文献情報
文献番号
201011019A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の寝たきり予防に役立つナノ表面構築型人工股関節の開発に関する研究
課題番号
H20-活動・一般-004
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
高取 吉雄(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
- 中村 耕三(東京大学 医学部附属病院 )
- 川口 浩(東京大学 医学部附属病院 )
- 石原 一彦(東京大学 大学院 工学系研究科)
- 茂呂 徹(東京大学 医学部附属病院 )
- 伊藤 英也(東京大学 医学部附属病院 )
- 金野 智浩(東京大学 大学院 工学系研究科)
- 塙 隆夫(東京医科歯科大学 生体材料工学研究所)
- 岩崎 泰彦(関西大学 化学生命工学部)
- 橋本 雅美((財)ファインセラミックスセンター)
- 山脇 昇((株)日本メディカルマテリアル)
- 京本 政之((株)日本メディカルマテリアル)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(低侵襲・非侵襲医療機器(ナノテクノロジー)研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
42,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、我々が開発してきた、生体適合性材料・MPCポリマーの人工股関節摺動面へのナノ表面処理技術を応用し、安定性と耐摩耗性に優れ、高齢者の寝たきり予防に役立つ革新的なナノ表面構築型人工股関節を開発することである。
研究方法
MPC処理の至適条件の検索では、MPCによるナノ表面処理時の紫外線強度について至適条件を検索した。ポリエチレン(PE)厚がMPC処理効果に与える影響の検討では、股関節における摩擦摩耗動作を想定した摩耗特性(多方向摺動)試験を行った。摩耗抑制効果の検討では、コバルトクロム合金骨頭表面の粗さが生体内埋入期間中に変化することを想定し、表面粗さを変化させた骨頭を作製してシミュレーター試験を行った。関節摺動面の安定性の検討では、下肢の自重によって骨頭が引き下げられライナー面から離れる「浮き上がり防止」について、ライナー摺動面―骨頭間の吸着力を指標として、MPC処理が与える影響を検討した。
結果と考察
MPC処理の至適条件の検索では、架橋ポリエチレン表面のMPCポリマー層は、紫外線強度の制御により表面にグラフトされるMPC層が制御できた。ポリエチレン厚がMPC処理効果に与える影響の検討では、MPC処理により、CLPEの耐摩耗特性が向上することが確認された。また、厚いCLPEは薄いそれに比べ良好な耐摩耗特性を示した。更に、薄いCLPEにおいても重篤な欠陥は認められず、大径骨頭と組み合わせることが可能な薄いCLPEライナーの適用の可能性が示唆された。摩耗抑制効果の検討では、MPCポリマーでナノスケールの表面処理を施すことで、何れの表面粗さの場合も摩耗量を著しく低減させることが明らかとなった。関節摺動面の安定性の検討では、大径骨頭を用いた場合でも、MPC処理により関節摺動面の吸着力が増大することが示され、その効果はより大径の骨頭を用いることで高くなる可能性が示唆された。
結論
以上の研究成果は、高齢者の寝たきり予防に役立つナノ表面構築型人工股関節の開発を推進しうるものであり、革新的な人工股関節の臨床応用が期待できる内容であった。
公開日・更新日
公開日
2011-09-14
更新日
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