超高解像度MRI顕微鏡の開発

文献情報

文献番号
200912002A
報告書区分
総括
研究課題名
超高解像度MRI顕微鏡の開発
課題番号
H19-ナノ・一般-002
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
福山 秀直(京都大学 医学研究科附属 高次脳機能総合研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 上野智弘(京都大学 医学研究科)
  • 武田和行(京都大学 理学研究科)
  • 土井信昭(株式会社サムウエイ)
  • 広瀬量一(株式会社ジャパンスーパーコンダクタテクノロジー)
  • 塩田浩平(京都大学 医学研究科)
  • 杉本直三(京都大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
26,426,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、細胞レベルの空間分解能でのexvivo撮像を可能とする超高解像度MRI顕微鏡を開発することを目的とする。具体的には、静磁場強度14.1テスラの小径ボア内に、傾斜磁場強度3T/mの傾斜磁場コイル、高感度ソレノイド型受信コイル、などを用い、空間分解能20ミクロン以下を目指す。
研究方法
本年度は、MRI顕微鏡プローブの開発、MRI顕微鏡システムの開発、及びMRI顕微鏡による小型魚類の撮像を行った。プローブ開発に於いては、傾斜磁場強度の向上、送受信NMRコイルの共鳴回路におけるQ値の向上、安定度の向上を中心に行なった。システム開発に関しては、システム制御において、昨年度に比べ、スピンエコー法によるパルスシーケンス設定でのパラメータを増やし、より細かい設定を可能とした。また画像再構成においては、大量のデータの読み込みと出力画像のFOVの変更を可能とさせた。画像撮像に関しては、解像度20ミクロンによるメダカの3次元画像、特にp53がん抑制遺伝子を変異させたメダカと野生型メダカの画像を比較を行った。
結果と考察
プローブ開発の結果、傾斜磁場コイルに関しては、最大傾斜磁場強度がx方向3.6T/m、y方向2.7T/m、z方向3.0T/mとなり、3倍程度の改善が得られ、送受信コイルは、コンパクト化によりQ値が120となり、2倍程度昨年度に比べ改善された。またMRI顕微鏡プローブの構造の安定化により、半年以上にわたり安定して動作するものが開発できた。画像撮像に於いては、プローブの改良による信号ノイズ比向上のため、撮像時間をプロトタイプ機の70時間から22時間へと短縮することが出来た。がん抑制遺伝子を変異させたメダカと野生型メダカの画像を比較することにより、表現型の違いが明らかとなった。
結論
本年度の研究により、解像度20ミクロンの3次元画像の取得が可能となった。このMRI顕微鏡の開発をさらに進めることによって、細胞レベルである10ミクロンにおける撮像が可能となると考えられる。これにより、非凍結病理検査などの臨床的応用が可能となると考えられる。また、野生型と変異型の表現型の違いを時系列で得ることによって、がん抑制遺伝子の働きの解明に貢献できると考えられ、ガン治療へ向けた貢献が期待できる。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200912002B
報告書区分
総合
研究課題名
超高解像度MRI顕微鏡の開発
課題番号
H19-ナノ・一般-002
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
福山 秀直(京都大学 医学研究科附属 高次脳機能総合研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 上野智弘(京都大学 医学研究科)
  • 武田和行(京都大学 理学研究科)
  • 土井信昭(株式会社サムウエイ)
  • 広瀬量一(株式会社ジャパンスーパーコンダクタテクノロジー)
  • 塩田浩平(京都大学 医学研究科)
  • 杉本直三(京都大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、細胞レベルの空間分解能での撮像を可能とする超高解像度MRI顕微鏡を開発することを目的とする。具体的には、静磁場強度14.1テスラの小径ボア内に、傾斜磁場強度3T/mの傾斜磁場コイル、高感度ソレノイド型受信コイル、などを用い、空間分解能20ミクロン以下を目指す。
研究方法
