文献情報
文献番号
202205006A
報告書区分
総括
研究課題名
日中韓における少子高齢化の実態と対応に関する研究
課題番号
20BA2001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
林 玲子(国立社会保障・人口問題研究所)
研究分担者(所属機関)
- 小島 克久(国立社会保障・人口問題研究所 情報調査分析部)
- 竹沢 純子(国立社会保障・人口問題研究所 企画部)
- 中川 雅貴(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
- 佐藤 格(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
- 蓋 若エン(ガイ ジャクエン)(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部)
- 菅 桂太(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
- 守泉 理恵(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題解決推進のための行政施策に関する研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
5,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
日中韓において少子高齢化は急速に進行し、2022年の合計特殊出生率は日本1.30、韓国0.78となり、また中国は1.08という報告もある。また、中国が2022年に人口減少になったことで、いずれの国も人口減少社会となった。
本研究を始めた2020年では、日韓の少子化に対する危機感は強かったが、中国では「少子化」に対応するよりも、一人っ子政策の緩和、という政策フェーズであったが、2021年に政府文書として初めて「適度生育水平」、つまり適度な出生率、という言葉が用いられたことで、出生抑制施策は終焉し、日韓同様の少子化対策を強化する方向に転換した。
このような中、本研究は、それぞれの国の人口動向を踏まえたうえで、人口を左右させる施策がどのように推移し、直近でどのような施策を行っているか、その要素を明らかにし、アジアの他国への適用可能性を検討することを目的としている。
本研究を始めた2020年では、日韓の少子化に対する危機感は強かったが、中国では「少子化」に対応するよりも、一人っ子政策の緩和、という政策フェーズであったが、2021年に政府文書として初めて「適度生育水平」、つまり適度な出生率、という言葉が用いられたことで、出生抑制施策は終焉し、日韓同様の少子化対策を強化する方向に転換した。
このような中、本研究は、それぞれの国の人口動向を踏まえたうえで、人口を左右させる施策がどのように推移し、直近でどのような施策を行っているか、その要素を明らかにし、アジアの他国への適用可能性を検討することを目的としている。
研究方法
研究最終年度である今年度は、少子高齢化対策のうち、少子化対策(ワークライフバランス(WLB)、保育制度、若者支援・結婚支援・文化的側面、リプロダクティブヘルス)、介護制度、年金制度に関し、日中韓の専門家とオンライン・ワークショップを行い、「日中韓少子高齢化施策要素表(少子化・介護・年金)」をとりまとめ、本報告書に別添資料として収載した。本報告書守泉論文、佐藤論文は上記施策要素表をさらに詳細に分析している。
国内・国際人口移動は、人口を左右する施策として人口政策、少子高齢化施策と位置づけられるものであるが、今年度の三か国ワークショップのテーマとしては取り上げず、本報告書中川論文にて台湾を含め比較分析を行った。
さらに、日本における父親の育児休暇取得の実証分析(本報告書竹沢論文)、OECD Family Databaseの日本データの改善(本報告書竹沢資料)、日中韓の子育て・介護の生活時間(盖論文)、シンガポールにおける子ども育成口座とベビーボーナス制度(菅論文)、台湾における新型コロナウィルス感染症対策と外国人介護人材の動向(小島論文)といった関連分析を行った。
初年度からの研究成果および上記ワークショップでとりまとめた日中韓の少子高齢化対策の経験に関し、アジア他国への適用可能性を検討するために、マレーシア、タイ、インドにて報告を行い、関係者と意見交換を行った。
国内・国際人口移動は、人口を左右する施策として人口政策、少子高齢化施策と位置づけられるものであるが、今年度の三か国ワークショップのテーマとしては取り上げず、本報告書中川論文にて台湾を含め比較分析を行った。
