難治性小児がんの臨床的特性に関する分子情報の体系的解析と、その知見に基づく診断治療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200924010A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性小児がんの臨床的特性に関する分子情報の体系的解析と、その知見に基づく診断治療法の開発に関する研究
課題番号
H19-3次がん・一般-010
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
清河 信敬(国立成育医療センター 研究所 発生・分化研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 藤本純一郎(国立成育医療センター)
  • 林泰秀(群馬県立小児医療センター)
  • 小川誠司(東京大学 医学部)
  • 大平美紀(千葉県がんセンター 生化学研究部)
  • 中澤 温子 (中川 温子)(国立成育医療センター 臨床検査部 病理検査室)
  • 森鉄也(国立成育医療センター 第一専門診療部 血液腫瘍科)
  • 大喜多肇(国立成育医療センター 研究所 発生・分化研究部 機能分化研究室)
  • 横澤敏也(独立行政法人国立病院機構 名古屋医療センター 臨床研究センター 血液・腫瘍研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
17,570,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、難治性小児がんの治療予後向上に寄与することを目的として、昨年度までに引き続き、臨床検体を用いた包括的・体系的な生体分子情報解析(オミックス)を行い、その臨床的特性との関連から体系的に解析し、得られた知見を診断治療法開発に応用することを目指した
研究方法
高密度SNPアレイを用いたゲノム構造解析、マイクロアレイを用いた網羅的発現遺伝子解析、シークエンシングや定量PCR、フローサイトメトリーによる表面抗原解析、等を用いて、小児がん臨床検体の解析を行うとともに、マウスモデルや培養細胞系を用いた小児がん発症/治療モデルの開発を行なった。
結果と考察
小児急性リンパ芽球性白血病の網羅的発現遺伝子解析により、亜型に特徴的な発現遺伝子群を明らかにした。神経芽腫以外の小児固形腫瘍におけるALK遺伝子の関与について検討し、横紋筋肉腫とEwing肉腫(ESFT)で高度増幅と変異を検出してALKが同腫瘍群の治療標的になりうることを示した。小児急性骨髄性白血病(AML)におけるWT1遺伝子変異、小児血液腫瘍における11p15転座型(NUP98遺伝子再構成)のKIT変異との関係や予後との関係を明らかにし、AML1-ETOを利用したAMLの治療後の微小残存病変の解析を継続した。肝芽腫のゲノムパターンによるリスクグループ分類の再現性を追加症例により確認し、その有用性を示した。ESFTの標的遺伝子であるDKK1/DKK2の下流因子の候補を同定し、DKK2の発現抑制がESFT細胞に与える影響やWNTシグナルの関係について明らかにした。発がんに重要なcycline kinase inhibitorの発現解析を行い、従来の組織学的診断によらない悪性度診断の確立、分子標的療法の開発を行なった。難治性小児がんの中央診断とバイオリソース形成を継続し、中央診断システムの確立と診断法の標準化、新規検査法の確立を行なった。
結論
難治性小児がんの分子情報の体系的解析を行い、ゲノム構造解析や発現遺伝子解析によって複数の診断・治療標的因子、あるいはその候補が同定して、その臨床応用に向けた研究を進めている。また、難治性小児がんの中央診断や検体保存のシステムが確立され、新たな診断法の開発も進んだ。今後さらに、その成果を発展させ、難治性小児がん治療への応用、予後向上への寄与を目指す。

