C型肝炎難治症例の病態解明と抗ウイルス治療に関する研究

文献情報

文献番号
201125005A
報告書区分
総括
研究課題名
C型肝炎難治症例の病態解明と抗ウイルス治療に関する研究
課題番号
H21-肝炎・一般-005
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
竹原 徹郎(大阪大学大学院 医学系研究科 消化器内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 泉 並木(武蔵野赤十字病院消化器科)
  • 伊藤 義人(京都府立医科大学医学系研究科消化器内科学)
  • 金子 周一(金沢大学医薬保健研究域医学系恒常性制御学)
  • 永野 浩昭(大阪大学大学院医学系研究科消化器外科学)
  • 坂本 直哉(北海道大学大学院医学研究科内科学講座消化器内科学分野)
  • 芥田 憲夫(虎の門病院肝臓センター)
  • 野村 秀幸(国家公務員共済組合連合会新小倉病院肝臓病センター)
  • 林 紀夫(独立行政法人労働者健康福祉機構関西労災病院)
  • 平松 直樹(大阪大学大学院医学系研究科消化器内科学)
  • 三田 英治(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター臨床研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
33,618,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
C型慢性肝炎に対するPEG-IFN/RBV併用治療の著効率は1型高ウイルス量症例で40-50%、その他の症例で70-80%にとどまっている。PEG-IFN/RBV治療は現在までに16万人以上に施行されたと推計されるが、その半数の8万人以上が非著効例として、HCV感染からの離脱に至っていない。PEG-IFN/RBV治療無効例は現在の標準治療であるプロテアーゼ阻害剤を加えた3剤併用治療に対しても約3分の2の症例で抵抗性を示す。
研究方法
PEG-IFN/RBV治療非奏功例に対する再治療成績を解析する。PEG-IFN/RBV治療非奏功例の免疫分子病態を基礎的に解析する。
結果と考察
PEG-IFN/RBV併用治療により著効が得られなかった症例に対する再治療効果はGenotype 1で48%、Genotype 2で63%であった。Genotype 1においては前治療pEVR達成例あるいは再治療時のHCV RNA量が5 log未満の症例での治療効果が良好であった。IL28B major症例ではminor症例に比し、再治療でSVR率が高い傾向がみられたが有意差はなく、また、ITPAのSNPとSVRの間には関連がみられなかった。PEG-IFN/RBV治療における難治要因としてIL28B minor allele、コアアミノ酸70番置換、肝線維化進展/血小板減少、高齢をあげることができる。難治化のメカニズムとして、コアアミノ酸置換を有するウイルスではHCVの放出が抑制され、IL-6シグナルを介してIFN抵抗性が増強した。進展した肝疾患にみられるFisher比の低下はIFNα応答性を不良にすることが示された。C型肝炎では肝疾患が進展すると血小板が減少するが、ヒト血小板は肝星細胞の活性を抑制する機能があることが示された。また、線維化進展例では脾臓でのCD4 T細胞のPD-1発現が増強し免疫を負に制御している可能性が示された。血小板減少症例に対する対策として摘脾の有効性が示唆された。移植後C型肝炎に対する対策としてステロイドフリーで患者管理を行い、早期から低用量IFN/RBV治療を開始することが有用であることが示唆された。
結論
PEG-IFN/RBVの再治療効果に間連する臨床因子を明らかにし、C型肝炎難治症例の免疫分子病態の一端を解明した。

