再生医療早期実現化促進及び汎用性向上のための周辺基盤技術開発

文献情報

文献番号
201306005A
報告書区分
総括
研究課題名
再生医療早期実現化促進及び汎用性向上のための周辺基盤技術開発
課題番号
H23-再生-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 陽治(国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子細胞医薬部 )
研究分担者(所属機関)
  • 早川 堯夫(近畿大学 薬学総合研究所)
  • 掛樋 一晃(近畿大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
25,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒトの細胞や組織を培養・加工した「細胞・組織加工製品」を用いた再生医療は,治療法に乏しく,重篤・致死的またはQOLを著しく損なう疾病・損傷に対して有効な治療法になると期待されている.本研究は,難治性疾患等の患者にいち早く有効な再生医療を届けるため,および国際的な再生医療の開発・ビジネス競争でわが国が主導的地位を得るために,将来の開発動向を見据えつつ,細胞・組織加工製品の品質・安全性に関して新規かつ汎用性の高い評価技術・製造法の開発を行い,わが国から世界に向けて先導的に提示することを最終目的とする.
研究方法
細胞・組織加工製品の安全性・品質の確保を図るための,効果的・効率的・合理的な①がん化の抑制,②感染リスク・汚染の排除,③免疫原性の低減,④均一性・同等性の確保に関する技術開発を展開した.
結果と考察
①細胞・組織加工製品の製造工程における混入造腫瘍性細胞検出試験系として,重度免疫不全マウスモデル(NOGマウス)への細胞移植試験の性能を軟寒天コロニー形成試験と比較した.モデル製品としてヒト骨髄間葉系幹細胞(hMSC)を用い,陽性対照としてHeLa細胞を一定量スパイクしたhMSCを用いて,NOGマウスin vivo試験系の検出感度を評価したところ,マトリゲルに懸濁された10^7個のhMSCに混入するHeLa細胞は,下限として10個(混入率0.0001%)が,17%の確率で検出された.一方,軟寒天コロニー形成試験の検出の下限は,10^4個のhMSCに混入するHeLa細胞として10個(混入率0.1%)であった.これらの結果より,10^7個の培養ヒト骨髄由来間葉系幹細胞をNOGマウスに移植する試験において,例えば10匹の試験がすべて「陰性」である場合,「造腫瘍性細胞の混入は,その造腫瘍性がHeLa細胞と同程度とした場合,0.0001%(100万個に1個)未満である」ということを示唆するものであることが明らかとなった.②等温遺伝子増幅法(ICAN)法を改良したHIV遺伝子検出のための遺伝子特異的等温増幅法(Ladder forming RT-ICAN法)を開発し,ヒト脂肪組織由来多系統前駆細胞や無血清・フィーダー細胞フリーで樹立したiPS細胞株におけるHIVウイルス由来遺伝子残存否定試験を実施し,本検出系の有用性を実証した.今年度は測定対象ととなるウイルス種の拡充を図り,ヒトB型肝炎ウイルス検出を可能とするLadder forming RT-ICAN法およびヒトC型肝炎ウイルスの網羅的ウイルスゲノム検出を可能とするLadder forming RT-ICAN法確立のための基盤技術を開発した.③「細胞・組織加工製品の免疫原性制御法の開発」に繋がる周辺基盤技術として,iPS細胞への異種動物由来成分の混入の原因追究について検証した.糖鎖を指標とするiPS細胞とその起源細胞の特性評価の実行可能性について検証するため,異なる3種類のiPS細胞について糖鎖解析を行うとともに,本研究で使用したiPS細胞の起源細胞であるヒト肺繊維芽細胞(MRC-5)について糖鎖解析を行った.また,iPS細胞とMRC-5を糖鎖プロファイルに基づいて識別する方法についても提案した.
結論
本研究の成果は,多くの細胞・組織加工製品に適用可能な基盤技術となり,国内で製品開発を目指す関係者に大いに活用されるとともに,わが国が国際的に先導的立場に立つ上でも意義深いと考えられる.

