文献情報
文献番号
201301004A
報告書区分
総括
研究課題名
社会的養護における児童の特性別標準的ケアパッケージ(被虐待児を養育する里親家庭の民間の治療支援機関の研究)
課題番号
H23-政策-一般-007
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
開原 久代(東京成徳大学 子ども学部)
研究分担者(所属機関)
- 深谷 昌志 (東京成徳大学 子ども学部)
- 桐野 由美子(京都ノートルダム女子大学生活福祉文化学部)
- 平田 美智子(和泉短期大学)
- 林 浩康(日本女子大学人間社会学部社会福祉学科)
- 横堀 昌子(青山学院女子短期大学子ども学部)
- 森 和子(文京学院大学人間学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
施設の小規模化と家庭養護推進の政策をすすめるにあたっては、困難事例を養育する里親家庭や小規模化される施設の職員への専門的支援体制を確立することが急務である。そのため最終年度の25年度は、先進的な治療支援の外国情報を得るため、英国は昨年と同じ招聘専門家による講演と討議をとおして困難事例の治療支援の視点を深め、仏国は昨年の里親委託機関の訪問調査で協力を得た施設長らの来日を機に昨年得た情報の再確認を行い、豪州調査では、年長児の治療的グループホームを訪問調査し、日本の課題となっている社会的養護を出された年長児対策の情報を得ることをめざした。国内調査は、昨年に続き第二回の里親全国調査により、委託返上を考えるほどの養育困難の実態に焦点をあてた調査を企画し、里親支援の現状については、新設された里親支援専門相談員の活動状況の調査をめざした。
研究方法
外国調査では昨年に続き、Patrick Tomlinson(T氏)招聘により里親、施設職員、専門家との交流、講演、質疑等の9日間の活動を企画し、英国の施設ケアと里親支援の実践を討議し、さらに治療的ケアの実践と理論の理解のためにT氏らの著書の翻訳を10人の医師、心理士でとりくんだ。またIFCO招聘で来日の仏国里親委託機関Relais AlésiaのMarie Christine Delpeyrow所長(D氏)とFrédérique de Oña医師(O氏)らの聞き取り調査により仏国の里親の地位について昨年の訪問調査で得た情報を深める質疑を行った。豪州調査では、Lighthouse財団の年長児の自立支援を行う治療的グループホームの視察訪問を行い、社会的養護を出た年長児対策を調査した。国内調査では、里親会の協力で養育困難に焦点をあてた第二回の里親全国調査を2120家庭のアンケート調査(回収率48.4%)により実施し、日本の里親支援の実態については新設された里親支援専門相談員の配置状況を全国児童養護施設と乳児院720か所へのアンケート調査(回収率65.7%)と研修会開催により、相談員の活動を調査した。
結果と考察
外国調査では、開原班が英国の実践を昨年に続き、T氏の講演、ワークショップ、座談会、対談をとおして討議し、子どもの視点とエビデンス重視の考え方に基づく日本独自の支援モデル構築への示唆を得た。林班は仏国里親委託機関のD氏とO氏の来日を機に、メンタルヘルスの問題を持つ子どもや実親の支援、専門ティームの一員として委託がなくても給与が支払われる里親の地位と国家資格、独自の里親リクルート、乳児院の役割等をインタビューし、昨年の調査の裏付けを行った。森班は社会的養護を出た若者たちの拠り所に視点をおき、豪州のLighthouse財団の10代の母子のグループホームを含む若者の治療的ファミリーホームが複数のホームをクラスター化して運営している状況、退所者がいつでも出入りできる終生会員制度など新しい知見を得た。 国内調査では、深谷班は虐待体験と発達上の問題に焦点をあてた2回目の里親全国調査により、7割に虐待体験があり、5割が学習上の問題をかかえ、36.4%に考えられないような困難行動がみられ、3割に著しい養育困難のあることを明らかにした。平田班は24年度発足の里親支援専門相談員の配置の調査と研修会から、40%の施設に1人配置が実現されているが、研修もなく、児相や支援機関との連携上の様々な制約のため十分活動ができない現状が明らかにされた。研究代表者開原は、関係者の協力を得て2013年12月福村出版からT氏らの原著の翻訳書「虐待を受けた子どもの愛着とトラウマの治療的ケア」を出版した。以上の調査と23、24年度調査をもとに、先進的な外国情報を参考にしながら、あくまで日本の現状に根ざした困難事例を養育する里親家庭の支援センターモデルを想定し、東京都が2002年に廃止した30年の実績をもつ養育家庭センターを再評価し、実績のある児童養護施設に併設したセンターモデルを提案したい。
結論
24年度概要版の結論に治療支援機関モデルの概略を示したが、宿泊や一時保護機能をふくめた里親、里子、実親支援の場と年長児対応を提案したいが、里親養育が8割近くを占める英国では、困難な社会的養護児の増加に対して、治療的施設ケアが見直されていることから、支援機関モデルには治療的グループホームの併設の重要性を強調したい。5人定員に専門的ケア担当者5~8人のホームのスタッフの募集や研修が今後の課題であるが、日本では困難事例の対応は情緒障害児短期治療施設(情短)という意見があるが、情短こそ小規模化と改革が求められている。
公開日・更新日
公開日
2014-08-27
更新日
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