公開日・更新日

公開日
2012-06-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-01-17
更新日
-

文献情報

文献番号
201125005B
報告書区分
総合
研究課題名
C型肝炎難治症例の病態解明と抗ウイルス治療に関する研究
課題番号
H21-肝炎・一般-005
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
竹原 徹郎(大阪大学大学院 医学系研究科 消化器内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 泉 並木(武蔵野赤十字病院消化器科)
  • 伊藤 義人(京都府立医科大学医学系研究科消化器内科学)
  • 金子 周一(金沢大学医薬保健研究域医学系恒常性制御学)
  • 永野 浩昭(大阪大学大学院医学系研究科消化器外科学)
  • 坂本 直哉(北海道大学大学院医学研究科内科学講座消化器内科学分野)
  • 芥田 憲夫(虎の門病院肝臓センター)
  • 野村 秀幸(国家公務員共済組合連合会新小倉病院肝臓病センター)
  • 林 紀夫(独立行政法人労働者健康福祉機構関西労災病院)
  • 平松 直樹(大阪大学大学院医学系研究科消化器内科学)
  • 三田 英治(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター臨床研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
C型慢性肝炎に対するPEG-IFN/RBV併用治療の著効率は1型高ウイルス量症例で40-50%、その他の症例で70-80%にとどまっている。PEG-IFN/RBV治療は現在までに16万人以上に施行されたと推計されるが、その半数の8万人以上が非著効例として、HCV感染からの離脱に至っていない。PEG-IFN/RBV治療無効例は現在の標準治療であるプロテアーゼ阻害剤を加えた3剤併用治療に対しても約3分の2の症例で抵抗性を示す。
研究方法
PEG-IFN/RBV治療非奏功例に対する再治療成績を解析する。PEG-IFN/RBV治療非奏功例の免疫分子病態を基礎的に解析する。
結果と考察
PEG-IFN/RBV治療非奏効例に対する再治療効果はGenotype 1型での著効率は48%、Genotype 2型での著効率は63%であった。Genotype 1型においては、初回治療p-EVR達成例あるいは再治療開始時低ウイルス量例(< 5 Log IU/ml)では著効が得られやすく、再治療の良い適応であると考えられた。また、初回治療再燃例での再治療においては、初回治療に比しRBV投与量が増加し、投与期間が延長した症例では著効が得られやすいことが示された。再治療においては、たとえEVRが達成されても、48週投与に比し72週投与のほうが著効率が優れていた。C型肝炎の抗ウイルス治療抵抗性にはIL28B、コア70番アミノ酸置換、肝疾患の進展、血小板減少等が関与している。コア変異ウイルスはERストレス、IL-6産生亢進、SOCS3の誘導を介してIFNシグナルを阻害することが示された。また、肝線維化の進展は栄養学的な因子を介して、Foxo3Aの活性化、SOCS3の誘導、mTORシグナルの低下を起こすことにより、IFNシグナルを低下させることが明らかになった。また、肝硬変に伴う脾腫はPD-1/PDL1を介して疲弊化T細胞を誘導し、免疫応答の低下に関与することが示された。さらに、血小板低下そのものが肝臓の線維化を促進することにより、病態進行の増悪因子になっていることも示された。
結論
PEG-IFN/RBVの再治療効果に間連する臨床因子を明らかにした。C型肝炎難治症例の免疫分子病態の一端を解明した。

