生存率とQOLの向上を目指したがん切除後の形成再建手技の標準化

文献情報

文献番号
200925018A
報告書区分
総括
研究課題名
生存率とQOLの向上を目指したがん切除後の形成再建手技の標準化
課題番号
H19-がん臨床・一般-018
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
中塚 貴志(埼玉医科大学医学部 形成外科)
研究分担者(所属機関)
  • 多久嶋 亮彦(杏林大学医学部 形成外科)
  • 朝戸 裕貴(独協医科大学 形成外科)
  • 櫻庭 実(国立がんセンター東病院 形成外科)
  • 桜井 裕之(東京女子医科大学 形成外科)
  • 木股 敬裕(岡山大学医学部 形成外科)
  • 中川 雅裕(静岡県立静岡がんセンター 形成外科)
  • 矢野 健二(大阪大学医学部 形成外科)
  • 澤泉 雅之(癌研究会有明病院 形成外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
13,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、身体各部位における固形癌切除後の再建術式の標準化を図るべく、各施設、研究者によるこれまでの再建法の術後成績および問題点を検討し、新たな機能評価法の確立をめざした。
研究方法
基本的にはこれまで施行された症例の術後成績の検討を基として、各領域における最適の治療方法を探究し、術後成績や生存率に与える影響などを調べた。また、術後機能の評価方法に関しても頭頸部では再建術後の嚥下圧の測定を行い、乳房再建では新たな評価法を考案し検討を加えた。
結果と考察
今年度得られた結果は、いずれもわが国では長年にわたり多数の症例・経験を有する施設・術者の検討結果であり、高い普遍性と妥当性を有すると考えられる。
頭頸部を例にとれば、口腔組織の切除範囲に応じて嚥下圧は全般的に低下を認めるが、健常者の1/2程度までの嚥下圧の低下は機能的に許容され、具体的には30mmHg程度までの中咽頭圧の低下であれば経口摂取が可能となることが分かった。このデータを元に、高齢など術前から嚥下圧の低下が予測される症例では、喉頭挙上術や輪状咽頭筋切開術などの嚥下改善策を標準術式として加える等の対策を講じることが出来ると考えられた。
 また、遊離組織移植による最大の合併症は吻合部血栓による移植組織の全壊死であるが、今回の検討では吻合部血栓例中、非救済例は救済例に比べ再手術日が遅く対応の迅速さ・皮弁モニタリングの確立が必要と考えられた。この点、移植組織弁内静脈へのカテーテル挿入は、静脈圧の連続測定を可能とし、静脈側吻合部血栓に対するきわめて鋭敏な指標となりうることが分かった。
結論
身体各部位の固形癌切除後の組織再建には形成外科的な手技が多用されているが、施設や術者により再建方法に差異があるのが現状である。本研究では、より安全・確実で良好な術後機能を獲得できる再建手技の確立を目指し、多数症例の解析を行った。その結果、多くの部位で遊離組織移植術が有効であることが裏付けられたが、四肢・体幹では有茎皮弁・筋皮弁の適応症例も多かった。

