文献情報
文献番号
201122019A
報告書区分
総括
研究課題名
炎症性Th17細胞を標的とする免疫性神経疾患の画期的診断・予防・治療法開発に関する研究
課題番号
H21-こころ・一般-018
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
山村 隆(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所免疫研究部)
研究分担者(所属機関)
- 三宅幸子(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所免疫研究部)
- 大木伸司(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所免疫研究部)
- 荒浪利昌(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所免疫研究部)
- 佐藤準一(明治薬科大学薬学部バイオインフォマテイクス)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
18,020,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
Th17細胞は炎症性サイトカインIL-17を産生する新しいリンパ球集団で、組織破壊的炎症を惹起する。本研究の目的は、免疫性神経疾患におけるTh17細胞の役割を明確にし、同細胞を標的とする診断・予防・治療法を開発することにある。これまでに核内転写因子NR4A2がTh17細胞特異的に発現することを明らかにし、同分子がTh17細胞のサイトカイン産生に必須であることを示した。本年度は新たに作製したCD4陽性T細胞特異的NR4A2欠損マウスを用いて詳細な検討を進める。
研究方法
1) EAEの誘導には完全フロイントアジュバントと混和したMOG35-55ペプチドをマウスの皮下に接種した。
2) 野生型マウスおよびCD4陽性特異的NR4A2欠損(NR4A2c KO)マウス由来のT細胞を用いて、IL-6 + TGF-βあるいはIL-1+IL-6+IL-23存在下での培養によりTh17細胞を誘導した。
3)MOG36-55ペプチド特異的T細胞応答の解析には、MOG特異的T細胞受容体トランスジェニックマウス(2D2)を用いた。
2) 野生型マウスおよびCD4陽性特異的NR4A2欠損(NR4A2c KO)マウス由来のT細胞を用いて、IL-6 + TGF-βあるいはIL-1+IL-6+IL-23存在下での培養によりTh17細胞を誘導した。
3)MOG36-55ペプチド特異的T細胞応答の解析には、MOG特異的T細胞受容体トランスジェニックマウス(2D2)を用いた。
結果と考察
1) NR4A2cKOマウスでは、EAE発症の有意な遅延が認められ、NR4A2がEAE初期相に関与することが示唆された。
2) NR4A2欠損マウスと対照マウスのリンパ球からTh1細胞(IL-12)を分化させたところ、抗原特異的IFN-γ産生は、NR4A2欠損により変化しなかった。一方、TGF-β存在条件下(IL-6+TGF-β)で分化させたTh17細胞の抗原特異的IL-17産生は、NR4A2欠損T細胞で有意に低下していた。
前年度までsiRNAによりTh17細胞機能におけるNR4A2分子の役割を解明してきたが、KOマウスの結果もNR4A2のTh17細胞サイトカイン産生における役割を支持し、同分子を標的とする治療の可能性が期待される。
2) NR4A2欠損マウスと対照マウスのリンパ球からTh1細胞(IL-12)を分化させたところ、抗原特異的IFN-γ産生は、NR4A2欠損により変化しなかった。一方、TGF-β存在条件下(IL-6+TGF-β)で分化させたTh17細胞の抗原特異的IL-17産生は、NR4A2欠損T細胞で有意に低下していた。
前年度までsiRNAによりTh17細胞機能におけるNR4A2分子の役割を解明してきたが、KOマウスの結果もNR4A2のTh17細胞サイトカイン産生における役割を支持し、同分子を標的とする治療の可能性が期待される。
結論
NR4A2分子はTh17細胞の重要な機能分子である。今後はNR4A2を標的とする医薬をスクリーニングするとともに、患者リンパ球の解析を進めて、多発性硬化症病態におけるTh17 細胞関与の実態を明らかにする必要がある。
公開日・更新日
公開日
2012-08-10
更新日
-