男性同性間のHIV感染対策とその介入効果に関する研究

文献情報

文献番号
201029006A
報告書区分
総括
研究課題名
男性同性間のHIV感染対策とその介入効果に関する研究
課題番号
H20-エイズ・一般-008
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
市川 誠一(公立大学法人名古屋市立大学 看護学部)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 俊広(独立行政法人国立病院機構 仙台医療センター)
  • 佐藤 未光(ひかりクリニック)
  • 内海 眞(独立行政法人国立病院機構 東名古屋病院 )
  • 鬼塚 哲郎(京都産業大学 文化学部)
  • 山本 政弘(独立行政法人国立病院機構 九州医療センター)
  • 健山 正男(国立大学法人琉球大学 大学院医学研究科)
  • 金子 典代(公立大学法人名古屋市立大学 看護学部)
  • 多田 有希(国立感染症研究所 感染症情報センター)
  • 本間 隆之(公立大学法人山梨県立大学 看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
38,053,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
MSMのHIV感染拡大を防止するために、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡、沖縄でコミュニティベースの啓発普及、自治体のMSM対象のHIV感染対策構築、啓発プログラムの効果評価、社会的・性的ネットワークの検討、MSMのHIV/性感染症の動向分析、MSM人口および有病率の推定、HBV感染や献血でのHIV陽性率の視点を含めた啓発、啓発プログラムや性的指向対応のマニュアル作成等を行う。
研究方法
1.各地域の男性同性間のHIV感染予防介入研究(分担、CBO)
東北(伊藤俊広、やろっこ)、東京(佐藤未光、Rainbow Ring)、名古屋(内海眞、ALN)、大阪(鬼塚哲郎、MASH大阪)、福岡(山本政弘、LAF)、沖縄(健山正男、NANKR)地域でMSMへの啓発普及をコミュニティベースで行う。
2.啓発の効果評価調査および行動疫学調査
地域の各種ベニューで質問紙調査を実施し、啓発効果を評価し効果的なHIV感染対策を検討する。
結果と考察
1.各地域の男性同性間のHIV感染予防介入研究
6地域のゲイCBOがコミュニティセンターを軸に商業施設を介したアウトリーチ啓発(HIV関連情報誌やコンドーム等の啓発資材配布等)を継続展開した。活動が先行した東京、大阪に加え他地域でもCBO活動が可視化され、商業施設等と協働した啓発活動が大きく進んだ。
2.啓発の効果評価調査および行動疫学調査
1)東北のゲイバー利用者はHIV検査受検経験率が高く、過去6か月のコンドーム常用率は上昇傾向にある。2)東京の情報紙マンスリーaktaの認知度は上昇しコミュニティに浸透しつつある。3)東海では生涯HIV検査受検割合は65.2%と高い。4)大阪ではコミュニティ・ペーパーへの接触と受検行動に関連を認めた。5)九州のバー顧客ではコミュニティ紙認知度が62.2%と高く、コミュニティセンターhaco訪問率は2008年の2倍(22.0%)であった。6)沖縄では保健所のHIV検査受検が80.3%を占め他地域と異なる。7)在日外国籍MSMの日本国内でのHIV検査受検率は37.8%であった。
結論
名古屋、福岡、沖縄ではバー顧客、東北、福岡、名古屋ではサークル活動に集まるMSM、大阪ではクラブイベント参加者を対象に質問紙調査を行い、全地域でコミュニティベースの啓発介入を評価する体制を整備した。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

