特発性肺線維症急性増悪及び薬剤性肺障害に関与する日本人特異的遺伝素因に関する研究

文献情報

文献番号
201231005A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性肺線維症急性増悪及び薬剤性肺障害に関与する日本人特異的遺伝素因に関する研究
課題番号
H22-難治-一般-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
萩原 弘一(埼玉医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 杉山 幸比古(自治医科大学 医学部)
  • 酒井 文和(埼玉医科大学 医学部)
  • 田口 善夫(天理よろづ相談所病院 内科)
  • 本間 栄(東邦大学 医学部)
  • 谷口 博之(公立陶生病院 内科)
  • 滝澤 始(杏林大学 医学部)
  • 瀬戸口 靖弘(東京医科大学 医学部)
  • 長谷川 好規(名古屋大学 医学部)
  • 海老名 雅仁(東北大学 医学部)
  • 吾妻 安良太(日本大学 医学部)
  • 井上 義一(近畿中央胸部疾患センター 内科)
  • 小林 国彦(埼玉医科大学 医学部)
  • 桑野 和善(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 冲永 壯治(東北大学 医学部)
  • 西條 康夫(新潟大学 医学部)
  • 藤田 結花(旭川医療センター 内科)
  • 稲瀬 直彦(東京医科歯科大学 医学部)
  • 上甲 剛(近畿中央病院 放射線科)
  • 服部 登(広島大学 医学部)
  • 岡崎 康司(埼玉医科大学 医学部)
  • 迎 寛(産業医科大学 医学部)
  • 幸山 正(東京大学 医学部)
  • 林 龍二(富山大学 医学部)
  • 前門戸 任(宮城県立がんセンター 内科)
  • 柴田 陽光(山形大学 医学部)
  • 岸 一馬(虎ノ門病院 内科)
  • 臼井 一裕(NTT東日本関東病院 内科)
  • 千葉 弘文(札幌医科大学 医学部)
  • 原田 敏之(北海道社会保険病院 内科)
  • 今野 哲(北海道大学 医学部)
  • 須谷 顕尚(島根大学 医学部)
  • 小暮 啓人(名古屋医療センター 内科)
  • 森本 浩之輔(長崎大学 医学部)
  • 森 秀法(岐阜大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
20,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬剤性肺障害,特発性肺線維症急性増悪に関与する遺伝因子の解明

近年,日本人肺の脆弱性が指摘されている(Azuma A, Hagiwara K, Kudoh S. Am J Respir Crit Care Med. 177:1397, 2008).(1)薬剤性肺障害が他国(西洋や他のアジア人)より高頻度で見られ,高率に致死的な経過をたどること(Azuma and Kudo, JMAJ 50:1-7,2007:表1),(2)肺線維症を有する患者で他国より高頻度に急性増悪が起こり,高い致死率を示すと推定されること(Azuma et al. Am J Respir Crit Care Med. 177:1397,2008)が典型例である(表1).これ以外にも(3)皮膚筋炎に伴うびまん性肺胞障害(DAD)型の急性間質性肺炎は海外では非常に少ない(Kameda et al. J Rheumatol 34:1719,2005及び亀田私信).(4)肺線維症合併肺手術後の肺線維症急性増悪は海外にはあまり見られない(工藤私信)などがある.日本人は,特定の条件下で,びまん性肺胞障害(DAD)を起こしやすいようだ.
研究方法
a. サンプル採集 特発性肺線維症急性増悪および薬剤性肺障害が疑われる呼吸器疾患患者より,末梢血リンパ球を採取,DNAを分離するとともに,EBウイルスを感染させてB細胞を不死化し,再度のDNA調整に備えた
b. 臨床情報,画像情報収集
 特発性肺線維症急性増悪および薬剤性肺障害で,本研究にてDNAを採集した患者の臨床情報,画像情報を収集した.
c. エクソーム解析