公開日・更新日

公開日
2010-05-26
更新日
-

文献情報

文献番号
200924010B
報告書区分
総合
研究課題名
難治性小児がんの臨床的特性に関する分子情報の体系的解析と、その知見に基づく診断治療法の開発に関する研究
課題番号
H19-3次がん・一般-010
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
清河 信敬(国立成育医療センター 研究所 発生・分化研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 藤本純一郎(国立成育医療センター)
  • 林泰秀(群馬県立小児医療センター)
  • 小川誠司(東京大学 医学部)
  • 大平美紀(千葉県がんセンター 生化学研究部)
  • 中澤 温子 (中川 温子)(国立成育医療センター 臨床検査部 病理検査室)
  • 森鉄也(国立成育医療センター 第一専門診療部 血液腫瘍科)
  • 大喜多肇(国立成育医療センター 研究所 発生・分化研究部 機能分化研究室)
  • 横澤敏也(独立行政法人 国立成育医療研究センター 研究所 小児血液・腫瘍研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、難治性小児がんの治療予後向上への寄与を目的として、臨床的特性との関連に着目した臨床検体を用いた包括的・体系的な生体分子情報解析(オミックス)を行い、その成果を診断治療法開発に応用することを目指した。
研究方法
高密度SNPアレイを用いたゲノム構造解析、マイクロアレイを用いた網羅的発現遺伝子解析、シークエンシングや定量PCR、フローサイトメトリーによる表面抗原解析、等を用いて、小児がん臨床検体の解析を行うとともに、マウスモデルや培養細胞系を用いた小児がん発症/治療モデルの開発を行なった。
結果と考察
小児固形腫瘍488例、小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)202例の網羅的ゲノム構造解析、小児固形腫瘍44例、ALL40例の発現遺伝子解析を行い、神経芽腫を含む小児固形腫瘍の治療標的因子としてALK等を、Ewing肉腫の標的因子としてDKK1/2を同定した他、ALL各病型に特徴的なゲノム構造異常や発現遺伝子を明らかにし、肝芽腫における遺伝子発現およびゲノム異常プロファイルの治療予後層別化への有用性を示した。小児急性骨髄性白血病(AML)について予後と関連する遺伝子異常を明らかにし、キメラ遺伝子の正確な発現頻度を示してその治療反応モニタリングへの有用性につき検討した。小児ALL細胞の質量分析による網羅的発現糖鎖解析により、各病型における特徴的な糖鎖発現様式を明らかにした。Ewing肉腫に対する骨髄間葉系前駆細胞を用いた発症モデルを確立し、EWS/ETS融合遺伝子の腫瘍発生における機能解析を行った。難治性小児がんのバイオリソース形成、中央診断システムの確立と診断法の標準化、新規検査法の確立を行なった。
結論
難治性小児がんの体系的分子情報解析を行い、ゲノム構造解析や発現遺伝子解析によって複数の診断・治療標的因子、あるいはその候補を同定し、臨床応用に向けた研究を進めている。また、難治性小児がんの中央診断や検体保存のシステムを確立し、新たな診断法の開発を進めている。今後さらに、その成果を発展させ、難治性小児がん治療への応用、特に新規診断法・予後予測法の治療プロトコールへの活用や新規治療法確立によって難治性小児がんの予後向上へ寄与することを目指す。

