労働者のメンタルヘルス不調の第一次予防の浸透手法に関する調査研究

文献情報

文献番号
201130001A
報告書区分
総括
研究課題名
労働者のメンタルヘルス不調の第一次予防の浸透手法に関する調査研究
課題番号
H21-労働・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
川上 憲人(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 下光輝一(東京医科大学)
  • 吉川 徹((財)労働科学研究所 研究部)
  • 原谷隆史((独)労働安全衛生総合研究所)
  • 堤 明純(北里大学 医学部)
  • 島津明人(東京大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
5,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、労働者のメンタルヘルス不調の第一次予防対策について科学的根拠に基づく(EBM)ガイドラインを作成し、対策の浸透ツールとして、職業性ストレス簡易調査票および仕事のストレス判定図を拡張した新しい職業性ストレス調査票を開発・標準化し、労使、産業保健関係者によるステークホルダー会議により対策の推進枠組みを確立し、海外の推進施策を収集・整理することである。
研究方法
1.労働者個人向けストレス対策、管理監督者教育、および職場環境等の評価と改善の3つの対策についてEBMガイドラインを修正、完成し、これに対応したマニュアルを作成した。これらの対策の費用便益分析を行った。2.新職業性ストレス簡易調査票を完成し、これを用いて複数の事業場で試行を行い、部署向けのフィードバック様式例を作成した。3.産業保健研究教育機関、産業保健専門職、経営団体、労働組合等の代表からなるステークホルダー会議を継続し成果をとりまとめた。事業場への意見調査を実施した。4.英国健康安全省(HSE)のマネジメントスタンダードについて情報収集した。
結果と考察
1.労働者個人向けストレス対策、管理監督者教育、職場環境等の評価と改善の3つの対策について科学的根拠に基づくガイドラインを完成し、マニュアルを作成した。労働者個人向けストレス対策および職場環境等の評価と改善では費用に対する便益の比が2?3と高かった。
2.仕事の負担、作業・部署・事業場レベル資源、アウトカムからなる調査票を完成した。また推奨尺度セットと短縮版を作成した。全国調査から標準値を求めた。企業で試行しその有用性を確認した。
3.ステークホルダー会議から企業の自主改善活動のより、「健康いきいき職場づくり」の重要性が合意された。「健康いきいき職場モデル」を開発し、新職業性ストレス簡易調査票により健康いきいき職場の測定が可能になった。推進方策を整理した。事業場調査では9割以上が健康いきいき職場の考え方に賛成と回答した。
4.海外動向:英国HSEのマネジメントスタンダードを紹介した。
結論
労働者個人向けストレス対策、管理監督者教育、職場環境等の評価と改善の3つについて、科学的根拠に基づくガイドライン、マニュアルを完成した。本研究ではわが国の職場のメンタルヘルス不調の第一次予防の新しい枠組みとして、健康いきいき職場づくりを提案した。今後新しい職場のメンタルヘルスの枠組みとして広く普及する可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2012-06-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-02-04
更新日
-

