データマイニング手法を用いた効果的なC型肝炎治療法に関する研究

文献情報

文献番号
201030006A
報告書区分
総括
研究課題名
データマイニング手法を用いた効果的なC型肝炎治療法に関する研究
課題番号
H20-肝炎・一般-006
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
泉 並木(武蔵野赤十字病院 消化器科)
研究分担者(所属機関)
  • 黒崎 雅之(武蔵野赤十字病院 消化器科)
  • 柿沼 晴(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 坂本 穣(山梨大学大学院 医学工学総合研究部)
  • 鈴木義之(虎ノ門病院 肝臓センター)
  • 松浦 健太郎(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
  • 平松 直樹(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 岩崎 学(成蹊大学理工学部 情報科学科)
  • 田守 昭博(大阪市立大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
17,851,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
C型慢性肝炎において、抗ウイルス治療を行わなかった場合の発癌リスクを解析し、早急に治療が必要な発癌リスクの高い症例の囲い込み方法について検討した。またペグインターフェロン・リバビリン併用療法において、HCV遺伝子変異を含めたウイルス側要因、宿主側要因、薬剤投与量や治療期間などの治療要因を網羅的に解析し、これらを統合的に組み入れた再燃予測アルゴリズムを確立することを目的とした。
研究方法
インターフェロン治療が非著効となり、その後5年以上経過観察した865例を対象とした。5年時点での発癌と関連する因子について、データマイニング解析を行った。外部検証コホートとして、班員施設で5年以上経過観察中の329例を用いて、再現性を検証した。
 班員施設から収集したペグインターフェロン・リバビリン併用療法施行例で、12週以内にHCV RNAが陰性化した951例を対象とし、治療終了後の再燃を目的変数としてデータマイニング解析を行ない、再燃を効率的に判別する説明変数を情報理論に基づき逐次的に探索し、判別アルゴリズムを構築した。
結果と考察
血小板数、アルブミン値、ALT値、γGTP値の組み合わせにより、5年発癌率が0%から21%までの発癌リスクを有するグループが同定された。外部コホートで検証したところ極めて良好な再現性を示した。 12週以内にHCVRNAが陰性化した症例からの再燃と関連する因子はHCVRNA陰性化時期、年齢、RBV総投与量であった。内部検証および八橋班による外部検証を行ない、良好な再現性を認めた。
簡単な一般検査の組み合わせにより、発癌リスクを同定できるモデルは、発癌抑止を視野に入れた抗ウイルス治療の検討に際して説得力のあるインフォームドコンセントとなる。RBV総投与量3g/kg以上が治癒率を向上させるための目標薬剤投与量であることを確認した。これらの情報を、一般臨床医に広く周知することにより、治療に反応しているもののSVRが得られなかった症例の治癒率を向上させられると期待する。
結論
個々の症例で、治療しなかった場合の肝発癌率を予測することは、患者が治療を受ける機会を逸しないために重要であり、患者の同意を得るために重要な根拠になる。また、ペグインターフェロン・リバビリン併用療法で、治療中に血中から消失したHCVが治療終了後に再出現する再燃の要因を分析し、再燃を抑止するために必要な総リバビリン量を具体的な目標投与量として示せた。これらのモデルを一般臨床の場で活用することにより、患者が治療選択する際に、科学的エビデンスに基いた説得力のあるインフォームドコンセントが可能となる。