公開日・更新日

公開日
2010-05-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200924010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
難治性小児がんについて、多数の臨床検体を用いたゲノム、トランスクリプトーム、グライコーム等の網羅的な分子プロファイリイングを行い、各疾患の臨床特性と分子特性との関係を多角的に解析し、神経芽腫、Ewing肉腫、小児白血病、肝芽腫等で、悪性度や発症、病態形成に深くかかわる因子あるいは分子プロファイルを多数明らかにした。培養細胞を用いたEwing肉腫の発症機構解析に有用なモデル系等、難治性小児がんの実験系を確立した。
臨床的観点からの成果
治療標的因子あるいはその候補を複数同定し、これを対象とする新規治療法開発研究を推進している。難治性小児がんの病理および分子中央診断、余剰検体保存システムを確立した。このシステムを活用し、複数の小児がんの多施設共同研究における中央診断を実施、質の高い診断情報を提供するとともに、多数の小児がん臨床検体を保存して、将来の小児がん研究に有用なバイオリソース形成を行なった。診断確定や予後予測に有用な新規分子診断法の開発を行なった。現在、実際にその臨床応用を目指した研究を推進している。
ガイドライン等の開発
審議会等での参考、ガイドライン等の開発については特に成果はなかった。
その他行政的観点からの成果
審議会等での参考、行政施策への反映等の成果はなかった。
その他のインパクト
マスコミ掲載、公開シンポジウムの開催等の成果はなかった。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
113件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
213件
学会発表(国際学会等)
28件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Onda K, Okita H, Kiyokawa N, et al.
Differential effects of BAFF on B-cell precursor acute lymphoblastic leukemia and Burkitt lymphoma.
Int J Hematol. (in press)  (2010)
原著論文2
Miyagawa Y, Okita H, Kiyokawa N, et al.
EWS/ETS regulates the expression of the Dickkopf family in Ewing’s family tumor cells.
PLoS ONE. , 4 (2) , 4634-4645  (2009)
原著論文3
Kitamura N, Fujimoto J, Kiyokawa N, et al.
The expression of granulysin in systemic anaplastic large cell lymphoma in childhood.
Leuk Res. , 33 (7) , 908-912  (2009)
原著論文4
Horiuchi Y, Fujimoto J, Kiyokawa N, et al.
Kinetics and Effect of Integrin Expression on Human CD34(+) Cells during Murine Leukemia Virus-Derived Retroviral Transduction with Recombinant Fibronectin for Stem Cell Gene Therapy.
Hum Gene Ther. , 20 (7) , 777-783  (2009)
原著論文5
Miyagawa Y, Kiyokawa N, Okita H, et al.
Ex vivo expanded cord blood CD4 T lymphocytes exhibit distinct expression profile of cytokine-related genes from those of peripheral blood origin.
Immunology. , 128 (3) , 405-419  (2009)
原著論文6
Kato M, Hayashi Y, Ogawa S, et al.
Frequent inactivation of A20 in B-cell lymphomas.
Nature. , 459 (7247) , 712-716  (2009)
原著論文7
Akagi T, Shih LY, Ogawa S, et al.
Single nucleotide polymorphism genomic arrays analysis of t(8;21) acute myeloid leukemia cells.
Haematologica. , 94 (9) , 1301-1306  (2009)
原著論文8
Kawamata N, Ogawa S, Koeffler HP, et al.
Identified hidden genomic changes in mantle cell lymphoma using high-resolution single nucleotide polymorphism genomic array.
Exp Hematol. , 37 (8) , 937-946  (2009)
原著論文9
Yu M, Ohira M, Nakagawara A, et al.
High expression of ncRAN, a novel non-coding RNA mapped to 17q25.1, is associated with poor prognosis in neuroblastoma.
Int. J. Oncol. , 34 (4) , 931-938  (2009)
原著論文10
Miyagawa Y, Okita H, Kiyokawa N, et al.
Inducible expression of chimeric EWS/ETS proteins confers Ewing's family tumor-like phenotypes to human mesenchymal progenitor cells.
Mol Cell Biol. , 28 (7) , 2125-2137  (2008)
原著論文11
Saito Y, Fujimoto J, Kiyokawa N, et al.
B-cell-activating factor inhibits CD20-mediated and B-cell receptor-mediated apoptosis in human B cells.
Immunology. , 125 (12) , 570-590  (2008)
原著論文12
Shiozawa Y, Fujimoto J, Kiyokawa N, et al.
Human Osteoblasts Support Hematopoietic Cell Development in vitro.
Acta Haematologica. , 120 (3) , 134-145  (2008)
原著論文13
Katagiri YU, Fujimoto J, Kiyokawa N, et al.
The detergent-insoluble microdomains, rafts can be used as an effective immunogen.
Glycoconj J. , 25 (6) , 495-501  (2008)
原著論文14
Chen Y, Hayashi Y, Ogawa S, et al.
Oncogenic mutations of ALK kinase in neuroblastoma.
Nature. , 455 (7215) , 971-974  (2008)
原著論文15
Tomioka N, Ohira M, Nakagawara A, et al.
Novel risk stratification of patients with neuroblastoma by genomic signature which is independent of molecular signature.
Oncogene. , 27 (4) , 441-449  (2008)
原著論文16
Ando K, Ohira M, Nakagawara A, et al.
Expression of TSLC1, a candidate tumor suppressor gene mapped to chromosome 11q23, is down-regulated in unfavorable neuroblastoma without promoter hypermethylation.
Int. J. Cancer. , 123 (9) , 2087-2094  (2008)
原著論文17
Kawamata N, Ogawa S, Koeffler HP, et al.
Cloning of genes involved in chromosomal translocations by high-resolution single nucleotide polymorphism genomic microarray.
Proc Natl Acad Sci U S A. , 105 (33) , 11921-11926  (2008)
原著論文18
Suzuki K, Kiyokawa N, Fujimoto J, et al.
Characterization of monocyte-macrophage-lineage cells induced from CD34+ bone marrow cells in vitro.
Int J Hematol. , 85 (5) , 384-389  (2007)
原著論文19
Taguchi T, Fujimoto J, Kiyokawa N, et al.
Interleukin-7 contributes to human pro-B-cell development in a mouse stromal cell-dependent culture system.
Exp Hematol. , 35 (9) , 1398-1407  (2007)
原著論文20
Nakamura Y, Ohira M, Nakagawara A, et al.
Functional characterization of a new p53 mutant generated by homozygous deletion in a neuroblastoma cell line.
Biochem Biophys Res Commun. , 354 (4) , 892-898  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-09-30
更新日
-