歯科口腔保健の推進に関する総合的な研究

文献情報

文献番号
201105008A
報告書区分
総括
研究課題名
歯科口腔保健の推進に関する総合的な研究
課題番号
H23-特別・指定-012
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
三浦 宏子(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
  • 尾崎 哲則(日本大学 歯学部)
  • 大内 章嗣(新潟大学大学院 医歯学総合研究科)
  • 松本 勝(明海大学 歯学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
3,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
歯科口腔の推進に関する法律の制定に伴い、第12条で定められた基本的事項の早期の整備が必須である。本研究では、基本的事項の策定に資するデータ収集や分析を行った。具体的には、既存のデータや研究にて全国データの報告がほとんどなされていない「障害者等の定期歯科検診の受診状況」と「一般国民の歯科口腔保健に関する知識等の普及状況」についての実態調査を実施した。また、数値目標を設定する手法として既出統計データを用いた将来推計の活用法についても研究を進め、具体的な事例を提示した。さらに、口腔の健康に関する調査の状況を把握する一助として、今までの厚労科研での研究動向についても分析を行った。
研究方法
全国の障害児・者施設と介護老人保健での定期的歯科検診の実施状況を調べた。一般国民の歯科口腔保健の知識の取得状況の調査は、ネット調査の手法を用いて、無作為抽出した3000名からデータを得た。既出統計データを用いた将来推計の活用については、12歳児の一人平均う歯数の経年推移等を事例として分析を行った。また、最近5年間の研究動向を調べるために、厚生労働科学研究データベースを用いて分析を行った。
結果と考察
全国の障害児・者施設での定期歯科検診の実施率は66.9%、介護老人保健施設での実施率は19.2%であった。一般国民における歯科保健知識の普及調査の結果、歯科保健情報については「歯科医療機関」から入手している者が51.9%、インターネットより得ていた者が37.9%であった。基本的事項での数値目標の立案に、過去の統計データによる将来推計を用いる有用性を示す一方、最近の研究動向を調べるために、厚生労働科学研究データベースを用いて分析を行ったところ、「障害者歯科」に関する研究は4%と少なく、当該領域の更なる研究の推進が必要であると考えられた。
結論
本研究の結果、今まで全国データの報告がなかった障害児・者施設と介護老人保健施設での定期歯科検診の提供状況が明らかになった。また、一般国民の歯科知識の取得状況や各都道府県での歯科保健施策の現状や近年の歯科口腔保健の推進に寄与する研究動向も明示することができた。これらの結果と併せ、将来推計値をもとに数値目標を設定するアプローチを示すことにより、基本的事項における現状値と目標値案の作成に資する基盤データを提示した。

公開日・更新日

公開日
2012-06-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201105008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は、わが国における障害児・者施設と介護老人保健施設での定期歯科検診の実施状況を明らかにした初めての研究である。心身の障害がもたらす歯科口腔保健に関する健康格差の縮小のために、定期歯科検診体制を整備することは大きな意味を持つものであるが、本研究で得られた知見は今後の障害者歯科ならびに高齢者歯科の推進に大きく寄与するものと考えられる。特に、障害児・者施設での歯科保健活動に関しては悉皆調査として実施されており、学術的意義は大きい。
臨床的観点からの成果
患者が歯科口腔保健に関する正しい知識を有することは、適切な口腔保健行動の獲得にも寄与するばかりでなく、歯科疾患の早期発見・治療にもつながるものである。本研究の結果、約半数以上の者が歯科医療機関から知識を得ていたが、インターネットから情報を得ていた者も多く、ICTを用いた健康情報の普及啓発のあり方を検討する必要性が示された。歯科保健用語に対する知識については,知っている用語でも理解できていない用語が多く存在し,より適切な情報を伝達する必要性があることが明らかになった。
ガイドライン等の開発
第35回地域保健健康栄養部会(2012年6月20日)にて、障害者と要介護高齢者での定期的歯科検診について本研究で得られたデータが現状値として報告された。
その他行政的観点からの成果
本研究で得られた成果は、歯科口腔保健法第12条で定められている基本的事項の策定の際の基礎データとして採用された。特に、障害者等の定期歯科検診の実施状況の現状値として、本研究で報告したデータが用いられている。また、基本的事項における数値目標については、本研究で示した既出データからの将来推計値をもとに設定する方法を用いて、具体的な目標値案の提示がなされている。なお、「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」は、平成24年7月に大臣告示されている。
その他のインパクト
歯科口腔保健法に関する関心は高く、「歯科口腔保健の推進に関する法律」成立記念シンポジウムが平成24年2月11日に開催された。また、平成25年10月に開催された第72回日本公衆衛生学会では、シンポジウム「地域で口腔保健活動をどのように進めるか-歯科口腔保健法に基づくアプローチ」において、本研究で得られた学術知見を報告した。各自治体にて歯科口腔保健調査に係る調査を行う際に、本研究班で提示した調査票はプロトタイプとして活用されている。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
第72回日本公衆衛生学会(平成25年10月)のシンポジウムにて本研究にて得られた結果を発表 第63回日本口腔衛生学会(平成26年5月)にて発表
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
厚生労働省告示第四百三十八号「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
三浦 宏子
歯科口腔保健の展望
公衆衛生情報 , 42 (9) , 4-13  (2012)
原著論文2
三浦 宏子
「第2次健康日本21」と「歯科口腔保健の推進のための基本的事項」のねらいと方向性
日本歯科衛生学会雑誌 , 7 (2) , 6-14  (2013)
原著論文3
三浦 宏子
歯・口腔の健康
臨床栄養 , 122 (3) , 308-313  (2013)
原著論文4
三浦 宏子
歯科口腔保健法を基盤とする今後の地域歯科保健活動
日本歯科医療福祉学会雑誌 , 18 (1) , 1-6  (2013)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
2016-05-09

収支報告書

文献番号
201105008Z