ヒトiPS 細胞由来分化誘導肝細胞を利用した新規毒性評価系の開発

文献情報

文献番号
201208024A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒトiPS 細胞由来分化誘導肝細胞を利用した新規毒性評価系の開発
課題番号
H23-創薬総合-指定-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
水口 裕之(独立行政法人医薬基盤研究所 創薬基盤研究部 幹細胞制御プロジェクト)
研究分担者(所属機関)
  • 梅澤 明弘(独立行政法人国立成育医療研究センター 生殖・細胞医療研究部)
  • 川端 健二(独立行政法人医薬基盤研究所 創薬基盤研究部 幹細胞制御プロジェクト)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒトiPS細胞は再生医療だけではなく、創薬への応用も強く期待されている。なかでも、iPS細胞から分化誘導した肝細胞は、薬物の毒性評価や動態評価への応用が期待でき、産業界からの需要が最も高いものの一つである。医薬品の開発プロセスの早期に肝毒性を精度高く予測することは、創薬コスト削減・期間短縮・創薬シーズのヒット率の向上をもたらし、我が国の基幹産業のひとつである製薬産業の国際競争力向上に繋がると期待される。しかしながら、肝細胞は効率の良い分化誘導が困難であり、創薬応用の障害となっている。そこで本研究では、ヒトiPS細胞から肝細胞への高効率分化誘導法を開発するとともに、肝細胞へ分化しやすいiPS細胞株を見出す方法論を確立する。また、得られた肝細胞の機能を薬物代謝や排泄等種々の機能から解析し、新規毒性試験・代謝試験開発に向けた基盤技術を開発する。
研究方法
本研究は、主任研究者水口、分担研究者2名(川端、梅澤)の計3名が遂行した。当該年度においては、主に、肝分化に重要な遺伝子を導入することによるヒト iPS 細胞から肝細胞への分化誘導法の開発、分化誘導された肝細胞における薬物応答能の解析、および 500 種類のヒト iPS 細胞を用いた肝細胞への分化誘導に適した iPS 細胞株の選別、に分けて遂行した。
結果と考察
ヒトES/iPS細胞から肝細胞への分化が、ナノピラープレートを用いた三次元培養を行うことで促進できることを明らかにした。本三次元培養法と昨年度までに報告した肝関連遺伝子を適切な分化段階で導入する技術を併用することで、肝細胞機能のさらなる向上が認められること、また感度良く肝毒性化合物の毒性を検出できることを実証した。肝分化指向性を有したヒト iPS 細胞の選別に関し、バイオインフォマティクス的手法を用いた包括的な解析を行い、再現性のあるスクリーニング手法の確立に着手した。
結論
ヒトiPS細胞から肝細胞への高効率分化誘導法を開発し、三次元培養技術と併用することで、肝細胞機能の向上が認められ、感度良く肝毒性化合物の毒性を検出できる基盤技術の開発に成功した。