公開日・更新日

公開日
2012-06-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-01-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201125005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
C型肝炎の抗ウイルス治療抵抗性に関与するコア70番アミノ酸置換、肝疾患の進展、血小板減少の病態生理学的な意義を解明した。コア変異ウイルスはERストレス、IL-6産生亢進・SOCS3の誘導を介して、肝線維化の進展に伴う栄養学的な変調はFoxo3Aの活性化・SOCS3の誘導・mTORシグナルの低下を介して、IFNシグナルを低下させた。肝硬変に伴う脾腫はPD-1/PDL1を介して、疲弊化T細胞を誘導した。血小板低下はHGF/cMet経路を介して肝臓の線維化を促進した。
臨床的観点からの成果
日本におけるPEG-IFN/RBV再治療成績の実態を明らかにした。PEG-IFN/RBV治療非奏効例に対する再治療効果はGenotype 1型での著効率は48%、Genotype 2型での著効率は63%であった。Genotype 1型においては、初回治療p-EVR達成例あるいは再治療開始時低ウイルス量例(< 5 Log IU/ml)では著効が得られやすく、再治療の良い適応であると考えられた。再治療においては、たとえEVRが達成されても、48週投与に比し72週投与のほうが著効率が優れていた。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
日本におけるPEG-IFN/RBV再治療の医療費助成に伴う指針を支持するエビデンスが得られた。
その他のインパクト
該当なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
201件
その他論文(和文)
9件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
38件
学会発表(国際学会等)
60件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hiramtsu N,et al
Efficacy of pegylated interferon plus ribavirin combination therapy for hepatitis C patients with normal ALT levels: a matched case-control study.
J Gastroenterol , 46 (11) , 1335-1343  (2011)
原著論文2
Oze T,et al
Indications and limitations for aged patients with chronic hepatitis C in pegylated interferon alfa-2b plus ribavirin combination therapy.
J Hepatol , 54 (4) , 604-611  (2011)
原著論文3
Miyagi T,et al
Differential alteration of CD56(bright) and CD56 (dim) natural killer cells in frequency, phenotype, and cytokine response in chronic hepatitis C virus infection.
J Gastroenterol , 46 (8) , 1020-1030  (2011)
原著論文4
Oze T,et al
The efficacy of extended treatment with pegylated interferon plus ribavirin in patients with HCV genotype 1 and slow virologic response in Japan.
J Gastroenterol , 46 (7) , 944-952  (2011)
原著論文5
Oze T,et al
A multicenter survey of re-treatment with pegylated interferon plus ribavirin combination therapy for patients with chronic hepatitis C in Japan.
Hepatol Res , 43 (1) , 35-43  (2013)
原著論文6
Inoue Y,et al
Factors affecting efficacy in patients with genotype 2 chronic hepatitis C treated by pegylated interferon alpha-2b and ribavirin: reducing drug doses has no impact on rapid and sustained virological responses.
J Viral Hepat , 17 (5) , 336-344  (2010)
原著論文7
Kodama T,et al
Thrombocytopenia exacerbates cholestasis-induced liver fibrosis in mice.
Gastroenterology , 138 (7) , 2487-2498  (2010)
原著論文8
Oze T,et al
Peginterferon alfa-2b affects early virologic response dose-dependently in patients with chronic hepatitis C genotype 1 during treatment with pegylated interferon alfa-2b plus ribavirin.
J Viral Hepat. , 16 (8) , 578-585  (2009)
原著論文9
Hiramatsu N,et al
Ribavirin dose reduction raises relapse rate dose-dependently in genotype 1 patients with hepatitis C responding to pegylated interferon alfa-2b plus ribavirin.
J Viral Hepat. , 16 (8) , 586-594  (2009)
原著論文10
Kurosaki M,et al
Pre-treatment prediction of response to pegylated-interferon plus ribavirin for chronic hepatitis C using genetic polymorphism in IL28B and viral factors.
J Hepatol , 54 (3) , 439-448  (2011)
原著論文11
Kurosaki M,et al
A predictive model of response to peginterferon ribavirin in chronic hepatitis C using classification and regression tree analysis.
Hepatol Res , 40 (4) , 251-260  (2010)
原著論文12
Itoh Y,et al
A simple and convenient formula to predict the response to peginterferon alpha2b and ribavirin combination therapy in genotype 1 chronic hepatitis C patients with high viral load
Hepatol Res , 41 (2) , 126-132  (2011)
原著論文13
Yasui K,et al
Steatosis and hepatic expression of genes regulating lipid metabolism in Japanese patients infected with hepatitis C virus
J Gastroenterol , 45 (1) , 95-104  (2010)
原著論文14
Honda M,et al
Hepatic ISG expression is associated with genetic variation in interleukin 28B and the outcome of IFN therapy for chronic hepatitis C.
Gastroenterology , 139 (2) , 499-509  (2010)
原著論文15
Asahina Y,et al
Association of gene expression involving innate immunity and genetic variation in IL28B with antiviral response.
Hepatology , 55 (1) , 20-29  (2011)
原著論文16
Funaoka Y,et al
Analysis of interferon signaling by infectious hepatitis C virus clones with substitutions of core amino acids 70 and 91.
J Virol , 85 (12) , 5986-5994  (2011)
原著論文17
Suzuki F,et al
Influence of ITPA polymorphisms on decreases of hemoglobin during treatment with pegylated interferon, ribavirin, and telaprevir.
Hepatology , 53 (2) , 415-421  (2011)
原著論文18
Akuta N,et al
Amino acid substitutions in hepatitis C virus core region and genetic variation near the interleukin 28B gene predict viral response to Telaprevir with peginterferon and ribavirin
Hepatology , 52 (2) , 421-429  (2010)
原著論文19
Akuta N,et al
A matched case-controlled study of 48 and 72 weeks of peginterferon plus ribavirin combination therapy in patients infected with HCV genotype 1b in Japan: Amino acid substitutions in HCV core region as predictor of sustained virological response
J Med Virol , 81 (3) , 452-458  (2009)
原著論文20
Kainuma M,et al
Pegylated interferon α-2b plus ribavirin for Japanese chronic hepatitis C patients with normal alanine aminotransferase.
Hepatol Res. , 42 (1) , 33-41  (2011)

公開日・更新日

公開日
2016-05-23
更新日
2017-01-20

収支報告書

文献番号
201125005Z