文献情報
文献番号
201313039A
報告書区分
総括
研究課題名
ATLの腫瘍化並びに急性転化、病型変化に関連する遺伝子群の探索と病態への関与の研究
課題番号
H23-3次がん-一般-009
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
瀬戸 加大(愛知県がんセンター研究所 遺伝子医療研究部)
研究分担者(所属機関)
- 都築 忍(愛知県がんセンター研究所 遺伝子医療研究部)
- 大島 孝一(久留米大学医学部 病理学教室)
- 宇都宮 與(慈愛会今村病院分院 血液内科)
- 今泉 芳孝(長崎大学病院 原医研内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
10,584,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ATLにおいては、いくつかの遺伝子がゲノム異常や発現異常を示しており、がん関連遺伝子の候補として報告 されている。しかし、機能的側面の検討や遺伝子変異検索までの詳細な検討がなされた遺伝子は現在までほとんどない。今回の研究では、慢性型ATLと急性型あるいはリンパ腫型ATLのゲノム異常を比較し、発現解析、エピゲ ノム解析および機能解析も組み合わせることで、ATL の病態により重要な働きをしている遺伝子異常を同定し、 臨床的に有用なマーカーの確立ならびに分子病態の解明を目的とする。
研究方法
慢性型と急性型ATLのゲノム異常比較については、慢性型27例、急性型35例の患者末梢血検体を共同研究者施設より得た。ATL細胞はCD4陽性であるため、CD4陽性細胞からDNA, RNAは抽出した。ゲノム異常解析は400K あるいは44K オリゴアレイグラスを用い、遺伝子発現解析には44K microarray Kitを用いた。予後評価のために、全生存期間(OS)と累積急性転化率を求めた。OSは診断日から原因を問わない死亡日、または最終フォローアップ日とした。累積急性転化率は、診断日から急性転化までの日数、あるいは治療介入日、または最終フォローアップ日とした。これらはKaplan-Meier法を用いて評価を行った。患者情報は共同研究施設より得た。
結果と考察
急性型ATLに特徴的なゲノム異常領域を明らかにした。27例の慢性型ATLならびに35例の急性型ATLを対象とし、オリゴアレイCGHでそのゲノム異常解析を実施した。両病型のゲノム異常様式は似通っていたが、急性型ATLでのみ高頻度に認めるゲノム異常部位が存在していた。9p21.3部のゲノム欠失は慢性型ATLと比べて急性型ATLで特に有意であり特徴的であったので、責任遺伝子を同定したところ、CDKN2A遺伝子であった。遺伝子導入実験により、機能的に検討したところ、CDKN2A遺伝子がコードするINK4aとARFのうち、INK4aがより強い増殖抑制効果を有していた。また、それ以外の領域の責任遺伝子として、CD58(1p13)、CCDC7(10p11.2)、ITGB1(10p11.2)を明らかにした。予後との関連の解析では、1)慢性型ATLでCDKN2A異常を含む細胞周期制御遺伝子の異常を有するグループは急性転特徴的に見られた。2)CD58を欠失する症例はごく早期に急性転化をしていた。3)細胞周期制御遺伝子異常かCD58 の欠失があるものは有意に急性転化が起こりやすい。また、ATLの発症機構解析のモデルとして、これまでにマウス胎児肝細胞からin vitroで誘導した正常T細胞にMyc, Bcl2, Ccnd1を導入し、ATLと同様のCD4陽性T細胞リンパ腫を作成することに成功していた。そこで、p16ノックアウトマウスT細胞にATLに異常の認められる遺伝子を含む複数のATL関連遺伝子を導入し、急性型ATL類似のT細胞性リンパ腫モデルを作成しつつある。そのモデルはin vitroでhigh-through putの治療薬の探索を可能とし。さらに、in vivoで実際の治療効果をテストできるので、産学協同でこれらの方向性を実現したい。
結論
1.慢性型と急性型ATL、両病型のゲノム異常様式は似通っていたが、急性型ATLでのみ高頻度に認めるゲノム異常部位が存在していた。
2.9p21.3部のゲノム欠失は慢性型ATLと比べて急性型ATLで特に有意であり特徴的であったので、責任遺伝子を同定したところ、CDKN2A遺伝子であり、遺伝子導入実験により機能的に検討したところ、CDKN2A遺伝子がコードするINK4aとARFのうち、INK4aがより強い増殖抑制効果を有していることが判明した。また、それ以外の領域の責任遺伝子として、CD58(1p13)、CCDC7(10p11.2)、ITGB1(10p11.2)を明らかにした。
3.予後との関連の解析では、1)慢性型ATLでCDKN2A異常を含む細胞周期制御遺伝子の異常を有するグループは急性転特徴的に見られた。2)CD58を欠失する症例はごく早期に急性転化をしていた。3)細胞周期制御遺伝子異常かCD58 の欠失があるものは有意に急性転化が起こりやすい。
4.ATLの発症機構解析のモデルとして、p16ノックアウトマウスT細胞にATLに異常の認められる遺伝子を含む複数のATL関連遺伝子を導入することで、急性型ATL類似のT細胞性リンパ腫モデルができつつある。
2.9p21.3部のゲノム欠失は慢性型ATLと比べて急性型ATLで特に有意であり特徴的であったので、責任遺伝子を同定したところ、CDKN2A遺伝子であり、遺伝子導入実験により機能的に検討したところ、CDKN2A遺伝子がコードするINK4aとARFのうち、INK4aがより強い増殖抑制効果を有していることが判明した。また、それ以外の領域の責任遺伝子として、CD58(1p13)、CCDC7(10p11.2)、ITGB1(10p11.2)を明らかにした。
3.予後との関連の解析では、1)慢性型ATLでCDKN2A異常を含む細胞周期制御遺伝子の異常を有するグループは急性転特徴的に見られた。2)CD58を欠失する症例はごく早期に急性転化をしていた。3)細胞周期制御遺伝子異常かCD58 の欠失があるものは有意に急性転化が起こりやすい。
4.ATLの発症機構解析のモデルとして、p16ノックアウトマウスT細胞にATLに異常の認められる遺伝子を含む複数のATL関連遺伝子を導入することで、急性型ATL類似のT細胞性リンパ腫モデルができつつある。
公開日・更新日
公開日
2015-09-02
更新日
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