公開日・更新日

公開日
2013-09-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201208024B
報告書区分
総合
研究課題名
ヒトiPS 細胞由来分化誘導肝細胞を利用した新規毒性評価系の開発
課題番号
H23-創薬総合-指定-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
水口 裕之(独立行政法人医薬基盤研究所 創薬基盤研究部 幹細胞制御プロジェクト)
研究分担者(所属機関)
  • 梅澤 明弘(独立行政法人国立成育医療研究センター 生殖・細胞医療研究部 )
  • 川端 健二(独立行政法人医薬基盤研究所 創薬基盤研究部 幹細胞制御プロジェクト )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒトiPS細胞は再生医療だけではなく、創薬への応用も強く期待されている。なかでも、iPS細胞から分化誘導した肝細胞は、薬物の毒性評価や動態評価への応用が期待でき、産業界からの需要が最も高いものの一つである。医薬品の開発プロセスの早期に肝毒性を精度高く予測することは、創薬コスト削減・期間短縮・創薬シーズのヒット率の向上をもたらし、我が国の基幹産業のひとつである製薬産業の国際競争力向上に繋がると期待される。しかしながら、肝細胞は効率の良い分化誘導が困難であり、創薬応用の障害となっている。そこで本研究では、ヒトiPS細胞から肝細胞への高効率分化誘導法を開発し、肝細胞へ分化しやすいiPS細胞株を見出す方法論を確立する。また、得られた肝細胞の機能を薬物代謝や排泄等種々の機能から解析し、新規毒性試験・代謝試験開発に向けた基盤技術を開発する。
研究方法
本研究は、主任研究者水口、分担研究者2名(川端、梅澤)の計3名が遂行した。本研究においては、主に、肝分化に重要な遺伝子を導入することによるヒト iPS 細胞から肝細胞への分化誘導法の開発、分化誘導された肝細胞における薬物応答能の解析、および 500 種類のヒト iPS 細胞を用いた肝細胞への分化誘導に適した iPS 細胞株の選別、に分けて遂行した。
結果と考察
肝分化に重要な転写因子である FOXA2とHNF1α遺伝子を導入して作製された分化誘導肝細胞は、ヒト初代培養肝細胞と同程度の肝関連遺伝子(シトクロムP450酵素等)の発現が確認された。ヒトES/iPS細胞から肝細胞への分化が、ナノピラープレートを用いた三次元培養を行うことで、さらに促進できることを明らかにした。分化誘導肝細胞について、シトクロムP450酵素などで代謝される薬物の代謝プロファイルを調べたところ、その薬物代謝能はヒト初代培養肝細胞より低いものの、いずれの薬物に対しても代謝能を有していることが確認された。さらに、分化誘導肝細胞は肝毒性を示す薬剤に対してヒト初代培養肝細胞と同様に細胞毒性を呈した。ナノピラープレートを用いた三次元培養法と肝関連遺伝子を適切な分化段階で導入する分化誘導技術を併用することで、感度良く肝毒性化合物の毒性を検出できることを実証した。また、肝分化指向性を有したヒト iPS 細胞の選別に関し、バイオインフォマティクス的手法を用いた包括的な解析を行い、再現性のあるスクリーニング手法の確立に着手した。
結論
ヒトiPS細胞から肝細胞への高効率分化誘導法を開発した。本細胞は、シトクロムP450酵素等で代謝される薬物に対して代謝能を有しており、感度良く肝毒性化合物の毒性を検出できることを実証した。本分化誘導肝細胞は、新規毒性試験・代謝試験開発に向けた極めて重要な基盤技術になると期待された。

公開日・更新日

公開日
2013-09-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-11-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201208024C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ヒトiPS細胞から成熟肝細胞を創出する技術開発、および、ヒトiPS細胞由来分化誘導肝細胞を利用した肝毒性評価系の確立について目的を達成でき、特許出願を行い、Journal of Hepatology、Biomaterials等の雑誌に掲載された。この結果は、in vitro薬物毒性評価系に応用可能な細胞を作製するための基盤技術となることが期待される。肝細胞に分化しやすいiPS細胞株のスクリーニング法の開発については、バイオインフォマティクス的手法を用いた包括的な解析を行った。
臨床的観点からの成果
ヒトiPS細胞由来分化誘導肝細胞を用いた新規薬物毒性評価系構築研究を実施することにより、ヒト初代培養肝細胞や株化肝細胞では不可能な簡便かつ形質が安定した新規細胞評価系の基盤が整備され、薬物毒性の予測精度の向上および非臨床データのヒトへの外挿性向上が期待される。また、使用するヒトiPS細胞の由来や分化誘導方法を最適化することで、個人差や人種差を反映する肝毒性評価系の構築へ応用可能なヒトiPS細胞由来分化誘導肝細胞の創出が可能となり、より正確な肝毒性予測が可能となることが期待される。
ガイドライン等の開発
本研究で確立した評価系は、将来的には研究代表者が統括するスーパー特区(先端医療開発特区)研究「ヒトiPS細胞を用いた新規in vitro 毒性評価系の構築」を活用して、新薬承認申請のガイドライン(案)に反映することを目指しており、世界に先立ち日本発の国際規制基準が提案されるだけでなく、臨床試験へのよりスムーズな移行、臨床試験の簡素化がなされると期待される。これらは合理的な医薬品審査へも寄与し、もって国民の健康の増進に資することにもなると期待される。
その他行政的観点からの成果
ヒトiPS細胞は再生医療だけではなく、創薬への応用も強く期待されている。なかでも、iPS細胞から分化誘導した肝細胞は、薬物の毒性評価や動態評価への応用が期待でき、産業界からの需要が最も高いものの一つである。医薬品の開発プロセスの早期に肝毒性を精度高く予測することは、創薬コスト削減・期間短縮・創薬シーズのヒット率の向上をもたらし、我が国の基幹産業のひとつである製薬産業の国際競争力向上に繋がると期待される。
その他のインパクト
ヒト iPS 細胞から肝細胞への効率の良い分化誘導法の開発に成功し、2012年5月にリプロセル社から世界初のヒトiPS細胞由来分化誘導肝細胞の製品化に成功した(出願特許をリプロセル社に技術移転)。この成果は、2011年12月15日の朝日新聞(iPSで肝細胞発売へ)や2012年1月25日のJapan Medicine MONTHLY(iPS細胞由来の肝細胞で世界初の製品化)等で取り上げられた。また本研究により、第10回産学官連携功労者表彰(厚生労働大臣賞)(平成24年)を受賞した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
23件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
7件
学会発表(国内学会)
16件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
幹細胞から肝細胞への分化誘導方法
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2012-128872号
発明者名: 水口裕之、川端健二、高山和雄
権利者名: 独立行政法人 医薬基盤研究所
出願年月日: 20120606