公開日・更新日

公開日
2010-05-24
更新日
-

文献情報

文献番号
200925018B
報告書区分
総合
研究課題名
生存率とQOLの向上を目指したがん切除後の形成再建手技の標準化
課題番号
H19-がん臨床・一般-018
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
中塚 貴志(埼玉医科大学医学部 形成外科)
研究分担者(所属機関)
  • 多久嶋 亮彦(杏林大学医学部 形成外科)
  • 朝戸 裕貴(獨協医科大学 形成外科)
  • 櫻庭 実(国立がんセンター東病院 形成外科)
  • 桜井 裕之(東京女子医科大学 形成外科)
  • 木股 敬裕(岡山大学医学部 形成外科)
  • 中川 雅裕(静岡県立静岡がんセンター 形成外科)
  • 矢野 健二(大阪大学医学部 形成外科)
  • 澤泉 雅之(癌研究会有明病院 形成外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 外科治療、特に形成再建手技の進歩とともに身体各部位における固形癌切除後の広範囲組織欠損に対しても良好な術後成績が得られるようになっている。しかし、個々の症例における実際の再建方法(再建に用いる移植組織の選択や具体的な再建の手技など)に関しては、術者の経験・好みや施設によって異なっているのが実情である。一方、癌切除法に関しては、多くの分野で現在標準化の試みがなされつつあり、これに相応する形で形成再建術式の標準化を目指すことが医療サイドに強く求められている。
 本研究では、身体各部位における固形癌切除後の再建術式の標準化を図るべく、各施設、研究者によるこれまでの再建法の術後成績および問題点を検討し、新たな機能評価法の確立をめざした。
研究方法
 基本的にはこれまで施行された症例の術後成績の検討を基として、各領域における最適の治療方法を探究し、術後成績や生存率に与える影響などを調べた。また、術後機能の評価方法に関しても頭頸部では再建術後の嚥下圧の測定を行い、乳房再建では新たな評価法を考案し検討を加えた。
結果と考察
 これまで得られた結果は、いずれもわが国では長年にわたり多数の症例・経験を有する施設・術者の検討結果であり、高い普遍性と妥当性を有すると考えられる。
 頭頸部癌を例にとれば、特に舌癌切除後の再建では、術後合併症を生じないような再建法の確立により形成外科医が生存率の向上に寄与できる可能性があると考えられた。遊離組織移植による最大の合併症は吻合部血栓による移植組織の全壊死であるが、吻合部血栓例中、非救済例は救済例に比べ再手術日が遅く対応の迅速さ・皮弁モニタリングの確立が必要と考えられた。この点、移植組織弁内静脈へのカテーテル挿入は、静脈圧の連続測定を可能とし、静脈側吻合部血栓に対するきわめて鋭敏な指標となりうることが分かった。
結論
 身体各部位の固形癌切除後の組織再建には形成外科的な手技が多用されているが、施設や術者により再建方法に差異があるのが現状である。本研究では、より安全・確実で良好な術後機能を獲得できる再建手技の確立を目指し、多数症例の解析を行った。その結果、多くの部位で遊離組織移植術が有効であることが裏付けられたが、四肢・体幹では有茎皮弁・筋皮弁の適応症例も多かった。

公開日・更新日

公開日
2010-05-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-01-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200925018C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 本研究で得られた結果は、わが国では長年にわたり多数の症例・経験を有する施設・術者の検討結果であり、世界的に見ても多数例の検討であり、高い普遍性と妥当性を有すると考えられる。
臨床的観点からの成果
 身体各部位の固形癌切除後の組織再建には形成外科的な手技が多用されているが、施設や術者により再建方法に差異があるのが現状である。本研究では、より安全・確実で良好な術後機能を獲得できる再建手技の確立を目指し、多数症例の解析を行った。その結果、多くの部位で遊離組織移植術が有効であることが裏付けられたが、四肢・体幹では有茎皮弁・筋皮弁の適応症例も多かった。
ガイドライン等の開発
 頭頸部癌切除後の標準的術式の確立、乳癌切除後の再建法(人工物の使用を含む)の選択においても本研究は寄与するところ大であると考えられる。
その他行政的観点からの成果
 術後合併症が少なくかつ、術後機能の良好な再建方法が確立されれば、癌患者の早期社会復帰につながる。また、標準的再建法の提示により患者のがん治療に対する安心感・信頼感を得ることができる。
その他のインパクト
 特になし。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
27件
その他論文(和文)
37件
その他論文(英文等)
4件
学会発表(国内学会)
67件
学会発表(国際学会等)
14件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
木股敬裕、櫻庭実
上顎癌切除後の一次再建と形態の回復
形成外科 , 50 (8) , 859-867  (2007)
原著論文2
Sakuraba M, Asano T, Miyamoto S, et al
Three-dimensional reconstruction of supraglottic structures after partial pharyngolaryngectomy for hypopharyngeal cancer.
Jpn J Clin Oncol , 38 (6) , 408-413  (2008)
原著論文3
Yamamoto Y, Sakurai H, Nakazawa H, et al
Effect of vascular augmentation on the haemodynamics and survival area in a rat abdominal perforator flap model.
J Plast Reconstr Aesthet Surg , 62 , 244-249  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-10-01
更新日
-