 全国30の協力医療機関より,442例の患者検体(イレッサ肺障害+タルセバ肺障害49例,ザーコリ肺障害3例,ドセタキセル38例など薬剤性肺障害合計262例,特発性肺線維症急性増悪 141例など間質性肺疾患180例)を収集した.そのうち,患者データ+患者画像を279例収集して診断の確認を行った.診断確実例のうち劇症例,死亡例を中心に,ヒト全遺伝子コード領域シークエンス解析(エキソーム解析)を98名(イレッサ肺障害+タルセバ肺障害36名,特発性肺線維症急性増悪45名,ザーコリ肺障害2名,ドセタキセル肺障害15名)に対して施行した.対照として,コーカシアン(53名),中国漢人(68名),日本人(70名)エクソームfastqデータを,1000人ゲノムプロジェクトのデータを収集しているsequence read archiveデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sra)より取得した.全てのデータは,CLC Genomics Workbench(CLC bio)にてヒトゲノム標準配列(hg19)にmappingした.各患者で,90%以上のexon領域が10回以上読まれていることを確認したのち, Probablistic variant detectionアルゴリズムにて,ヒト標準配列と異なる塩基配列(以下,変異と記す)を取得した.
結果と考察
薬剤性肺障害,特発性肺線維症急性増悪の原因と考えられるGene X(雑誌発表前なので遺伝子名は公表できない)を同定した.年間数千名の死亡原因となっていると想定される遺伝子であるため,厚生労働省に健康危険情報として報告.さらに特許申請を行った.
結論
薬剤性肺障害,特発性肺線維症急性増悪の原因と考えられるGene Xを同定した.本遺伝子の同定は,日本人に頻繁に見られ,致死率の高いびまん性肺胞障害の原因を解明したことになる.次の段階として,本疾患の治療法開発が重要な課題になると考えられる.

公開日・更新日

公開日
2013-07-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201231005B
報告書区分
総合
研究課題名
特発性肺線維症急性増悪及び薬剤性肺障害に関与する日本人特異的遺伝素因に関する研究
課題番号
H22-難治-一般-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
萩原 弘一(埼玉医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 杉山 幸比古(自治医科大学 医学部)
  • 酒井 文和(埼玉医科大学 医学部)
  • 田口 善夫(天理よろづ相談所病院 内科)
  • 本間 栄(東邦大学 医学部)
  • 谷口 博之(公立陶生病院 内科)
  • 滝澤 始(杏林大学 医学部)
  • 瀬戸口 靖弘(東京医科大学 医学部)
  • 長谷川 好規(名古屋大学 医学部)
  • 海老名 雅仁(東北大学 医学部)
  • 吾妻 安良太(日本大学 医学部)
  • 井上 義一(近畿中央胸部疾患センター 内科)
  • 小林 国彦(埼玉医科大学 医学部)
  • 桑野 和善(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 小倉 高志(神奈川県立循環器呼吸器病センター 医学部)
  • 冲永 壮治(東北大学 医学部)
  • 西條 康夫(新潟大学 医学部)
  • 藤田 結花(旭川医療センター 内科)
  • 稲瀬 直彦(東京医科歯科大学 医学部)
  • 上甲 剛(近畿中央病院 放射線科)
  • 服部 登(広島大学 医学部)
  • 岡崎 康司(埼玉医科大学 医学部)
  • 迎 寛(産業医科大学 医学部)
  • 幸山 正(東京大学 医学部)
  • 林 龍二(富山大学 医学部)
  • 前門戸 任(宮城県立がんセンター 内科)
  • 柴田 陽光(山形大学 医学部)
  • 岸 一馬(虎ノ門病院 内科)
  • 臼井 一裕(NTT東日本関東病院 内科)
  • 千葉 弘文(札幌医科大学 医学部)
  • 原田 敏之(北海道大学 内科)
  • 今野 哲(北海道大学 医学部)
  • 永川 博康(聖隷横浜病院 内科)
  • 須谷 顕尚(島根大学 医学部)
  • 上田 哲也(大阪府済生会中津病院 内科)
  • 小暮 啓人(名古屋医療センター 医学部)
  • 石田 正之(長崎大学 医学部)
  • 森本 浩之輔(長崎大学 医学部)
  • 森 秀法(岐阜大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬剤性肺障害,特発性肺線維症急性増悪に関与する遺伝因子の解明