公開日・更新日

公開日
2015-03-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201306005B
報告書区分
総合
研究課題名
再生医療早期実現化促進及び汎用性向上のための周辺基盤技術開発
課題番号
H23-再生-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 陽治(国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子細胞医薬部 )
研究分担者(所属機関)
  • 早川 堯夫(近畿大学 薬学総合研究所)
  • 掛樋 一晃(近畿大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒトの細胞や組織を培養・加工した「細胞・組織加工製品」を用いた再生医療は,治療法に乏しく,重篤・致死的またはQOLを著しく損なう疾病・損傷に対して有効な治療法になると期待されている.本研究は,難治性疾患等の患者にいち早く有効な再生医療を届けるため,および国際的な再生医療の開発・ビジネス競争でわが国が主導的地位を得るために,将来の開発動向を見据えつつ,細胞・組織加工製品の品質・安全性に関して新規かつ汎用性の高い評価技術・製造法の開発を行い,わが国から世界に向けて先導的に提示することを最終目的とする.
研究方法
細胞・組織加工製品の安全性・品質の確保を図るための,効果的・効率的・合理的な①がん化の抑制,②感染リスク・汚染の排除,③免疫原性の低減,④均一性・同等性の確保に関する技術開発を展開した.
結果と考察
①製造工程における造腫瘍性細胞の混入の検出を目的とした試験系として,重度免疫不全マウスモデル(NOGマウス)への細胞移植試験の性能を軟寒天コロニー形成試験と比較した.モデルケースとしてヒト骨髄間葉系幹細胞(hMSC)を取り上げ,陽性対照としてHeLa細胞を用い,各試験系を評価した.NOGマウスに対しマトリゲルに懸濁した状態でHeLa細胞を移植した場合,既存の国際ガイドライン(WHO TRS 878)推奨のヌードマウスを用いた方法と比べ,およそ5千倍検出感度が高かった.NOGマウスおよびマトリゲルを用いたin vivo造腫瘍性試験系に関し,hMSC中に混入したHeLa細胞の検出能力を検討したところ,10^7個のhMSCに混入するHeLa細胞は,下限として10個(混入率0.0001%)が,17%の確率で検出された.この時の,TPD50値(50%の確率で腫瘍形成が認められる細胞数)は,添加HeLa細胞の数にして,180個(混入率0.002%)であった.一方,軟寒天コロニー形成試験の検出の下限は,10^4個のhMSCに混入するHeLa細胞として10個(混入率0.1%)であった.なお,iPS細胞由来ヒト網膜色素上皮細胞(RPE)への軟寒天コロニー形成試験の適用可能性に関し検討したところ,RPEに混入する造腫瘍性細胞の検出限界は,その足場非依存性増殖能力がテラトカルシノーマ由来PA-1細胞と同等と仮定した場合,混入率にして約1%であることが明らかとなった.②感染リスク排除対策として,無血清・フィーダー細胞フリーでiPS細胞株を樹立し,維持できることの汎用性を確認した.次に,汎用されている定量的PCR法ではウイルス由来核酸を含む細胞の一部しか検出できない問題が未解決であることから,その抜本的解決を目指し,感染検体に含有される全核酸を網羅的に解析でき,かつ高感度なウイルス由来核酸検査を可能とする等温遺伝子増幅法(ICAN法)の改良を行った.その結果,ICAN法を改良したHIV遺伝子検出のための遺伝子特異的等温増幅法(Ladder forming RT-ICAN法)の開発に成功した.この方法により,ヒト脂肪組織由来多系統前駆細胞や無血清・フィーダー細胞フリーで樹立したiPS細胞株におけるHIVウイルス由来遺伝子残存否定試験を実施し,本検出系の有用性を実証した.さらに,検出対象とできるウイルス種の拡充を図るため,ヒト肝炎ウイルス(ヒトB型肝炎ウイルス:HBVおよびヒトC型肝炎ウイルス:HCV)由来遺伝子の検出を可能とするLadder forming RT-ICAN法の開発に着手した.その結果,HCVについては,全ウイルスゲノム情報におけるLadder forming RT-ICAN法の特異的プライマー設定アルゴリズムの絞り込みに至った.一方,HBVについては,Ladder forming RT-ICAN法の開発に成功し,103~107コピーの感度までの検出効率を達成するに至り,HBVの網羅的ウイルスゲノム検出を可能とするウイルス特異的等温増幅法(Ladder forming RT-ICAN法)の開発に成功した.③免疫原性となりうるiPS細胞中の異種動物糖鎖の解析およびそれらの混入を低減するための方策,複数種のiPS細胞ならびにその起源細胞の糖鎖プロファイルに基づいた細胞の均質性・同等性評価の実行可能性について検証した.
結論
本研究の成果は,多くの細胞・組織加工製品に適用可能な基盤技術となり,国内で製品開発を目指す関係者に大いに活用されるとともに,わが国が国際的に先導的立場に立つ上でも意義深いと考えられる.

