文献情報
文献番号
202209059A
報告書区分
総括
研究課題名
国民健康・栄養調査における栄養摂取状況調査手法の見直しに向けた基盤研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22FA2003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
瀧本 秀美(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 栄養疫学・食育研究部)
研究分担者(所属機関)
- 佐々木 敏(東京大学 大学院医学系研究科)
- 中出 麻紀子(兵庫県立大学 環境人間学部)
- 村上 健太郎(東京大学 大学院医学系研究科)
- 岡田 恵美子(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 栄養疫学・食育研究部)
- 松本 麻衣(医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 栄養疫学・食育研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
国民健康・栄養調査における栄養摂取状況調査から得られた結果は、健康日本21(第二次)目標項目のモニタリングや食事摂取基準策定、日本食品標準成分表、食料自給率、残留農薬の安全性に関する基礎資料等として広く活用されており、国民の食事から食品や栄養素等摂取量の代表値として極めて重要な調査である。しかし、現行の食事調査法である1日間の比例案分法は、調査者の負担が大きいために協力率低下を招く可能性や、習慣的な摂取量を評価できない等の指摘がされている。そこで、食事摂取量の結果を継続的に捉えていく観点も含めて、栄養摂取状況調査の見直しのための基礎資料を提示することを目的とする。
研究方法
下記に示す6つの分担研究に取り組んだ。
1) 日本人集団における食事摂取量を推定する質問票の妥当性研究の文献レビューを行い、国調への導入を検討可能な質問票が国内に存在するかを明らかにする。
2) 1)で抽出された日本人の習慣的な食事摂取量を推定する質問票を用いた疫学研究の整理をする
3) 日本人成人における食事摂取量の季節間変動を明らかにする
4) 食事記録法又は思い出し法に加えて、習慣的摂取量推定のための質問票を併用している諸外国の栄養調査を文献レビューと公開情報を検索し、整理する。
5) 現在国民の食生活を評価するツールとして用いられている比例案分法から評価可能な内容の提案
6) 国民健康・栄養調査の実施を担っている自治体へのオンライン質問票調査、およびフォーカスグループインタビュー調査を通じて、自治体側での調査実施の現状と現在の手法に対する自治体側の意見を整理する。
1) 日本人集団における食事摂取量を推定する質問票の妥当性研究の文献レビューを行い、国調への導入を検討可能な質問票が国内に存在するかを明らかにする。
2) 1)で抽出された日本人の習慣的な食事摂取量を推定する質問票を用いた疫学研究の整理をする
3) 日本人成人における食事摂取量の季節間変動を明らかにする
4) 食事記録法又は思い出し法に加えて、習慣的摂取量推定のための質問票を併用している諸外国の栄養調査を文献レビューと公開情報を検索し、整理する。
5) 現在国民の食生活を評価するツールとして用いられている比例案分法から評価可能な内容の提案
6) 国民健康・栄養調査の実施を担っている自治体へのオンライン質問票調査、およびフォーカスグループインタビュー調査を通じて、自治体側での調査実施の現状と現在の手法に対する自治体側の意見を整理する。
結果と考察