近年,日本人肺の脆弱性が指摘されている(Azuma A, Hagiwara K, Kudoh S. Am J Respir Crit Care Med. 177:1397, 2008).(1)薬剤性肺障害が他国(西洋や他のアジア人)より高頻度で見られ,高率に致死的な経過をたどること(Azuma and Kudo, JMAJ 50:1-7,2007:表1),(2)肺線維症を有する患者で他国より高頻度に急性増悪が起こり,高い致死率を示すと推定されること(Azuma et al. Am J Respir Crit Care Med. 177:1397,2008)が典型例である(表1).これ以外にも(3)皮膚筋炎に伴うびまん性肺胞障害(DAD)型の急性間質性肺炎は海外では非常に少ない(Kameda et al. J Rheumatol 34:1719,2005及び亀田私信).(4)肺線維症合併肺手術後の肺線維症急性増悪は海外にはあまり見られない(工藤私信)などがある.日本人は,特定の条件下で,びまん性肺胞障害(DAD)を起こしやすいようだ.
研究方法
a. サンプル採集 特発性肺線維症急性増悪および薬剤性肺障害が疑われる呼吸器疾患患者より,末梢血リンパ球を採取,DNAを分離するとともに,EBウイルスを感染させてB細胞を不死化し,再度のDNA調整に備えた
b. 臨床情報,画像情報収集
 特発性肺線維症急性増悪および薬剤性肺障害で,本研究にてDNAを採集した患者の臨床情報,画像情報を収集した.
c. エクソーム解析
 全国30の協力医療機関より,442例の患者検体(イレッサ肺障害+タルセバ肺障害49例,ザーコリ肺障害3例,ドセタキセル38例など薬剤性肺障害合計262例,特発性肺線維症急性増悪 141例など間質性肺疾患180例)を収集した.そのうち,患者データ+患者画像を279例収集して診断の確認を行った.診断確実例のうち劇症例,死亡例を中心に,ヒト全遺伝子コード領域シークエンス解析(エキソーム解析)を98名(イレッサ肺障害+タルセバ肺障害36名,特発性肺線維症急性増悪45名,ザーコリ肺障害2名,ドセタキセル肺障害15名)に対して施行した.対照として,コーカシアン(53名),中国漢人(68名),日本人(70名)エクソームfastqデータを,1000人ゲノムプロジェクトのデータを収集しているsequence read archiveデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sra)より取得した.全てのデータは,CLC Genomics Workbench(CLC bio)にてヒトゲノム標準配列(hg19)にmappingした.各患者で,90%以上のexon領域が10回以上読まれていることを確認したのち, Probablistic variant detectionアルゴリズムにて,ヒト標準配列と異なる塩基配列(以下,変異と記す)を取得した.
結果と考察
薬剤性肺障害,特発性肺線維症急性増悪の原因と考えられるGene X(雑誌発表前なので遺伝子名は公表できない)を同定した.年間数千名の死亡原因となっていると想定される遺伝子であるため,厚生労働省に健康危険情報として報告.さらに特許申請を行った.
結論
薬剤性肺障害,特発性肺線維症急性増悪の原因と考えられるGene Xを同定した.本遺伝子の同定は,日本人に頻繁に見られ,致死率の高いびまん性肺胞障害の原因を解明したことになる.次の段階として,本疾患の治療法開発が重要な課題になると考えられる.

公開日・更新日

公開日
2013-07-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201231005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
日本人に見られる薬剤性肺障害,特発性肺線維症急性増悪の原因遺伝子を同定したことは,極めて大きな成果であり,これらの疾患の治療法の開発が進むものと思われる.
臨床的観点からの成果
本遺伝子は,年間数千名の日本人の死亡原因になっていると考えられる.本遺伝子関連の死者を今後どのようにして減少させていくかは,臨床的に大きな問題と考えられる.
ガイドライン等の開発
その他行政的観点からの成果
その他のインパクト

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
1件
現在未公開なため,特許の名称は記載できない
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
致死性びまん性肺胞障害の原因となるMUC4遺伝子多型
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2013-41305
発明者名: 萩原弘一,宮澤仁志,椎原淳,田中知明,井上慶明
権利者名: 萩原弘一,宮澤仁志,椎原淳,田中知明,井上慶明
出願年月日: 20130301
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
2016-07-19

収支報告書

文献番号
201231005Z