文献情報

文献番号
201029006B
報告書区分
総合
研究課題名
男性同性間のHIV感染対策とその介入効果に関する研究
課題番号
H20-エイズ・一般-008
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
市川 誠一(公立大学法人名古屋市立大学 看護学部)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 俊広(独立行政法人国立病院機構 仙台医療センター)
  • 佐藤 未光(ひかりクリニック)
  • 内海 眞(独立行政法人国立病院機構 東名古屋病院)
  • 鬼塚 哲郎(京都産業大学 文化学部)
  • 山本 政弘(独立行政法人国立病院機構 九州医療センター)
  • 健山 正男(国立大学法人琉球大学 大学院医学研究科)
  • 金子 典代(公立大学法人名古屋市立大学 看護学部)
  • 多田 有希(国立感染症研究所 感染症情報センター)
  • 本間 隆之(公立大学法人山梨県立大学 看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
MSMのHIV感染拡大を防止するために、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡、沖縄でコミュニティベースの啓発普及、自治体のMSM対象のHIV感染対策構築、啓発プログラムの効果評価、社会的・性的ネットワークの検討、MSMのHIV/性感染症の動向分析、MSM人口および有病率の推定、HBV感染や献血でのHIV陽性率の視点を含めた啓発、啓発プログラムや性的指向対応のマニュアル作成等を行う。
研究方法
1.各地域の男性同性間のHIV感染予防介入研究(分担、CBO)
東北(伊藤俊広、やろっこ)、東京(佐藤未光、Rainbow Ring)、名古屋(内海眞、ALN)、大阪(鬼塚哲郎、MASH大阪)、福岡(山本政弘、LAF)、沖縄(健山正男、NANKR)地域でMSMへの啓発普及をコミュニティベースで行う。
2.啓発の効果評価調査および行動疫学調査
地域の各種ベニューで質問紙調査を実施し、啓発効果を評価し、効果的なHIV感染対策を検討する。
結果と考察
1.各地域の男性同性間のHIV感染予防介入研究
各地域のCBOはコミュニティセンターを軸にコミュニティベースの啓発普及活動を継続し、3年間の計画をほぼ達成した。一部の地域のMSMではHIV抗体検査受検割合やコンドーム常用割合が上昇している。コミュニティセンターはMSMを対象とした予防啓発事業のベース基地として重要である。
2.啓発の効果評価調査および行動疫学調査
1)日本人成人男性に占めるMSM割合(2.0%)を求めHIV、AIDS有病率を推定し、MSMは非MSMに比べて、HIVは96倍、AIDSは33倍高い状況であることを示した。2)東北、東京、名古屋、大阪、福岡、沖縄地域のゲイCBOの啓発活動を評価する量的調査を計画・実施・分析した。質問項目の共通化を図ると共に、地域や調査手法による独立項目を整理し、地域間の比較を可能とした。3) 各地域の様々なベニューで調査が可能となり、各地域のCBOの啓発介入効果を総合的に評価できる体制となった。4)Hard to reach層であるMSMを対象に、コミュニティベースの行動調査が全地域で実施できたのは、わが国では初めてである。
結論
東北、東京、名古屋、大阪、福岡、沖縄の地域で、ゲイCBOによる啓発活動が行われ、全地域でコミュニティベースの啓発介入を評価する調査体制を整備した。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201029006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
成人男性に占める男性同性間の性的接触者(MSM)の推定人口は2%であること、MSMのHIVおよびAIDS有病率は非MSMに比して極めて高いこと、MSMのAIDS発生率は近畿、東海、九州地域も東京とほぼ同程度であることを示した。MSMにおけるHIV感染に対して、当事者ボランティア団体(NGO)と協働して訴求性のある啓発プログラムを実施し、その効果評価を行動疫学調査により行った。啓発資材の認知、検査行動、予防行動で介入と関連した効果がみられたことは学術的、社会的に意義がある。
臨床的観点からの成果
ゲイNGOの啓発プログラムが25-39歳のMSMを中心に受検行動を中心とした予防行動を促進しており、エイズ患者発生を減少に転じることが期待される。NGOを活用したHIV感染対策をさらに展開することが望まれる。
ガイドライン等の開発
NGO活動を「HIV感染対策とその介入―アウトリーチwithゲイコミュニティ」(日本語版)、「HIV prevention programs with MSM – Outreach to Gay Commercial venues」(英語版)にまとめ、若年層MSM対策として「教師のための『多様な性』対応ハンドブック?子どもたちの声が聞こえていますか?」を作成し、関係機関・団体に研究成果発表会、研修会等で配布した。
その他行政的観点からの成果
研究班と協働で啓発活動を実施しているコミュニティセンターaktaは、重点都道府県エイズ対策担当者連絡協議会プログラムに継続導入されている。東京で開発されたNGO啓発プログラム“Living Together”は厚生労働省のエイズ対策キャンペーン標語に活用(2007年-2009年)。平成22年度厚生労働省エイズ予防指針作業班第3回会議(2011年2月24日)会議資料「男性同性間のHIV/エイズの現状、課題、提言」を提示。大阪市エイズ対策基本指針STOPエイズ作戦2009-2011の資料提示。
