文献情報
文献番号
202127003A
報告書区分
総括
研究課題名
公衆浴場におけるレジオネラ症対策に資する検査・消毒方法等の衛生管理手法の開発のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
19LA1006
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
前川 純子(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
- 泉山 信司(国立感染症研究所寄生動物部)
- 佐々木 麻里(大分県衛生環境研究センター 微生物担当)
- 栁本 恵太(山梨県衛生環境研究所 微生物部)
- 黒木 俊郎(岡山理科大学 獣医学部)
- 金谷 潤一(富山県衛生研究所 細菌部)
- 田栗 利紹(長崎県環境保健研究センター 保健衛生研究部)
- 中西 典子(神戸市健康科学研究所 感染症部)
- 淀谷 雄亮(川崎市健康福祉局 健康安全研究所)
- 森 康則(三重県保健環境研究所 衛生研究室 衛生研究課)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
22,404,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
公衆浴場のレジオネラ症対策の向上のためには適切な衛生管理が要求される。そのための消毒法等の開発・評価およびレジオネラ検査法の改善・普及等を行う。令和元年9月に「公衆浴場における衛生等管理要領等」が改正され、また、「公衆浴場における浴槽水等のレジオネラ属菌検査方法について」の通知(薬生衛発0919第1号)が出されたのは、前研究班(公衆浴場等施設の衛生管理におけるレジオネラ症対策に関する研究班)を初めとするこれまでのレジオネラ研究班の成果によるものである。本研究班は改正された衛生等管理要領をより実効あるものにするために研究を遂行する。
研究方法
各研究項目は、1から数名の研究分担者および研究協力者が参加し、実施された。
結果と考察
有機物が含まれている温泉でモノクロラミン消毒が有効であることが確認できた。モノクロラミン消毒下での増殖が問題となっているMycobacterium phleiに対する消毒剤の効果を試験管内で確認したところ、実際は遊離塩素よりモノクロラミンの方が有効であることが示され、高頻度の配管洗浄、高濃度の配管消毒等のバイオフィルム対策を徹底することの重要性が改めて示唆された。公衆浴場における適切な遊離塩素消毒で、SARS-CoV-2は短時間に不活化されることが明らかとなった。毎日のろ過器逆洗に電解オゾン水供給を組み合わせる方法は、浴槽水の消毒剤濃度を維持し易くし、継続して逆洗水のレジオネラ属菌を不検出とすることが可能であった。
遊離塩素により浴槽水が十分に消毒された細菌の状態をフローサイトメトリーで検出することで「清浄」か「細菌増殖」かを5分で判定する迅速評価法を開発し、実証してきたが、本法の共同調査を4つの協力機関で実施して技術の標準化を図った。同法により、オゾンを用いた逆洗方法の有効性を確認した。
浴槽水、湯口水、シャワー水、カラン水、採暖槽水等について培養検査および迅速検査を行い、レジオネラ属菌による汚染実態を明らかにした。レジオネラ属菌の検出率および病原性との関連が示唆されているlag-1遺伝子の検出率は、地域によって差が認められた。新しい培養検査法であるレジオラート/QT法は、検体の処理や結果の判定が容易で、平板培養法との結果一致率も高いことから、日常の衛生管理に有用な検査法であることが示されたが、3日以前に陽性となった場合、偽陽性である可能性が高いことが分かった。また、検水を加熱処理することで、定性試験も可能となった。モバイル型qPCR装置でのレジオネラ属菌の検出率は、プロトコルの改良で感度がLAMP法と同等になったが、今後現場で活用できるように濃縮法のプロトコルを工夫する必要があると思われた。感染源を特定するためには、環境検体から患者由来株の大半を占めるLegionella pneumophila 血清群1 (Lp1) を分離することが重要となるため、 Lp1で感作した免疫磁気ビーズ(Lp1-IMB)による選択的濃縮法を検討した。平板培養法と併用することでLp1の検出頻度が上昇した。