さらに、日本における父親の育児休暇取得の実証分析(本報告書竹沢論文)、OECD Family Databaseの日本データの改善(本報告書竹沢資料)、日中韓の子育て・介護の生活時間(盖論文)、シンガポールにおける子ども育成口座とベビーボーナス制度(菅論文)、台湾における新型コロナウィルス感染症対策と外国人介護人材の動向(小島論文)といった関連分析を行った。
初年度からの研究成果および上記ワークショップでとりまとめた日中韓の少子高齢化対策の経験に関し、アジア他国への適用可能性を検討するために、マレーシア、タイ、インドにて報告を行い、関係者と意見交換を行った。
結果と考察
日中韓三か国の少子化対策、介護制度、年金制度は、時系列的には、日本、韓国、中国の順に整備が進んでおり、少子化対策、介護制度では中国の施策は地域試行事業の段階である項目も多い。しかしながら、中国では韓国ではまだ成し遂げられていない公務員年金とその他の年金との統合を日本同様2015年に実施しており、社会主義的政策決定メカニズムの強靭さを表している。今後急速な高齢者の増大に対して、中国のドラスティックな政策進展も想定されよう。
産前・産後休暇、育児休暇、児童手当といった少子化対策の主要な施策は日本では早くから整備されているが韓国も近年急速に整備されているところ、中国では育児休暇や児童手当については試行段階であるが、中国では日韓にはない生育保険という制度があり、今後の施策展開が注目される。日本ではいまだ待機児童問題は解消されていないが、韓国では大規模な政策が講じられ、定員の余りが問題になるほどである。日本にある、所得税の配偶者控除や年金の第三号被保険者、出産は病気ではないので健康保険の適用を受けない、といった制度は日本固有のもので、中韓にはみられない。
今回は少子化対策として日本の施策枠組から韓国・中国の施策を比較したため、中国の生育保険制度など、枠組にはまらない施策もあった。さらに、シンガポールにみられる子ども育成口座は、韓国、中国、その他諸外国でも制度があり、制度枠組として今後検討に値する。
日中韓とも、介護制度は社会保険方式であり類似しているが、アジア他国においては医療制度が税方式の国も少なくなく、そのような医療制度に付け加え介護制度を構築する際には社会保険方式がなじみにくいことも考えられよう。また、介護制度の構築の前に、普遍的で良質な医療制度が必要であり、医療と介護を一体的にみていくことが必要と考えられる。
産前・産後休暇、育児休暇、児童手当といった少子化対策の主要な施策は日本では早くから整備されているが韓国も近年急速に整備されているところ、中国では育児休暇や児童手当については試行段階であるが、中国では日韓にはない生育保険という制度があり、今後の施策展開が注目される。日本ではいまだ待機児童問題は解消されていないが、韓国では大規模な政策が講じられ、定員の余りが問題になるほどである。日本にある、所得税の配偶者控除や年金の第三号被保険者、出産は病気ではないので健康保険の適用を受けない、といった制度は日本固有のもので、中韓にはみられない。
今回は少子化対策として日本の施策枠組から韓国・中国の施策を比較したため、中国の生育保険制度など、枠組にはまらない施策もあった。さらに、シンガポールにみられる子ども育成口座は、韓国、中国、その他諸外国でも制度があり、制度枠組として今後検討に値する。
日中韓とも、介護制度は社会保険方式であり類似しているが、アジア他国においては医療制度が税方式の国も少なくなく、そのような医療制度に付け加え介護制度を構築する際には社会保険方式がなじみにくいことも考えられよう。また、介護制度の構築の前に、普遍的で良質な医療制度が必要であり、医療と介護を一体的にみていくことが必要と考えられる。
結論
日中韓の少子高齢化施策は、中国が2021年より少子化対策に舵を切り、2022年から人口減少社会となったことで、今後同じ課題を抱えながら、類似した既存の制度をどう改革・発展させていくか、相互に学ぶべきことが多いと考えられる。
また、アジアの他地域と比較すると日中韓の独自性が逆に浮かび上がるが、異なった制度基盤であっても、施策の要素別に実績等のデータを用い比較することで、お互いの国に有用な知見を得ることができよう。
また、アジアの他地域と比較すると日中韓の独自性が逆に浮かび上がるが、異なった制度基盤であっても、施策の要素別に実績等のデータを用い比較することで、お互いの国に有用な知見を得ることができよう。
公開日・更新日
公開日
2023-08-02
更新日
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