公開日・更新日

公開日
2011-06-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-03-21
更新日
-

文献情報

文献番号
201030006B
報告書区分
総合
研究課題名
データマイニング手法を用いた効果的なC型肝炎治療法に関する研究
課題番号
H20-肝炎・一般-006
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
泉 並木(武蔵野赤十字病院 消化器科)
研究分担者(所属機関)
  • 黒崎 雅之(武蔵野赤十字病院 消化器科)
  • 柿沼 晴(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 坂本 穣(山梨大学大学院 医学工学総合研究部)
  • 鈴木義之(虎ノ門病院 肝臓センター)
  • 松浦 健太郎(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
  • 平松 直樹(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 岩崎 学(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 田守 昭博(大阪市立大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
治療効果予測アルゴリズムと肝発癌リスク予測アルゴリズムを構築することにより、科学的根拠に基づいて治療の必要性と治療効果を予測し、最適な治療法を選択することが可能となる。データマイニングを用いてこれらの課題を解決し、全国でC型慢性肝炎に対する標準治療を推進し、治療を均てん化することを目的とした。
研究方法
班員施設から2117例のデータを収集し、分析用データベースを構築した。データマイニング解析により、治療開始前に治療効果を予測するアルゴリズム、HCV陰性化時期に応じた治療効果予測アルゴリズム、最も頻度が高い副作用である貧血を予測するアルゴリズム、個々の症例で発癌リスクを同定するアルゴリズムを構築した。
結果と考察
年齢、血小板、AFP、GGT、性別の組み合わせにより予測著効率が22%から77%の7グループが同定された。八橋班との連携により外部検証を行うことにより、再現性、一般性が確認できた。この情報を一般臨床医に広く周知することにより、従来は治療効果が明確でなかったために治療が導入されなかった患者の治療機会増加に寄与できると期待する。遺伝子変異検査、肝生検を加味したアルゴリズムではNS5A-ISDR変異数、Core70変異、年齢、LDL-Chol、肝線維化がSVR規定因子であった。cEVRからの再燃予測モデルでは、年齢と総RBV投与量(3g/kg以上)が有意な因子であった。目標薬剤投与量を示すことは、治療を担当する医師にとって重要な治療指針となる。貧血予測モデルでは、治療前のHb、Ccr、治療開始後2週でのHb減少量が有意な予測因子であった。発癌リスク予測に重要であったのは血小板数、アルブミン、γGTP、ASTであり、5年発癌率が1%から21%のグループを同定できた。それぞれの症例での5年以内の肝発癌の予測は、適切なインターフェロン治療機会を提供するための重要な根拠になると期待される。
結論
C型慢性肝炎おけるペグインターフェロンとリバビリン併用によるウイルス排除率を個々の症例で治療前に予測できるアルゴリズムを、一般検査と専門的検査の両者で作成した。内部と外部の検証で一致率が高かったため、国内で普遍的に用いることができる。治療中の再燃予測や重篤な副作用予測のアルゴリズムを作成できたため、治療効果を改善させられる。また、個々の症例で、治療を受けなかった場合の肝発癌リスクのアルゴリズムを作成できたため、インフォームドコンセントが推進され、適切な治療を行うことによって肝発癌の低減につながると期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-06-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201030006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
C型肝炎のそれぞれの患者さんで肝癌を発生しやすい人を簡単な血液検査で見分ける方法をデータマイニング解析し、年齢、血小板数、アルブミン値によって個々の患者での発癌予測アルゴリズムを構築し論文化した。さらに、ペグインターフェロンとリバビリン治療中に貧血の副作用を合併しやすい人を見分けるアルゴリズムを作成し論文化した。また、ITPAの遺伝子多型が治療中に貧血を合併しやすさに関係することを論文化し、年齢とリバビリン量が治療後の再燃に関与することを論文発表した。
臨床的観点からの成果
C型肝炎で肝発癌しやすい人をデータマイニングのアルゴリズムを用いて判定すると、治療を急ぐか否かが判定できる。治療中の貧血の副作用に注意すべき人が判別できるため、治療中の経過観察で注意を要する患者が事前にわかる。さらにITPA遺伝子多型を調べると貧血を合併しやすい人を判別でき、さらに治療終了後の再燃には年齢とリバビリン投与量が関係することが判明したため、高齢者ではリバビリン投与量を確保することによって再燃を減らし、治癒率の向上が期待できる。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
肝癌を発症しやすい患者を同定し治療を急ぐ必要のある患者を見分けることができるため、医療連携が進むと期待される。また、副作用の予知や、再燃防止の対策がたてられるため、安全でより効果が高い治療法の啓発につながる。
その他のインパクト
国立国際医療研究センター肝炎情報センターのホームページにC型肝炎患者の肝発癌をきたしやすいアルゴリズムと、ペグインターフェロン+リバビリンによって治癒しやすさのアルゴリズムをアップロードし、全国の専門医やかかりつけ医に使用してもらい、インフォームドコンセントの資料に用いてもらっている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件
啓発冊子の発行2009年度、2010年度

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kurosaki M, Hiramatsu N, Sakamoto M, et al.
Age and total ribavirin dose are independent predictors of relapse after interferon therapy in chronic hepatitis C revealed by data mining analysis.
Antivir The , 17 , 35-43  (2011)
原著論文2
Kurosaki M, Hiramatsu N, Sakamoto M et al.
Data mining model using simple and readily available factors could identify patients at high risk for hepatocellular carcinoma in chronic hepatitis C.
J Hepatol , 56 , 602-608  (2012)
原著論文3
Kurosaki M, Tanaka Y, Tanaka K, et al.
Relationship between polymorphisms of the inosine triphosphatase gene and anaemia or outcome after treatment with pegylated interferon and ribavirin.
Antivir Ther , 16 , 685-694  (2011)
原著論文4
Hiramatsu N, Kurosaki M, Sakamoto N, et al.
Pretreatment prediction of anemia progression by pegylated interferon alpha-2b plus ribavirin combination therapy in chronic hepatitis C infection: decision-tree analysis.
J Gastroenterol , 46 , 1111-1119  (2011)
原著論文5
Kurosaki M, Sakamoto N, Iwasaki M et al.
Sequences in the interferon sensitivity-determining region and core region of hepatitis C virus impact pretreatment prediction of response to PEG-interferon plus ribavirin: data mining analysis.
J Med Virol , 83 , 445-452  (2011)
原著論文6
Kurosaki M, Hosokawa T, Matsunaga K, et al.
Hepatic steatosis in chronic hepatitis C is a significant risk factor for developing hepatocellular carcinoma independent of age, sex, obesity, fibrosis stage and response to interferon therapy.
Hepatol Res , 40 , 870-877  (2010)
原著論文7
Kurosaki M, Sakamoto N, Iwasaki M, et al.
Pretreatment prediction of response to peginterferon plus ribavirin therapy in genotype 1 chronic hepatitis C using data mining analysis.
J Gastroenterol , 52 , 518-527  (2010)

公開日・更新日

公開日
2016-05-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
201030006Z