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Takayama K, Inamura M, Kawabata K et al.
Generation of metabolically functioning hepatocytes from human pluripotent stem cells by FOXA2 and HNF1α transduction
J Hepatol , 57 (3) , 628-636  (2012)
10.1016/j.jhep.2012.04.038
原著論文2
Nagamoto Y, Tashiro K, Takayama K et al.
The promotion of hepatic maturation of human pluripotent stem cells in 3D co-culture using type I collagen and Swiss 3T3 cell sheets
Biomaterials , 33 (18) , 4526-4534  (2012)
10.1016/j.biomaterials.2012.03.011
原著論文3
Takayama K, Kawabata K, Nagamoto Y et al.
3D spheroid culture of hESC/hiPSC-derived hepatocyte-like cells for drug toxicity testing
Biomaterials , 34 (7) , 1781-1789  (2012)
10.1016/j.biomaterials.2012.11.029
原著論文4
Takayama K, Inamura M, Kawabata K et al.
Efficient generation of functional hepatocytes from human embryonic stem cells and induced pluripotent stem cells by HNF4α transduction
Mol Ther , 20 (1) , 127-137  (2012)
10.1038/mt.2011.234
原著論文5
Takayama K, Inamura M, Kawabata K et al.
Efficient and directive generation of two distinct endoderm lineages from human ESCs and iPSCs by differentiation stage-specific SOX17 transduction
PLoS One , 6 (7) , e21780-  (2011)
10.1371/journal.pone.0021780
原著論文6
Yoshida T, Takayama K, Kondoh M et al.
Use of human hepatocyte-like cells derived from induced pluripotent stem cells as a model for hepatocytes in hepatitis C virus infection
Biochem Biophys Res Commun , 416 (1-2) , 119-124  (2011)
10.1016/j.bbrc.2011.11.007
原著論文7
Ishii R, Kami D, Toyoda M et al.
Placenta to cartilage: direct conversion of human placenta to chondrocytes with transformation by defined factors
Mol Biol Cell , 23 (18) , 3511-3521  (2012)
10.1091/mbc.E11-10-0869
原著論文8
Nishio M, Yoneshiro T, Nakahara M et al.
Production of functional classical brown adipocytes from human pluripotent stem cells using specific hemopoietin cocktail without gene transfer
Cell Metab , 16 (3) , 394-406  (2012)
10.1016/j.cmet.2012.08.001
原著論文9
Takezawa Y, Yoshida K, Miyado K et al.
β-catenin is a molecular switch that regulates transition of cell-cell adhesion to fusion
Sci Rep , 1 (68)  (2011)
10.1038/srep00068
原著論文10
Nakamura A, Miyado K, Takezawa Y et al.
Innate immune system still works at diapause, a physiological state of dormancy in insects
Biochem Biophys Res Commun , 410 (2) , 351-357  (2011)
10.1016/j.bbrc.2011.06.015
原著論文11
Nishino K, Toyoda M, Yamazaki-Inoue M et al.
DNA methylation dynamics in human induced pluripotent stem cells over time
PLoS Genet , 7 (5) , e1002085-  (2011)
10.1371/journal.pgen.1002085
原著論文12
Sato B, Katagiri YU, Miyado K et al.
Lipid rafts enriched in monosialylGb5Cer carrying the stage-specific embryonic antigen-4 epitope are involved in development of mouse preimplantation embryos at cleavage stage
BMC Dev Biol , 11 (22)  (2011)
10.1186/1471-213X-11-22

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
2017-06-20

収支報告書

文献番号
201208024Z