肝炎に関する全国規模のデータベースを用いた肝炎治療の評価及び肝炎医療の水準の向上に資する研究

文献情報

文献番号
201227027A
報告書区分
総括
研究課題名
肝炎に関する全国規模のデータベースを用いた肝炎治療の評価及び肝炎医療の水準の向上に資する研究
課題番号
H24-肝炎-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
正木 尚彦(独立行政法人国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 泉 並木(武蔵野赤十字病院 消化器科)
  • 八橋 弘(国立病院機構長崎医療センター 臨床研究センター)
  • 新保 卓郎(国立国際医療研究センター 国際臨床研究センター医療情報解析研究部)
  • 高橋 祥一(広島大学病院消化器・代謝内科)
  • 河田 則文(大阪市立大学大学院医学研究科 肝胆膵病態内科学)
  • 高後 裕(旭川医科大学病院 消化器病態学・腫瘍・血液病態学)
  • 島上 哲朗(金沢大学附属病院 消化器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
29,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成20年4月から全国で展開されているB型・C型肝疾患のインターフェロン治療に対する医療費助成事業をより効率的ならしめるために、全国の自治体肝炎対策部署から手上げ方式による研究参加を募り、モデル肝疾患の一つとして、わが国でインターフェロン治療を受けているB型・C型肝疾患患者の年齢、性別、肝病変進行度、ウイルス型、ウイルス量、副作用の出現状況、および最終的治療効果等に関する臨床情報の収集を平成21年度から開始した。平成24年度からの新規研究班では先行研究で明らかとなった患者の受療状況の地域差に焦点をあて、その原因解明、ならびに地域特性を勘案した肝炎総合対策の推進を目指すことを主たる研究目的とした。
研究方法
先行研究で構築した肝炎情報センターと自治体肝炎対策部署とのネットワークを活用し、患者性別、年齢、インターフェロン治療期間、初回治療・再治療の区別、診断名(肝組織進展度)、使用薬剤、治療開始時・治療終了時・効果判定時におけるB型肝炎ウイルスマーカーないしC型肝炎ウイルスマーカー、血液検査値、ウイルス学的判定(著効、再燃、無効の区別)、インターフェロン治療状況、副作用等の詳細、患者の居住地(都道府県名、地方圏)に関する臨床情報を収集・解析した。インターフェロン治療に関する各都道府県別の実態を年度毎に明らかにするとともに、初年度は全国を9ブロックに分けた地方圏別の解析を行った。さらに、地域差に関する重点的検討として、大都市圏(東京、大阪)、地方圏(長崎、石川、広島、北海道)の6自治体を対象として、インターフェロン受療状況に関する詳細な調査を開始した。
結果と考察
平成24年11月現在、36道府県から13,062人が登録されており、うち98.4%を占めるC型肝疾患患者を主な解析対象とした。データクリーニングを行った11,228人におけるITT解析では、初回治療例、再治療例ともに満足すべき著効率を上げており、標準的治療が均てん化されていることが確認された。しかし、患者の受療状況、すなわち、患者年齢の中央値、65歳以上の高齢者比率、インターフェロン再治療率、および、治療完遂率などの指標に関して、少なからず地域差の存在することが判明した。さらに、全国を9ブロックに分けた地方圏別解析でも同様の結果を得ている。すなわち、年齢中央値には58.3~61.5歳と有意差があり(高齢者比率の全国平均30.7%、最高は北陸36.3%、最低は関東23.8%)、再治療比率、HCV遺伝子型の分布も同様に地方圏差が認められた。さらに、ペグインターフェロン・リバビリン併用療法を受けた1型・高ウイルス量患者におけるウイルス学的効果には地方圏差はなかったが(p=0.096, n=6,863)、投与完遂率には地方圏差を認めた(p=0.012, n=6,854)。多変量解析を用いてペグインターフェロン・リバビリン併用療法の投与中止に関与する因子の抽出を試みたところ、高齢者(p<0.001)、肝硬変(p<0.001)、開始時血小板数低値(p<0.001)、1型(p<0.001)、高ウイルス量(p=0.019)に加えて、治療開始年(p<0.001)、および、地方圏差(p<0.001)が選択された。治療開始年が2008年以降で投与完遂率が漸減していたが、これはresponse-guided therapyの浸透に因るものと考えられた。尚、地方圏差についての検討は途中経過ではあるものの、九州と比較して、北海道・東北では投与中止が多く(p=0.001)、東海では少なく(p=0.014)、関東では少ない傾向(p=0.095)を認めた。
結論
C型慢性肝疾患に対するインターフェロン治療効果に関するデータベース構築はほぼ軌道に乗っており、ほぼ満足すべき成績を全国的に上げていることが確認された。しかし、患者の受療状況には少なからず地域差、地方圏差の存在することが明らかになっており、その原因を明らかにすることで、地域特性を勘案した肝炎総合対策の推進が可能になる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201227027Z