文献情報

文献番号
201130001B
報告書区分
総合
研究課題名
労働者のメンタルヘルス不調の第一次予防の浸透手法に関する調査研究
課題番号
H21-労働・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
川上 憲人(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 下光 輝一(東京医科大学)
  • 堤 明純(北里大学 医学部)
  • 原谷 隆史((独)労働安全衛生総合研究所)
  • 吉川 徹((財)労働科学研究所)
  • 島津 明人(東京大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、労働者のメンタルヘルス不調の第一次予防対策について科学的根拠に基づく(EBM)ガイドラインを作成し、新しい職業性ストレス調査票を開発・標準化し、労使、産業保健関係者によるステークホルダー会議により対策の推進枠組みを確立し、海外の推進施策を収集・整理することである。
研究方法
1.管理監督者教育、労働者個人向けストレス対策、および職場環境等の評価と改善について包括的・体系的な文献レビューを行い、研究者およびステークホルダー会議との対話によりEBMガイドラインおよびマニュアルを作成した。2.新職業性ストレス簡易調査票の作成のために、現ユーザーに対する調査、海外の主要調査票を参考にして尺度・項目候補の抽出を行い、予備調査により候補尺度の信頼性・妥当性を検討した。標準化のために全国の代表サンプルとなる地域住民5千人を抽出して郵送法調査を実施した。試行を行い調査票の実用性、有用性を検討した。3.ステークホルダー会議を3年間に合計5回開催し討議した。また事業場への意見調査を実施した。4.欧米の職場のメンタルヘルスの第一次予防の先進事例について情報収集した。
結果と考察
1.3つの対策が効果的であることが確認され、科学的根拠に基づくガイドライン、実践例を含むマニュアルを作成した。2.新職業性ストレス簡易調査票の候補尺度は内的整合性による信頼性が高く因子的妥当性が確認できた。調査票を完成し全国標準値を求めた。また推奨尺度セット、短縮版を作成した。3.ステークホルダー会議からは、「健康いきいき職場づくり」に合意が得られた。「健康いきいき職場モデル」を作成し、その推進方策を整理した。事業場の意見調査では9割以上がこの考え方に賛成と回答した。4.デンマークの職場環境査察制度、心理社会的リスクマネジメント欧州枠組み(PRIMA-EF)、英国国立医療技術評価機構(NICE)の公衆衛生ガイダンス No. 22、英国HSEのマネジメントスタンダード、米国心理学会の健康職場プログラムついて整理した。
結論
EBMガイドラインおよびマニュアルは職場のメンタルヘルス不調の第一次予防対策の普及に有用である。本研究からは新しい枠組みとして、自主改善型の活動としての「健康いきいき職場づくり」が提案された。新職業性ストレス調査票によりこのモデルに従って部署・事業場を評価できる。欧米の動向もこうした考え方と軌を一にするものであり、わが国における具体展開策を検討するうえで参考になる。

公開日・更新日

公開日
2012-06-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-02-04
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201130001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
労働者のメンタルヘルス不調の第一次予防対策について科学的根拠に基づくガイドラインを作成し、対策ツールとして新しい職業性ストレス調査票を開発・標準化し、労使、産業保健関係者によるステークホルダー会議により対策の推進枠組みを確立し、海外(欧州、米国)の推進施策を収集・整理した。
臨床的観点からの成果
職場のメンタルヘルス不調の第一次予防対策について、世界ではじめて科学的根拠に基づくガイドラインを開発した。
ガイドライン等の開発
厚生労働省労働基準局「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」報告(平成24年1月30日)に、労働者のうち、約17 人に一人(約6%)が「職場で自分
がいじめにあっている(セクハラ、パワハラ含む)」と回答し、さらに約7人に一人(約
15%)が「職場でいじめられている人がいる(セクハラ、パワハラ含む)」と回答しているとの調査結果が引用された。
その他行政的観点からの成果
本研究班で提案された「健康いきいき職場づくり」の考え方は多数の事業場から支持を受けており、今後新しい職場のメンタルヘルスの枠組みとして広く普及する可能性がある。
日本学術会議基礎医学委員会・健康・生活科学委員会合同パブリックヘルス科学分科会(提言)「これからの労働者の心の健康の保持・増進のために」(2014年9月11日)に報告書が引用された。
その他のインパクト
大阪商工会議所から依頼を受け、本研究班の成果を講演した。
本研究班の成果を活用して、2012年12月に(財)日本生産生本部と東京大学は「健康いきいき職場づくりフォーラム」を設置し、「健康いきいき職場づくり」の考え方の普及活動を行っている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
9件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
17件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shimazu A, Demerouti, E, Bakker AB, Shimada K, Kawakami N
Workaholism and well-being among Japanese dual-earner couples: A spillover-crossover perspective
Social Science & Medicine , 73 , 399-409  (2011)
原著論文2
Shimazu A, Sonnentag, S, Kubota K, Kawakami N (in press)
Validation of the Japanese version of Recovery Experience Questionnaire
Journal of Occupational Health  (2012)
原著論文3
Tsuno K, Kawakami N, Tsutsumi A, et al.
Socioeconomic determinants of bullying in the workplace: a national representative sample in Japan.
PLoS One. , 10 (3) , e0119435-  (2015)
doi: 10.1371/journal.pone.0119435.
原著論文4
Inoue A, Kawakami N, Shimomitsu T et al.
Development of a short version of the new brief job stress questionnaire
Ind Health. , 52 (6) , 535-540  (2014)
原著論文5
Inoue A, Kawakami N, Shimomitsu T et al.
Development of a short questionnaire to measure an extended set of job demands, job resources, and positive health outcomes: the new brief job stress questionnaire
Ind Health. , 52 (3) , 175-189  (2014)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
2018-05-22

収支報告書

文献番号
201130001Z