文献情報
文献番号
202217009A
報告書区分
総括
研究課題名
独居認知症高齢者等の地域での暮らしを安定化・永続化するための研究
課題番号
22GB1003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
粟田 主一(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) 東京都健康長寿医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
- 岡村 毅(東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム)
- 津田 修治(東京健康長寿医療センター研究所 福祉と生活ケア研究チーム)
- 石山 麗子(国際医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科)
- 涌井 智子(東京都健康長寿医療センター研究所 福祉と生活ケア研究チーム)
- 井藤 佳恵(東京都健康長寿医療センター研究所 福祉と生活ケア研究チーム)
- 堀田 聰子(慶應義塾大学 大学院健康マネジメント研究科)
- 大塚 理加(国立研究開発法人防災科学技術研究所 災害過程研究部門)
- 菊地 和則(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 福祉と生活ケア研究チーム)
- 桜井 良太(東京都健康長寿医療センター研究所 社会参加とヘルシーエイジング研究チーム)
- 石崎 達郎(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
- 川越 雅弘(公立大学法人埼玉県立大学 大学院保健医療福祉学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
15,300,000円
研究者交替、所属機関変更
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研究報告書(概要版)
研究目的
2019~2021年度厚労科研「独居認知症高齢者等が安全・安心な暮らしを送れる環境づくりのための研究」において自治体向けの手引きを作成したが,独居知症高齢者等の社会的支援に関する研究は国内外を通じて極めて乏しいことも明らかになった.本研究の目的は,多様なステークホルダーに向けたガイドラインと,2021年度の厚生労働科学研究で作成した自治体向けガイドラインの改訂版を作成することにある.
研究方法
12の重点領域を設定して,系統的文献レビュー,アンケート調査,ヒアリング調査,病歴調査等による分担研究を行った.
結果と考察
1)認知症疾患医療センターの診断後支援に関する研究:認知症疾患医療センターにおける独居認知症高齢者等の診断後支援のプロセスとアウトカムを評価するためのデータベースの枠組みを作成した.2)生活支援ネットワークを構築する地域拠点に関する研究:地域在住高齢者を対象にアンケート調査を実施し,自分自身の認知症を開示するか否かという意向がソーシャルキャピタルに関連することを示した.3)プライマリケアにおける独居認知症高齢者等への支援に関する研究:インタビュー調査の質的分析から独居認知症高齢者の暮らしを支える訪問看護師の実践は,「生活に参加して本人を理解する」「地域にサポートネットワークを構築する」「自立と基本的な安全・健康を両立する支援の共創」「支援の共創の終わりを認める」にカテゴリー化されることを示した.4)独居認知症高齢者等へのケアマネジメントに関する研究:文献レビューから,独居認知症高齢者のケアマネジメントについては支援の困難性や在宅生活継続の観点から言及されているが,具体的な配慮事項について検証がなされていないこと,インタビュー調査から,独居へのアプローチは,家族の存在の有無,居所の物理的な距離,家族の関わりの程度の組み合わせで判断していること,支援範囲は,包括職員は本人に出会う前から制度利用まで,居宅ケアマネは制度利用から進行を見据えたうえでの在宅の限界点の検討,看取りまでであること,いずれも一連の支援過程で意思決定支援が行われ,他者の関わりから本人が受ける心的外傷に配慮していることを示した.5)独居認知症高齢者等の家族支援に関する研究:文献レビュー及びインタビュー調査から,別居家族による支援では,「距離がつくる不安」や「生活が別である弊害」が介護者自身の生活に影響に与えていることを示した.6)複雑困難状況にある独居認知症高齢者への支援に関する研究:高齢者困難事例が抱える困難事象の分析的枠組みを開発して自治体における相談記録を分析し,認知症の重症度の進展とともに困難事象が重畳していくことを示した.7)独居認知症高齢者の社会参加の促進に関する研究:生活を共にして支える家族等の支援者がない独居の認知症もしくは認知症の疑いがある高齢者は,生活に必須の社会参加は多いが,楽しみや役割につながる社会参加は少ないことを示した.8)独居認知症高齢者等の災害対策に関する研究:被災地の介護支援専門員を対象とするアンケート調査から,被災直後は介護サービスが利用できないことが機能低下を助長することを示した.9)独居認知症高齢者等の行方不明対策に関する研究:アンケート調査から,65歳以上高齢者の行方不明者発生率は人口10万人対177人,独居高齢者は人口10万人対128人,同居高齢者は人口10万対194人であることを示した.10)独居認知症高齢者等の見守り支援に資するテクノロジーに関する研究:WEB調査から独居被介護者に対する十分な見守りを提供するシステムが流通していないこと,負担が少ない見守りシステムの実装が喫緊の課題であること,電気使用量の計測が熱中症リスクの検出に有用である可能性があることを示した.11)KDBシステム等を用いた自治体事業の質の評価に関する研究:自治体より入手したKDBデータを用い,「突合データ(CSV)」のデータレイアウトは全国共通であるが,CSVファイルの文字コード(UTF-16LE)やBOM付与対応等,国保連合会からのデータ提供時に確認・依頼すべきポイントが明らかになった.12)介護保険データを用いたサービス及び地域システムの質の評価に関する研究:自治体の介護保険データを用い,独居認知症群は非独居認知症群よりも訪問介護や居宅療養管理指導の受給率が高く,要介護度が高くなると通所介護や短期入所生活介護の受給率が高いこと.独居認知症群は独居非認知症群よりも居宅療養管理指導の受給率が高く,要介護度が高くなると通所介護/地域密着型デイの受給率が高くなるが,福祉用具貸与,通所リハ,訪問看護の受給率が低くなることを示した.
結論
本年度の研究成果に基づき,独居認知症高齢者等の地域生活の安定化に資する具体的な方策を示すことが次年度以降の各分担研究の課題である.
公開日・更新日
公開日
2023-07-28
更新日
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