次世代シークエンサーを用いて浴槽水とシャワー水の菌叢解析を行ったところ、検水の種類によって菌叢が異なっていた。菌叢の多様性が高い検水からレジオネラ属菌が分離されており、多様な細菌が増殖しやすい条件下でレジオネラ属菌も増殖しやすい可能性がある。次世代シークエンサーを用いて、1つの集団感染事例に由来するLp株のSNPs解析を行った。 MLVA法は施設から検出される菌株の同一性(定着性)や新規性を継続的に調べることができ、施設への衛生指導に役立てることができると考えられた。医療機関の給水・給湯系のレジオネラ汚染を調査した。
公衆浴場等の衛生管理を計画的、体系的に行うための体制つくりに資するための総合衛生管理プログラムと、公衆浴場の浴槽並びに関連設備の具体的な衛生管理を記述した一般衛生管理の2つのパートからなる「入浴施設における衛生管理の手引き」を作成した。「公衆浴場等入浴施設が原因と疑われるレジオネラ症調査の手引き」を作成し、研究班のホームページ上に公開した。レジオネラ外部精度管理サーベイの継続実施をサポートし、本研究班からは地方衛生研究所等70機関が参加した。「レジオネラ属菌検査の内部精度管理のための手引き」を作成し、検証した。
遊離塩素により浴槽水が十分に消毒された細菌の状態をフローサイトメトリーで検出することで「清浄」か「細菌増殖」かを5分で判定する迅速評価法を開発し、実証してきたが、本法の共同調査を4つの協力機関で実施して技術の標準化を図った。同法により、オゾンを用いた逆洗方法の有効性を確認した。
浴槽水、湯口水、シャワー水、カラン水、採暖槽水等について培養検査および迅速検査を行い、レジオネラ属菌による汚染実態を明らかにした。レジオネラ属菌の検出率および病原性との関連が示唆されているlag-1遺伝子の検出率は、地域によって差が認められた。新しい培養検査法であるレジオラート/QT法は、検体の処理や結果の判定が容易で、平板培養法との結果一致率も高いことから、日常の衛生管理に有用な検査法であることが示されたが、3日以前に陽性となった場合、偽陽性である可能性が高いことが分かった。また、検水を加熱処理することで、定性試験も可能となった。モバイル型qPCR装置でのレジオネラ属菌の検出率は、プロトコルの改良で感度がLAMP法と同等になったが、今後現場で活用できるように濃縮法のプロトコルを工夫する必要があると思われた。感染源を特定するためには、環境検体から患者由来株の大半を占めるLegionella pneumophila 血清群1 (Lp1) を分離することが重要となるため、 Lp1で感作した免疫磁気ビーズ(Lp1-IMB)による選択的濃縮法を検討した。平板培養法と併用することでLp1の検出頻度が上昇した。
次世代シークエンサーを用いて浴槽水とシャワー水の菌叢解析を行ったところ、検水の種類によって菌叢が異なっていた。菌叢の多様性が高い検水からレジオネラ属菌が分離されており、多様な細菌が増殖しやすい条件下でレジオネラ属菌も増殖しやすい可能性がある。次世代シークエンサーを用いて、1つの集団感染事例に由来するLp株のSNPs解析を行った。 MLVA法は施設から検出される菌株の同一性(定着性)や新規性を継続的に調べることができ、施設への衛生指導に役立てることができると考えられた。医療機関の給水・給湯系のレジオネラ汚染を調査した。
公衆浴場等の衛生管理を計画的、体系的に行うための体制つくりに資するための総合衛生管理プログラムと、公衆浴場の浴槽並びに関連設備の具体的な衛生管理を記述した一般衛生管理の2つのパートからなる「入浴施設における衛生管理の手引き」を作成した。「公衆浴場等入浴施設が原因と疑われるレジオネラ症調査の手引き」を作成し、研究班のホームページ上に公開した。レジオネラ外部精度管理サーベイの継続実施をサポートし、本研究班からは地方衛生研究所等70機関が参加した。「レジオネラ属菌検査の内部精度管理のための手引き」を作成し、検証した。
結論
公衆浴場のレジオネラ症対策に資する検査・消毒方法等について、効果的な手法の検討を行うことができた。
公開日・更新日
公開日
2025-05-28
更新日
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