文献情報
文献番号
201027051A
報告書区分
総括
研究課題名
1歳からの広汎性発達障害の出現とその発達的変化:地域ベースの横断的および縦断的研究
課題番号
H20-こころ・一般-004
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
神尾 陽子(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 児童・思春期精神保健研究部)
研究分担者(所属機関)
- 小山 智典(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 児童・思春期精神保健研究部 )
- 稲垣 真澄(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 知的障害研究部 )
- 土屋 賢治(浜松医科大学・子どものこころの発達研究センター)
- 高木 晶子(国立障害者リハビリテーションセンター自立支援局秩父学園)
- 中井 昭夫(福井大学医学部・発達行動小児科学)
- 田中 康雄(北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター)
- 藤野 博(東京学芸大学・コミュニケーション障害学)
- 三島和夫(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神生理研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
11,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、広汎性発達障害 (PDD)の一般児童母集団内での有病率、PDD閾下ケースも含めたPDD症状の母集団内の分布および、注意欠陥/多動性障害、学習障害、発達性協調運動障害 など他の「発達障害」症候群や一般の精神医学的障害との合併の実態を明らかにすることである。
研究方法
対象には2-3歳の幼児と、学童という異なる発達段階にある年齢帯を選び、地域ベースの研究を行った。幼児群は、東京都N市の2 歳児を対象にした市の母子保健事業参加者のうち保護者から同意が得られた児983名と、京都府M市の1歳6ヵ月健診の受診者のうち保護者から同意が得られた児約2000名から成る。学童群は、東京都K市立小学校通常学級児童のうち保護者の同意が得られた775名と、全国10道府県148小学校および71中学校の通常学級児童・生徒のうち保護者から同意が得られた25,779名から成る。幼児群へは、Modified Checklist for Autism in Toddlers (M-CHAT) を用いたスクリーニングを、学童群へは、保護者と担任教師による質問紙を用いてスクリーニングを行い、結果に応じて一部の児童に対して面接を実施し、臨床情報を収集した。
結果と考察
現行の国際的診断基準に従うとPDDの有病率は0.9-1.6%と推定された。自閉症的特性の量的尺度(SRS)を用いると、顕著ではないがPDDの特性を示す児は全母集団の約15%に存在すると示唆された。ただし、児童集団の示すPDDの特性は、なだらかな連続的分布を示すものとなるため、特定の評価点だけで障害の有無を区分する事は非常に困難で、個々のニーズ評価にもとづく支援を個別的に行う事が現実的である。またPDD児の約80%になんらかの合併精神障害が認められ、軽度のPDD特性を持つ児を含めると、不器用さ(約66%)、情緒的な問題(約48%)、注意を向けたり維持することの苦手さ(約37%)等の症状を合併する場合が多く認められた。さらに研究の副産物として、わが国の子どもに用いることができる信頼性と妥当性の検証された評価尺度を提供することができた。
結論
日本の児童において、PDDやPDD特性を持つ児は高率であること、情緒や行動の症状や他の発達障害の合併が高率であることなどから、幼児期の早期発見・早期支援の充実は長期的視点からも重要であることが示唆された。PDD児には、学齢期以降にもメンタルヘルスの観点から丁寧な観察や対応を行うことがQOLを高めるために必要と考えられた。
公開日・更新日
公開日
2011-05-27
更新日
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