公開日・更新日

公開日
2015-03-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-01-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201306005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
細胞・組織加工製品の安全性・品質の確保のための,効果的・効率的・合理的な①がん化の抑制,②感染リスク・汚染の排除,③免疫原性低減・均一性確保に関して,①混入造腫瘍性細胞の超高感度検出のための,重度免疫不全マウスモデルへの細胞移植試験および軟寒天コロニー形成試験のプロトコール確立,②検体中の全核酸を網羅的に解析可能かつ高感度なウイルス由来核酸検査を可能とする等温遺伝子増幅法の開発,③細胞の糖鎖プロファイルを指標にした細胞の免疫原性・同等性評価法の実行可能性の検証,が達成された.
臨床的観点からの成果
本研究の成果の一部は,理化学研究所および先端医療振興財団において平成25年より開始されているヒトiPS細胞由来網膜色素上皮細胞を用いた臨床研究において,移植細胞の品質・安全性評価プロトコールの作成の際に,参考情報として活用された.本研究の成果の一部および他の関連研究の成果により,平成26年3月に本研究代表者は日本再生医療学会Johnson & Johnson Innovation Award(技術賞)を受賞するに至っている.
ガイドライン等の開発
「同種iPS 細胞由来網膜色素上皮細胞に関する評価指標(案)」(案件番号495140012,平成26年4月15日公示)及び「自己iPS 細胞由来網膜色素上皮細胞に関する評価指標」(薬食機発0529第1号別添1,平成25年5月29日)の根拠論文として採用された.また,PMDA科学委員会細胞組織加工製品専門部会にて成果の一部が発表され,その内容は,同専門部会の報告書「iPS細胞等をもとに製造される細胞組織加工製品の造腫瘍性に関する議論のまとめ」(平成25年8月20日) にも盛り込まれた.
その他行政的観点からの成果
厚生労働省先端医療開発特区(スーパー特区)意見交換会にて成果の一部について発表した(平成23年9月5日及び平成24年12月20日).国家基幹研究開発推進事業「再生医療の実現化ハイウエイ」ミニマム・コンセンサス・パッケージ(MCP)策定会議/再生医療薬事講習会にて成果の一部について発表した(平成24年2月6日及び平成25年10月4日).国家基幹研究開発推進事業「再生医療の実現化ハイウエイ」プロジェクトマネージャー会議にて成果の一部について発表した(平成24年2月24日).
その他のインパクト
本研究の成果を含む論文(Kuroda et al., 2012)は,読売新聞(平成24年5月18日)でも紹介された.本研究の成果の一部は,国際生物薬品標準化連盟(IABS)と科学技術振興機構(JST)との国際合同ワークショップ(平成26年3月7日,京都)でも発表されている.[なお,本研究課題の分担研究者の一人であった近畿大学教授・掛樋一晃先生は,本研究課題の終了後,平成26年5月28日に逝去されました.ここに謹んでご哀悼の意を捧げご冥福をお祈り申し上げます.]

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
38件
その他論文(和文)
32件
その他論文(英文等)
4件
学会発表(国内学会)
78件
学会発表(国際学会等)
31件
その他成果(特許の出願)
1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
脂肪組織由来体性幹細胞の製造方法
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2012-155584
発明者名: 森山 博由,森山 麻里子,松山 晃文,早川 堯夫
権利者名: 近畿大学
出願年月日: 20120711