その他のインパクト
東京のNGOのアウトリーチ活動、啓発イベント“Living Together”、関連啓発資材がNHK教育ETV特集「HIVと生きる」(2010年7月4日)で放送。国民向け研究成果発表会・公開シンポジウムを日本エイズ学会総会(2008-2010年)で、ゲイコミュニティ向け研究成果発表会を仙台、東京、大阪、沖縄で実施。愛知県、東海地域の養護教諭等を対象にセクシュアルヘルスをテーマに公開講演会(2006-2010年)を実施。モンゴル国の同性間エイズ対策に取組むNGOが大阪、東京のNGO活動を視察。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
10件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
26件
学会発表(国際学会等)
11件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
4件
研究班と協働のNGOが6地域のコミュニティセンターを軸に自治体と連携した啓発活動を実施。名古屋のMSM対象HIV検査会が名古屋市事業。Living Togetherが国のキャンペーン標語。
その他成果(普及・啓発活動)
18件
各地域のNGOが複数の啓発普及活動を毎年繰り返している。6地域のNGO啓発普及活動×3年間で18回とした。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
新ヶ江章友、金子典代、内海眞、他
HIV抗体検査会に参加した東海在住MSM(Men who have Sex with Men)の性自認とHIV感染リスク行動
日本エイズ学会誌 , 11 (3) , 255-262  (2009)
原著論文2
Ichikawa S, Kaneko N, Koerer J, Shiono S, Shingae A, Ito T
Survey investigating homosexual behaviour among adult males used to estimate the prevalence of HIV and AIDS among men who have sex with men in Japan
Sexual Health , 8 , 123-124  (2011)
原著論文3
Jane Koerner, Satoshi Shiono, Seiichi Ichikawa, et al
Factors associated with unprotected anal intercourse and age among men who have sex with men who are gay bar customers in Osaka, Japan
Sexual Health , 9 (4) , 328-333  (2012)
原著論文4
金子典代, 大森佐知子,辻宏幸、他
ゲイ・バイセクシュアル男性におけるHIV 感染予防行動のステージと関連要因:大阪市内での商業施設利用者への質問紙調査から
日本公衆衛生学雑誌 , 58 (7) , 501-514  (2011)
原著論文5
Jane Koerner, Seiichi Ichikawa
The Epidemiology of HIV/AIDS and Gay Men’s Community-Based Responses in Japan
Intersections: Gender and Sexuality in Asia and the Pacific, Published online , Issue 26  (2011)
http://intersections.anu.edu.au/issue26/koerner-ichikawa.htm,
原著論文6
塩野徳史,金子典代,市川誠一
日本成人男性におけるHIVおよびAIDS感染拡大の状況-MSM (Men who have sex with men)とMSM以外の男性との比較-
厚生の指標 , 58 (13) , 12-18  (2011)
原著論文7
金子典代,塩野徳史,コーナ・ジェーン、他
日本人成人男性における生涯でのHIV検査受検経験と関連要因
日本エイズ学会誌 , 14 (2) , 99-105  (2012)
原著論文8
塩野徳史、金子典代、市川誠一、山本政弘、健山正男、内海眞、木村哲、生島嗣、鬼塚哲郎
MSM(Men who have sex with men) におけるHIV抗体検査受検行動と受検意図の促進要因に関する研究
日本公衆衛生学雑誌 , 60 (10) , 639-650  (2013)
原著論文9


公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
2017-10-26

収支報告書

文献番号
201029006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
49,468,000円
(2)補助金確定額
49,468,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 0円
間接経費 0円
合計 0円

備考

備考
自己資金675円

公開日・更新日

公開日
2014-06-09
更新日
-