麻薬の代替となる薬用植物栽培の国際的普及に関する研究

文献情報

文献番号
200838012A
報告書区分
総括
研究課題名
麻薬の代替となる薬用植物栽培の国際的普及に関する研究
課題番号
H18-医薬・一般-016
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
佐竹 元吉(お茶の水女子大学 生活環境教育研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 関田 節子(徳島文理大学 植物学科 香川薬学部)
  • 長野 哲雄(東京大学大学院薬学系研究科・生物有機化学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
6,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
インドシナ半島における麻薬及びATS生産撲滅のため、代替え薬用植物の導入と麻薬及び覚せい剤生産起源の解析により、流通量の減少を目指した。
研究方法
研究はインドシナ半島の乱用薬物の対象地域に入り、栽培指導及び研究材料をおこない、集めた素材の成分分析をおこなった。覚せい剤原料の起源解析は収集試料について安定同位体比測定を行い比較した。
結果と考察
インドシナ半島における乱用薬物の生産は様々な対策が各国の協力で進められているが、然として継続されている。当地域での麻薬原料植物生産減少の為に、薬用植物を植え転作を促進する支援をこれまで行い、徐々に成果をあげてきた。本年度、ミャンマーではベニバナ、ソバ、ブドウの大量栽培の基盤を確立できた。タイでは代替え薬用植物調査のために保健省伝統医薬局と交流した。カンボジアでは薬用植物を利用するための薬用植物園造成と伝統医師の研修制度創立事業に技術支援を行なった。薬用ランに関して、国内で入手可能なDendrobium属を収集した。Dendrobium nobileの園芸種からdendrobin及びnobilinの標準品を単離精製した。また、種の鑑定のために遺伝子解析も行った。覚せい剤の出発原料エフェドリン類の炭素・窒素・水素の安定同位体比がどの程度製品である覚せい剤メタンフェタミンに保持されるか検討した。その結果、炭素・窒素同様に、原料エフェドリン類の水素の安定同位体比も製品であるメタンフェタミンにほぼ保持されていることを確認した。高精度の原料起源推定が可能となった。
結論
2008年も国内外で大麻や覚せい剤等の事件が報道され、関係機関は関係国と連携を強化し現状に対応できる対策に追われている。代替植物開発や覚せい剤密造原料に関する本研究は国際的な薬物密造撲滅対策を強く支援する。覚せい剤撲滅対策の重要な原料物質エフェドリン類の起源解析は化学的な情報である。本年度の成果である覚せい剤結晶そのものの炭素・窒素・水素の安定同位体比を組み合わせての検討は、関係国とデータ交換により、原料物質規制対策に役立つ化学情報が国際的に役立つものになる。継続してデータの蓄積が重要である。けし代替植物に関しては、長年ミャンマー政府より要望のミャンマーの薬用植物の整理をし、現地で利用できるミャンマー語の植物誌に纏めたことで、現地の人達が今後麻薬代替植物栽培において役立つ本年度の大きな成果であった。

公開日・更新日

公開日
2009-04-09
更新日
-

文献情報

文献番号
200838012B
報告書区分
総合
研究課題名
麻薬の代替となる薬用植物栽培の国際的普及に関する研究
課題番号
H18-医薬・一般-016
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
佐竹 元吉(お茶の水女子大学 生活環境教育研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 関田 節子(徳島文理大学 植物学科 香川薬学部)
  • 長野 哲雄(東京大学大学院薬学系研究科・生物有機化学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究はケシ、覚せい剤、MDMAの密造に使用される原料植物の実態を植物学及び化学の両面から把握し、不正な原料物質の栽培や流通防止に役立つ情報提供を目的とし、アヘン等に替わる経済的に有望な薬用植物の資源調査、新規の代替植物発見や薬用資源の確保及び保護について検討した。
研究方法
代替え薬用植物の種類の選択、野生薬用植物の資源調査として薬用植物の転作を促進する支援を三年間に亘り行い成果をあげてきた。ミャンマーでは、ベニバナ、ソバ、ブドウの大量栽培を確立した。ミャンマーで伝統薬用植物を調査し、有用な五百種みいだし、成分や活性を調べた。野生資源植物は、ラン科のセッコク類の保存と特性調査を行なった。タイ、カンボジア、ラオスでは伝統医薬の普及事業を行った。ATSの密造原料植物等の研究では、世界各地で流通している覚せい剤原料エフェドリン類を収集し、IR-MSを用いた炭素・窒素・水素の安定同位体比による覚せい剤プロファイリングの検討を行った。
結果と考察
ミャンマーでは、重要な薬用植物約百種を選び、その知識普及に役立つ薬用植物誌を完成させた。品質規格に関しては保健省伝統医薬局への技術援助が出来た。麻薬代替作物として栽培導入に役立つ熱帯感染症リーシュマニア原虫に対する活性を検討し、活性成分の分離・構造決定を試みた。初年度はチークノキ、次年度は青黒檀、最終年度は石斛について検討した。ATSの密造原料植物等に関する研究では、覚せい剤原料エフェドリン類の炭素・窒素の安定同位体比に水素の安定同位体比を加えて、エフェドリン類の起源推定法を検討した結果、その識別が明瞭になった。
結論
代替植物開発や覚せい剤原料に関する研究は国際的な薬物密造撲滅対策を支援するものである。その撲滅対策として原料物質エフェドリン類の起源解析は化学的な情報であり、覚せい剤結晶の炭素・窒素・水素の安定同位体比の検討は、関係国とデータ交換で、本研究による化学情報が国際的な原料規制対策に役立つものである。継続してのデータ蓄積が重要である。ケシ代替植物に関しては、長年ミャンマー政府関係者より要望されミャンマーの薬用植物種に関する情報収集して、原語の植物誌の出版は現地の人達が今後麻薬代替植物の栽培に役立つ本年度の大きな成果であった。本研究成果の普及は、カンボジア・タイ等での焼き畑放置地域の回復にも有用である。少数民族の定着と一部の村おこしも可能になる。

公開日・更新日

公開日
2009-04-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-01-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200838012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
国内での流通している麻薬及び覚せい剤の多くのものがインドシナ半島経由で持ち込まれることが多い。それらの国内への導入阻止に役立つ本研究の起源解明が原料規制対策に役立つ。日本政府は麻薬集約地域のインドシナ半島において本研究が着実に効果を上げていることを国連の委員会で報告し、高い評価を上げている。また、代替薬用植物は日本や中国への輸出だけではなく、インドシナ半島の各国でも、伝統薬の振興の動きと呼応して国内需要が高まってきており、本研究での成果を広く国内で教育、研修の場で役立ちつつある。
臨床的観点からの成果
なし
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
K.Mori、 M.Kawano、 H.Fuchino、 T.Ooi, M.Satake,et al.
Antileishmanial Compounds from Cordia fragrantissima Collected in Burma (Myanmar).
J. Nat. Prod. , 71 , 18-21  (2008)
原著論文2
T.Matsumoto, Y.Urano, Y.Makino, et al.
Evaluation of characteristic deuterium distributions of ephedrines and methamphetamines by NMR spectroscopy for drug profiling.
Anal Chem. , 80 , 1176-1186  (2008)
原著論文3
Y.Makino, Y.Urano, T.Nagano
Investigation of the origin of ephedrine and methamphetamines by stable isotope ratio mass spectrometry: a Japanese experience.
Bull. Narc. , 57 , 63-78  (2005)

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-