初年度は、MRI室の整備、14.1テスラ静磁場マグネットや600MHzスペクトロメータなど大型機器の開発を行い、2年目は、傾斜磁場コイルやRF送受信コイルなどを含むプローブ開発とそれらを制御するシステムソフトウェア開発などによりプロトタイプ機を完成、最終年度はそのプロトタイプ機の改良及び撮像実験を行った。送受信コイルは、最も感度の高いソレノイドタイプを、傾斜磁場コイルは、送受信コイルを挟み込むようにボアの軸に垂直に配置するbi-planeタイプを採用した。撮像対象となる試料は、送受信コイル内に挿入した内径4.2mmのNMR管内に設置した。また撮像対象としては、主に入手が容易なメダカを用いた。特に、正常の野生型メダカの他に、p53ガン抑制遺伝子欠損メダカも撮像し、その2種を比較した。
結果と考察
最終的なハードウェア性能は、傾斜磁場コイルの最大傾斜磁場強度がx方向3.6T/m、y方向2.7T/m、z方向3.0T/m、送受信コイルのQ値が120であった。その結果、3次元スピンエコー法を用いて、空間解像度20ミクロン(X, Y, Z軸の3方向とも)の3次元画像撮像を達成した。撮像時間は22時間であった。また開発した装置は、半年以上にわたり安定して動作する完成度の高いものであった。得られたメダカの3次元画像には、各臓器の形状や配置が明確に描出されており、がん抑制遺伝子欠損メダカと野生型メダカの画像を比較することにより、表現型の違いが明らかとなった。
結論
本年度の研究により、解像度20ミクロンの3次元画像の取得が可能となった。このMRI顕微鏡の開発をさらに進めることによって、細胞レベルである10ミクロンよりさらに高解像度の撮像が可能となると考えられる。これにより、非凍結病理検査などの臨床的応用が可能となると考えられる。また、野生型と変異型の表現型の違いを時系列で得ることによって、がん抑制遺伝子の働きの解明に貢献できると考えられ、ガン治療へ向けた貢献が期待できる。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200912002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 世界最高レベルの静磁場強度である14テスラマグネットを用いて、X,Y,Zの3方向とも空間解像度20ミクロン以下という、国内最高の解像度での画像撮像を達成した。所有する傾斜磁場コイル用電源アンプの限界により、米国における最高解像度(数ミクロン程度)には及ばなかったが、国内初の超高磁場マグネットを用いたMRI顕微鏡開発で一定の成果を達成したことは、既に海外に比較して遅れを取った日本のMRI物理・工学研究から見て、非常に意義深いと考える。
臨床的観点からの成果
 本研究では、撮像対象として、正常のメダカとp53ガン抑制遺伝子欠損メダカを撮像、メダカの臓器描出を高精細な画質で可能とし、開発したMRI顕微鏡の基礎臨床実験に有用であることを示した。またこれは、将来的に、細胞単位での良/悪性の診断や、iPS細胞など最先端細胞工学による治療の有効性の診断なども、MRI顕微鏡を用いて行える可能性を示唆しており、今後の低侵襲性医療への有用性を示すことが出来たと考える。
ガイドライン等の開発
ガイドライン等の開発は、本研究では行っていない。
その他行政的観点からの成果
 本研究で開発したMRI顕微鏡は、MRIのもつ機能情報(代謝情報等)収集という特徴と、顕微鏡の持つ高空間解像度という特徴を兼ね備えており、将来的には、細胞単位での良/悪性の診断や、iPS細胞など最先端細胞工学による治療の有効性の診断などが期待されている。それは、今後の医療をより侵襲性が低い、患者にとって低負担なものへの転換を可能とするものであり、本研究により、将来における医療費削減などの可能性を示すことが出来た。
その他のインパクト
 平成21年度日本磁気共鳴医学会大会(MR学会)でのランチョンセミナーや仏国立研究所NeuroSpinでの招待講演を通し、本研究の成果をMR業界に広く公表した。また平成21年度は、京都大学で5年前から開始さされているナノメディシン融合教育ユニットに講師側として参加、生徒側として参加した大学院生や一般社会人に対し、本研究の成果を紹介した上で、開発の一部を実習として行い、限られた人数ではあるが、一般社会人に対しより深く、本研究の内容を理解して貰うことが出来た。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
第37回日本磁気共鳴医学会大会におけるランチョンセミナー、及び仏国立研究所NeuroSpinなどにおける招待講演

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-