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kuroda T, Yasuda S, Kusakawa S et al.
Highly sensitive in vitro methods for detection of residual undifferentiated cells in retinal pigment epithelial cells derived from human iPS cells.
PLoS One  (2012)
原著論文2
Yasuda S, Hasegawa T, Hosono T et al.
AW551984: a novel regulator of cardiomyogenesis from pluripotent embryonic cells.
Biochem J  (2011)
原著論文3
Takayama K, Inamura M, Kawabata K et al.
Efficient Generation of Functional Hepatocytes From Human Embryonic Stem Cells and Induced Pluripotent Stem Cells by HNF4α Transduction.
Mol Ther  (2012)
原著論文4
Takayama K, Inamura M, Kawabata K et al.
Efficient and directive generation of two distinct endoderm lineages from human ESCs and iPSCs by differentiation stage-specific SOX17 transduction.
PLoS One  (2011)
原著論文5
Inamura M, Kawabata K, Takayama K et al.
Efficient generation of hepatoblasts from human ES cells and iPS cells by transient overexpression of homeobox gene HEX.
Mol Ther  (2011)
原著論文6
Moriyama M, Moriyama H, Ueda A et al.
Human adipose tissue-derived multilineage progenitor cells exposed tooxidative stress induce neurite outgrowth in PC12 cells through p38 MAPK signaling.
BMC Cell Biol  (2012)
原著論文7
Takayama K, Kawabata K, Nagamoto Y et al.
3D spheroid culture of hESC/hiPSC-derived hepatocyte-like cells for drug toxicity testing.
Biomaterials  (2013)
原著論文8
Takayama K, Inamura M, Kawabata K et al.
Generation of metabolically functioning hepatocytes from human pluripotent stem cells by FOXA2 and HNF1α transduction.
J Hepatol  (2012)
原著論文9
Tashiro K, Kawabata K, Omori M et al.
Promotion of hematopoietic differentiation from mouse induced pluripotent stem cells by transient HoxB4 transduction.
Stem Cell Res  (2012)
原著論文10
Moriyama M, Moriyama, Uda J et al.
BNIP3 Plays Crucial Roles in the Differentiation and Maintenance of Epidermal Keratinocytes.
J Invest Dermatol  (2014)
原著論文11
Moriyama H, Moriyama M, Sawaragi K et al.
Tightly regulated and homogeneous transgene expression in human adipose-derived mesenchymal stem cells by lentivirus with tet-off system.
PLoS One  (2013)
原著論文12
Takayama K, Nagamoto Y, Mimura N et al.
Long-Term Self-Renewal of Human ES/iPS-Derived Hepatoblast-like Cells on Human Laminin 111-Coated Dishes.
Stem Cell Reports  (2013)
原著論文13
Takayama K, Kawabata K, Nagamoto Y et al.
CCAAT/enhancer binding protein-mediated regulation of TGFβ receptor 2 expression determines the hepatoblast fate decision.
Development  (2014)
原著論文14
Kinoshita M, Mitsui Y, Kakoi N et al.
Common Glycoproteins Expressing Polylactosamine-Type Glycans on Matched Patient Primary and Metastatic Melanoma Cells Show Different Glycan Profiles.
J Proteome Res  (2014)
原著論文15
Yamada K, Mitsui Y, Kakoi N et al.
One-pot characterization of cancer cells by the analysis of mucin-type glycans and glycosaminoglycans.
Anal Biochem  (2012)
原著論文16
Mitsui Y, Yamada K, Hara S et al.
Comparative studies on glycoproteins expressing polylactosamine-type N-glycans in cancer cells.
J Pharm Biomed Anal  (2012)
原著論文17
Maeda E, Kita S, Kinoshita M et al.
Analysis of nonhuman N-glycans as the minor constituents in recombinant monoclonal antibody pharmaceuticals.
Anal Chem  (2012)
原著論文18
Yagi Y, Kakehi K, Hayakawa T et al.
Specific detection of N-glycolylneuraminic acid and Galα1-3Gal epitopes of therapeutic antibodies by partial-filling capillary electrophoresis.
Anal Biochem  (2012)
原著論文19
Oyama T, Yodohsi M, Yamane A et al.
Rapid and sensitive analyses of glycoprotein-derived oligosaccharides by liquid chromatography and laser-induced fluorometric detection capillary electrophoresis.
J Chromatogr B  (2011)
原著論文20
Yamamoto S, Shinohara C, Fukushima E et al.
Partial-filling affinity capillary electrophoresis of glycoprotein oligosaccharides derivatized with 8-aminopyrene-1,3,6-trisulfonic acid.
J Chromatogr A  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201306005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
25,500,000円
(2)補助金確定額
25,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 16,723,003円
人件費・謝金 0円
旅費 439,822円
その他 8,338,495円
間接経費 0円
合計 25,501,320円

備考

備考
預金利息分(1320円)だけ,支出が多い.

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
-