文献情報
文献番号
201314036A
報告書区分
総括
研究課題名
胃がん予防のためのピロリ菌既感染者対策と感染防止に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-がん臨床-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 元嗣(北海道大学病院 光学医療診療部)
研究分担者(所属機関)
- 菊地 正悟(愛知医科大学 公衆衛生講座)
- 浅香 正博(北海道大学 がん予防内科学講座)
- 神谷 茂(杏林大学 感染症学教室)
- 奥田真珠美(兵庫医科大学 地域医療学)
- 伊藤 秀美(愛知がんセンター研究所)
- 藤森 研司(東北大学 社会医学・医療管理学講座)
- 吉原 正治(広島大学 保健管理センター)
- 井上 和彦(川崎医科大学 総合臨床医学)
- 中島 滋美(滋賀医科大学 消化器・血液内科)
- 間部 克裕(北海道大学病院 光学医療診療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
11,000,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動
研究分担者 藤森研司
北海道大学病院(平成25年4月1日~平成25年11月30日)→ 東北大学大学院(平成25年12月1日以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
がん臨床研究事業「ピロリ菌除菌による胃癌予防の経済効果」の成果を踏まえて5つの研究を行う。胃がんリスク分類の基準値の検討と評価では、Hp抗体と PG値による胃がんリスク分類を入口として、除菌と定期検査を組み合わせた胃がん予防システムを構築する。X線検査による胃がんリスク分類の検討では、胃がん検診でHp感染診断によるリスク評価を普及させために、X線造影検査によるリスク分類について画像解析装置を開発してその精度と実用性を検証する。小児への感染防止策の実施に向けた具体案作成では、家族内感染をブロックすれための具体的な指針を作成して、パイロット研究を行う。Hp感染小児の除菌時期の検討では、安全性の面からHp感染小児の除菌時期を検討する。胃癌予防効果の評価では、電子レセプトのNDBを利用して、継時的な除菌と胃がんの医療行為別の実数から除菌治療の普及と胃癌抑制効果を評価する。
研究方法
胃がんリスク分類の基準値の検討と評価:血清Hp抗体とPG値の検査結果と地域がん登録データをレコードリンケージし、血清Hp抗体価、PG値、検査後5年間の胃がん罹患の有無からなるデータセットを作成する。これらから胃がんリスク分類の最適基準値と胃がん罹患予測精度を計算する。X線検査による胃がんリスク分類の検討:X線造影検査での背景粘膜の客観的項目から、自動判定可能な装置を作成して評価する。小児への感染防止策の実施に向けた具体案作成:地方自治体、医師会、健診機関で具体案を作成して、試験的実施を行う。Hp感染小児の除菌時期の検討:協力地域で中学生のHp感染検査を行い、陽性者には除菌治療を行う指針を作成する。安全性の面を検討する。胃癌予防効果の評価:電子レセプトのNDBを用いて、除菌治療、胃がん治療行為ごとを指標とした実数をH21年から単年ごとに集計して、それらの関連を明らかにする。
結果と考察
【結果】がん臨床研究事業「ピロリ菌除菌による胃癌予防の経済効果」の成果を踏まえて5つの研究を行った。①胃がんリスク分類の基準値の検討と評価:群馬県高崎市、山形県鶴岡地区医師会、社会保険滋賀病院からのデータ提供(計年間約9700件)が進んでいる。地域がん登録のネットワークから、該当するデータの使用手続きを進めて解析中である。②X線検査による胃がんリスク分類の検討:自動診断装置およびソフトは北大情報科学研究科情報メディア学(長谷山美紀教授)で開発された。社会保険滋賀病院健康管理センターでHp抗体検査と便中Hp抗原検査の組み合わせなどによりHp感染の診断のなされた受診者を対象に、胃X線画像を自動解析してHp感染診断の精度と実用性を検証する。③小児への感染防止策の実施に向けた具体案作成:兵庫県篠山市、北海道福島町で具体案を作成した。出産が予想される世帯内の高校生以上で40歳未満の男女を対象としてパイロット試験が始まった。④Hp感染小児の除菌時期の検討:地域の関係者や医師会の協力を得て、中学1年生を対象とした具体案が作成され、パイロット試験が全国5つの自治体で開始された。⑤胃がん予防効果の評価:2013年7月に提出したレセプト情報等の提供に関する申出書の承諾が得られ、レセプトデータの解析が開始された。
【考察】わが国の胃癌撲滅には一次予防と二次予防によるTest, Treat, and Screeningが基本となる。Hp感染胃炎への除菌適用拡大で、胃癌撲滅の実現化の基盤ができた。一方で若年者への除菌で効率的な予防が期待できる。従って、若年者と高齢者を分けた対策が必要である。今回の研究は胃がん撲滅に向けた実現性のある政策に必要となる。血清Hp抗体とPG値による胃がんリスク分類のエビデンス構築で、リスクに応じた除菌後スクリーニング間隔が決定できる。胃X線造影でのHp感染自動診断化により、現行の胃がん検診からHp感染者を医療機関に誘導できる。小児の感染防止対策には、中高生が適切な時期と思われ、除菌治療に用いるPPIの保険適用拡大と、小児・青年における安全性と有効性の確立が急務である。次世代への感染防止として、第1子出生前にその世帯の感染者を除菌する施策で、胃癌を含む胃疾患の予防が期待できる。電子レセプトのNDBを利用して除菌治療が胃炎・胃がん診療に与える実際の影響を評価できる。
【考察】わが国の胃癌撲滅には一次予防と二次予防によるTest, Treat, and Screeningが基本となる。Hp感染胃炎への除菌適用拡大で、胃癌撲滅の実現化の基盤ができた。一方で若年者への除菌で効率的な予防が期待できる。従って、若年者と高齢者を分けた対策が必要である。今回の研究は胃がん撲滅に向けた実現性のある政策に必要となる。血清Hp抗体とPG値による胃がんリスク分類のエビデンス構築で、リスクに応じた除菌後スクリーニング間隔が決定できる。胃X線造影でのHp感染自動診断化により、現行の胃がん検診からHp感染者を医療機関に誘導できる。小児の感染防止対策には、中高生が適切な時期と思われ、除菌治療に用いるPPIの保険適用拡大と、小児・青年における安全性と有効性の確立が急務である。次世代への感染防止として、第1子出生前にその世帯の感染者を除菌する施策で、胃癌を含む胃疾患の予防が期待できる。電子レセプトのNDBを利用して除菌治療が胃炎・胃がん診療に与える実際の影響を評価できる。
結論
今後の20年間の胃癌死亡と発症を減らすためには、早急にH. pylori除菌による一次予防、胃癌サーベイランスによる二次予防を組み合わせた胃癌予防策を軌道に乗せることが重要である。そのための胃がん予防対策のシステム作りは需要である。
公開日・更新日
公開日
2015-09-03
更新日
-