重症のインフルエンザによる肺炎・脳症の診断・治療に関する研究:新規診断・治療に関する提案と検証

文献情報

文献番号
201318023A
報告書区分
総括
研究課題名
重症のインフルエンザによる肺炎・脳症の診断・治療に関する研究:新規診断・治療に関する提案と検証
課題番号
H24-新興-一般-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
木戸 博(徳島大学 疾患酵素学研究センター(全国共同利用・共同研究 酵素学研究拠点))
研究分担者(所属機関)
  • 久保田 雅也(国立成育医療センター・神経内科)
  • 林 日出喜(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科・感染防御因子解析学)
  • 佐々木 信一(順天堂大学医学部附属浦安病院)
  • 高橋 悦久(徳島大学 疾患酵素学研究センター)
  • 西村 匡司(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部・救急医学)
  • 山口 清次(島根大学医学部小児科)
  • 西村 秀一(国立病院機構・仙台医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
20,778,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
重症インフルエンザによる肺炎・脳症・心筋炎の主要病因は、血管内皮細胞障害による透過性亢進である。上記エビデンスを背景に、1) 重症化に先立つ生体側のSOSシグナルをFlu Alarminと仮称して、モデル動物と臨床検体で検証する。2) 血管内皮細胞障害の機序を解明して重症化の治療法を開発する。
研究方法
1.【重症化モデル動物実験】による重症化機序の解析、Flu Alarmin検索、治療薬の検証。2.【培養細胞実験系】による「インフルエンザ―サイトカイン―プロテアーゼ」サイクルの検証。3.【MSPL/TMPRSS13ノックアウトマウス感染実験】による、高病原性鳥インフルエンザウイルス感染におけMSPL/TMPRSS13の意義の解明。4.【インフルエンザ脳症患者臨床検体】でのFlu Alarmin解析。5.【ICU入室患者の臨床検体】からのFlu Alarmin解析。6.【in vitro probe assay】により、インフルエンザ脳症患者Fibroblastを使用した治療薬の検討。
結果と考察
1)重症化機序:インフルエンザウイルスの増殖は、「インフルエンザ─サイトカイン─プロテアーゼ」サイクルによるが、さらにサイトカインを介して共役する「体内代謝障害―サイトカイン」サイクルが、重症化に伴う代謝破綻を制御していることを明らかにした。中でもPyruvate DehydrogenaseとPyruvate Dehydrogenase Kinase 4 (PDK4) がサイトカインと密接に関係している事を発見し、創薬ターゲット分子として注目される。2)「インフルエンザ─サイトカイン─プロテアーゼ」サイクルの中で、Enterokinaseの関与が推定された。3)高病原性鳥インフルエンザH5N1ウイルスのHemagglutinin (HA) 分解シグナル、RKKR、KKKR配列の認識酵素としてTMPRSS13/MSPLを見出した。本研究では、TMPRSS13/MSPLのKOマウスでは、KKKR配列を持つH5N1ウイルスの増殖が強く抑制され、RKKR配列ウイルスの増殖は軽度阻害に留まることを明らかにした。4)インフルエンザ感染重症化に伴うFlu Alarminとして乳酸/ATP比が検討され、ICU入室感染症重症化患者の予後予測因子、重症化を経時的、客観的に捉えるスコアーとしての有用性が確認された。5)インフルエンザ脳症を代表とする急性脳症では、乳酸/ATP比が熱性痙攣重責症例に比較して有意に増加することを確認した。さらにFlu Alarminとして、インフルエンザウイルス感染センサーのRIG-1が候補になることを見出した。6)熱不安定性CPT II遺伝子多型を持つインフルエンザ脳症の治療薬としてPPARδを介してCPT IIの転写を促進するBezafibrateを提唱していたが、患者の繊維芽細胞を用いた詳細な解析から、高熱下に低下したβ酸化を回復させることを明らかにした。
結論
1.インフルエンザ感染重症化機序として、「インフルエンザ―サイトカイン―プロテアーゼ」サイクルにカップルした「サイトカインー代謝不全」サイクルが見いだされた。代謝不全誘導のターゲット分子としてPDK4が明らかになり、PDK4阻害剤として新たにDADAが見いだされた。DADAはPDK4活性の阻害効果から代謝を正常化し、サイトカインストームの治療効果を示した。その結果、著明なウイルス増殖阻害効果を確認した。
2.【培養細胞実験系】による「インフルエンザ―サイトカイン―プロテアーゼ」サイクルの検証で、新たにEnterokinaseの関与が示唆された。
3.【MSPL/TMPRSS13ノックアウトマウス感染実験】で、高病原性鳥インフルエンザウイルスの増殖に、TMPRSS13/MSPLとFurinが係わっていると推定された。
4.【インフルエンザ脳症患者の病態解析と診断バイオマーカー】の検索から、乳酸/ATP比は急性脳症急性期で高値を、回復期で正常化することが確認された。
5.【ICU入室患者の臨床検体】からA-LES値の予後判定予測値は最も良好でAPACH IIを超えることが確認された。
6.【in vitro probe assay】系において、β酸化異常症を伴うインフルエンザ感染症では、各種脂肪酸代謝産物量を正常化するBezabibrateの効果が確認された。

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201318023Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
27,011,000円
(2)補助金確定額
27,011,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 13,018,259円
人件費・謝金 3,282,717円
旅費 2,867,783円
その他 1,609,241円
間接経費 6,233,000円
合計 27,011,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2014-06-03
更新日
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