本研究を通じて、下記の通り大きく4つの内容が明らかとなった:①諸外国におけるほとんどの栄養調査の食事調査方法は24時間思い出し法であること、ならびに、習慣的な摂取状況の評価やデータ精度の向上を目的として、24時間思い出し法に追加して食物摂取頻度調査票を用いた調査を取り入れる場合がある、②調査に携わる自治体側の意見は、調査の協力率の向上、それに伴う調査精度の向上を望む声が多く、その理由として、自治体として負担が大きいにもかかわらず、現状の協力率でのサンプルサイズでは、都道府県の代表値としての値が得られないことが大きな理由であり、都道府県の健康増進計画の目標設定、さらにはモニタリングをしていくためには、国民健康・栄養調査だけでなく、県民等の栄養調査を追加実施もしくは別途実施しなければいけない負担が大きくのしかかっている、③日本人集団における食事摂取量推定のための質問票の妥当性研究のレビューにおいて、日本人の食事摂取量を推定可能な質問票が11件あるものの、評価する目的や対象者に応じ、使用する調査票を決める必要がある。④比例案分法は、食事回数や共食などを評価することができ、食環境の整備についての研究において活用できる可能性がある。
上記を踏まえると、国の代表値を得ることを目的に実施していることが多い諸外国と違い、日本では国の代表値を得ること、およびその値を健康日本21(第二次)などの国の施策のモニタリングとして用いているだけでなく、都道府県健康増進計画の目標作成ならびにモニタリングにも活用できるような仕組みを構築していくことが求められている。また、対象者が記録を行う負担がない、24時間思い出し法を用いる諸外国が多いことを鑑みると、国際比較をしていくために、24時間思い出し法の導入を検討する必要があるかもしれない。さらに、被調査者および調査者ともに負担を軽減すること、かつ聞き取りなどで長時間の拘束が必要ない方法の導入を検討する必要もあり、食物摂取頻度調査法等の質問紙調査の導入やオンライン調査の導入を検討する必要があるかもしれない。ただし、これまでのような集団の平均値の評価も必要であり、食物摂取頻度調査法を用いる場合には、対象者の一部に食事記録法を、できれば複数日実施する方法の検討が必要であろう。
上記を踏まえると、国の代表値を得ることを目的に実施していることが多い諸外国と違い、日本では国の代表値を得ること、およびその値を健康日本21(第二次)などの国の施策のモニタリングとして用いているだけでなく、都道府県健康増進計画の目標作成ならびにモニタリングにも活用できるような仕組みを構築していくことが求められている。また、対象者が記録を行う負担がない、24時間思い出し法を用いる諸外国が多いことを鑑みると、国際比較をしていくために、24時間思い出し法の導入を検討する必要があるかもしれない。さらに、被調査者および調査者ともに負担を軽減すること、かつ聞き取りなどで長時間の拘束が必要ない方法の導入を検討する必要もあり、食物摂取頻度調査法等の質問紙調査の導入やオンライン調査の導入を検討する必要があるかもしれない。ただし、これまでのような集団の平均値の評価も必要であり、食物摂取頻度調査法を用いる場合には、対象者の一部に食事記録法を、できれば複数日実施する方法の検討が必要であろう。
結論
本研究を通じて、国民健康・栄養調査における今後の栄養摂取状況調査の在り方を検討するための基礎資料を作成した。その結果、本研究班としては、下記の内容を提案する。
国民健康・栄養調査では、県民栄養調査等(都道府県レベルでの代表値が得られるサンプルサイズの確保も含めて)との連携を築きながら、調査協力率を上げるべく、対象者全員に対しては負担の少なく習慣的な摂取状況を把握することができる食物摂取頻度調査法などの質問紙調査を、その中の一部の対象者(母集団を代表する)には、集団の平均値を得るために必要な食事記録法などの詳細調査(できれば複数日)を実施する方針を提案する。また、将来的な状況を見据えて、オンランイン調査の導入や24時間思い出し法の標準化に向けたトレーニング環境の整備なども検討していく必要性を提案する。
国民健康・栄養調査では、県民栄養調査等(都道府県レベルでの代表値が得られるサンプルサイズの確保も含めて)との連携を築きながら、調査協力率を上げるべく、対象者全員に対しては負担の少なく習慣的な摂取状況を把握することができる食物摂取頻度調査法などの質問紙調査を、その中の一部の対象者(母集団を代表する)には、集団の平均値を得るために必要な食事記録法などの詳細調査(できれば複数日)を実施する方針を提案する。また、将来的な状況を見据えて、オンランイン調査の導入や24時間思い出し法の標準化に向けたトレーニング環境の整備なども検討していく必要性を提案する。
公開日・更新日
公開日
2024-03-28
更新日
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