リスクコミュニケーションにおける情報の伝達手法に関する研究 

文献情報

文献番号
201234053A
報告書区分
総括
研究課題名
リスクコミュニケーションにおける情報の伝達手法に関する研究 
課題番号
H24-食品-指定(復興)-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
緒方 裕光(国立保健医療科学院 研究情報支援研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 山口 一郎(国立保健医療科学院生活環境研究部)
  • 奥村 貴史(国立保健医療科学院研究情報支援研究センター)
  • 藤井 仁(国立保健医療科学院研究情報支援研究センター)
  • 鳥澤 健太郎(独立行政法人情報通信研究機構 ユニバーサルコミュニケーション研究所)
  • 風間 淳一(独立行政法人情報通信研究機構 ユニバーサルコミュニケーション研究所)
  • 乾 健太郎(東北大学大学院情報科学研究科)
  • 岡崎 直観(東北大学大学院情報科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
東日本大震災により生じた東京電力福島第一原子力発電所の事故により、環境中に大量の放射性物質が放出され、放射能に関するあいまいな情報や伝聞による健康情報がインターネットを中心として蔓延し、国民の間に食品の安全性に関する不安が広がっている。このような状況において食品並びに食品安全行政への信頼を確保するために、現在、科学的知見に基づく食品の安全性に関する情報を正確かつ分かりやすく国民に伝える「リスクコミュニケーション」が求められている。しかしながら、従来のリスクコミュニケーションは、専門家から一般人への一方通行な情報伝達、または、専門家と一般市民における双方向の情報交換のいずれかを前提としており、現在のように放射能に関する正誤のあいまいな情報がネットに溢れる状況を想定していなかった。
本研究では、ネットが普及した現在における食品安全に関するリスクコミュニケーションを確立するため、食品中の放射性物質汚染を事例として取り上げ、ネット時代に求められるリスクコミュニケーションあり方を明らかにすることを目的とする。
研究方法
上記の目的のために、文献レビューによりリスクコミュニケーションの考え方の現状を概観したうえで、1) 社会、並びに、ネットに存在するさまざまな情報を効率的に分析し、どのような情報が国民から求められているかを把握し、2) 消費者が食品の安全性を判断するための情報を効果的に関係者や国民に提供する手法を検討する。さらに、3) ネットと実社会との関係についてアンケート調査等の手法を用いて分析することにより、ネットを用いたリスクコミュニケーション手法の信頼性、妥当性の検証を試みる。
結果と考察
行政、科学者、一般市民の間でリスクコミュニケーションを確立させるためには、公的機関(あるいはリスクの専門家)がリスク情報を発信する際には、以下の点を考慮することが重要であると考えられる。
1)従来のリスクコミュニケーションの考え方に加えて、インターネットの効率的利用の促進などの新たな枠組みを考える必要がある。
2)リスク情報に対して適切かつ説得的な根拠を発信していくことと、受信者の感情に配慮した形で情報を発信していくことが求められる。
3)誤情報の拡散を抑えるためには、迅速な対応、公式発表・公式情報の発信、誤情報の定常的なモニタリング、公式発表の効果のモニタリング、訂正情報を末端の受信者に迅速に届ける仕組みが大切である。
4)リスク対策に関する意志決定への幅広い関係者の巻き込み、および意志決定過程の透明化のための情報共有が求められる。
5)食品を主に購入する立場である層は、TV等のマスコミを主な情報源としていることが多く、全体的に保健所などが情報源であることは少ない。今後はインターネット等の新しい媒体を用いた情報提供が必要である。
6)今後インターネットによる情報発信を進めるにあたっては、検索連動型広告の活用と共に、受け手の特性やニーズに応じたサイト構成やコンテンツの提供を検討する必要がある。

上記で挙げた点を、今後の情報伝達に活かしていくためには、情報発信者がリスク情報の内容や伝達方法を認識するだけでなく、そのための体制や仕組みを作ることも考えていかなければならない。
また、問題を食品中放射能のリスクに限定した場合には、「放射線リスク」および「食品」という2つの要素の特殊性を考慮する必要があり、インターネット上の情報と非インターネット上の情報の比較なども含めて、本年度に実施した調査で得られた結果に関するより詳細な分析を予定している。
結論
 インターネットが普及した状況におけるリスクコミュニケーションのあり方について、文献レビュー、ネット上の情報の分析、事例調査、一般市民を対象とした社会調査により、現状および問題点について検討した。その結果、リスクコミュニケーションの観点から、公的機関(あるいはリスクの専門家)がリスク情報を発信する際に今後留意すべき重要な点を提示した。

公開日・更新日

公開日
2013-07-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201234053Z