性肝疾患患者のQOLが骨格筋栄養指標とくに握力と最も高い相関を示すことを見出した(P=0.005)。
福澤分担研究者は肝硬変患者に対する3か月の運動処方が運動耐用能を改善することを明らかにした。
水田分担研究者はC型慢性肝炎患者においてインターフェロン療法の効果を検討し、骨格筋脂肪化が治療効果不良因子であることを見出し、肝硬変患者に対する9-12か月の運動療法でインスリン抵抗性の有意の改善が得られることを証明した。
海堀分担研究者は慢性肝疾患患者に対する運動プログラムの実践的効果を実証した。有意の予後予測因子はATと分岐鎖アミノ酸/チロシン比であった。
清水分担研究者は肥満モデル動物の肝発癌感受性が高く、アディポサイトカイン不均衡、酸化ストレス亢進、レニン-アンギオテンシン系の活性化が介在することを明らかにした。
白木分担研究者は蛋白栄養障害の指標であるサルコペニアが男性肝硬変の81%、女性肝硬変の50%に認められること、ともに有意の予後因子であることを証明した。
永田分担研究者は大規模コホート(31,543名)における肝癌発生に関して飽和脂肪酸の高摂取群で1.8倍と高いハザード比を認めた。
岡本分担研究者は新たに肥満対策・指導を取り込んだ新規栄養指導ツールを完成させた。
考察:肝硬変患者の栄養状態は、かってのデータと比較し蛋白栄養に著変は無いがエネルギー栄養が充足、一部は過剰(肥満)にシフトした。特にATレベル、レニン-アンギオテンシン系の活性化、インスリン感受性の関与は肝硬変患者において発がんを含む病態進展を抑制する上で肥満対策が重要となってきたことを示すものである。
そこで新しい栄養指導ツールでは、BMIの自己評価からエネルギー過剰摂取対策に進むアームを用意した。さらに運動処方についても新たに指導ツールを開発した。なお運動処方については、安全性と3~6か月の中期効果を確認した。
1.蛋白栄養状態は1995年の調査と比較し有意の変動が無い。
2.エネルギー栄養状態は蛋白エネルギー低栄養、エネルギー低栄養のいずれも1995年に比べ有意に減少した。逆に肥満肝硬変患者は1995年の18%から今回33%まで増加した。
3.以上から現在の肝硬変患者では蛋白エネルギー低栄養(30%)とともに肥満も同程度存在することが明らかとなった。従って蛋白に重点を置いた従来の栄養評価に加えエネルギー栄養評価の重要性が増した。またエネルギー栄養過剰を有する患者には栄養指導と共に安全な運動療法も必要と考えられる。そこで低栄養、エネルギー過剰の両者に個別対応可能な栄養指導ツールを開発した。運動指導については水田分担研究者の研究成果からチャイルド分類Aの患者で安全域を1回1エクササイズ、1日1回、週4日に設定し指導ツールを開発した。さらに6か月までの有効性が海堀分担研究者によって確認された。
個別研究:
西口分担研究者は共同研究結果について新たな患者コホート(755例)でバリデーション解析を行った。さらに栄養状態層別化閾値として、血清アルブミン濃度は3.5g/dlから3.9g/dlに、非蛋白呼吸商も0.85から0.88にシフトしている可能性を指摘した。
村上分担研究者は地域連携パスに盛り込む指導ツールの適格性を示した。
加藤分担研究者は慢性肝疾患患者のQOLが骨格筋栄養指標とくに握力と最も高い相関を示すことを見出した(P=0.005)。
福澤分担研究者は肝硬変患者に対する3か月の運動処方が運動耐用能を改善することを明らかにした。
水田分担研究者はC型慢性肝炎患者においてインターフェロン療法の効果を検討し、骨格筋脂肪化が治療効果不良因子であることを見出し、肝硬変患者に対する9-12か月の運動療法でインスリン抵抗性の有意の改善が得られることを証明した。
海堀分担研究者は慢性肝疾患患者に対する運動プログラムの実践的効果を実証した。有意の予後予測因子はATと分岐鎖アミノ酸/チロシン比であった。
清水分担研究者は肥満モデル動物の肝発癌感受性が高く、アディポサイトカイン不均衡、酸化ストレス亢進、レニン-アンギオテンシン系の活性化が介在することを明らかにした。
白木分担研究者は蛋白栄養障害の指標であるサルコペニアが男性肝硬変の81%、女性肝硬変の50%に認められること、ともに有意の予後因子であることを証明した。
永田分担研究者は大規模コホート(31,543名)における肝癌発生に関して飽和脂肪酸の高摂取群で1.8倍と高いハザード比を認めた。
岡本分担研究者は新たに肥満対策・指導を取り込んだ新規栄養指導ツールを完成させた。
考察:肝硬変患者の栄養状態は、かってのデータと比較し蛋白栄養に著変は無いがエネルギー栄養が充足、一部は過剰(肥満)にシフトした。特にATレベル、レニン-アンギオテンシン系の活性化、インスリン感受性の関与は肝硬変患者において発がんを含む病態進展を抑制する上で肥満対策が重要となってきたことを示すものである。
そこで新しい栄養指導ツールでは、BMIの自己評価からエネルギー過剰摂取対策に進むアームを用意した。さらに運動処方についても新たに指導ツールを開発した。なお運動処方については、安全性と3~6か月の中期効果を確認した。
結論
最近10-15年間の肝硬変患者における栄養状態の変化を解明した。蛋白栄養状態に有意の変化は無い一方、エネルギー栄養状態は明らかに充足・過剰側にシフトし、約30%が肥満を呈した。後者では、特にエネルギー栄養の評価と対策が重要であり、運動指導ツールの開発と安全性の担保、中期的有効性も確認した。肥満対策を含む新しい栄養指導ツールも開発を終了した。この有効性については今後のバリデーションを必要とする。
公開日・更新日
公開日
2015-06-03
更新日
-