食品中に残留する農薬等におけるリスク管理手法の精密化に関する研究

文献情報

文献番号
200837010A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中に残留する農薬等におけるリスク管理手法の精密化に関する研究
課題番号
H18-食品・一般-010
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 保博(財団法人残留農薬研究所 化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 小田中 芳次(財団法人残留農薬研究所 化学部)
  • 飯島 和昭(財団法人残留農薬研究所 化学部)
  • 永山 敏廣(東京都健康安全研究センター 食品化学部)
  • 根本 了(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品中残留農薬のリスク管理手法の精密化に役立てる為,畜水産食品中の残留農薬について,1)市販畜水産食品中における残留実態を明らかにするほか,2)公定試験法の汎用性を高めるための検証を行う;3)一律基準が適用される農薬約200種の検査法を開発する。農産食品については,4)残留基準設定の基礎となる作物残留試験の評価基準と最大残留量の推定方法を検討し,前者について指針案に纏めるほか,5)加工の影響を評価する試験法とその結果を暴露評価に反映させる手順を提案する。また,既存の加工データを収集・整理する。
研究方法
1)愛知で 約300種の農薬について市販の畜水産食品62検体を通知のGC/MS及びLC/MSによる一斉試験法(及び改良法)で分析したほか,2)厚労省が開発中のAcCN抽出法における抽出時のセライト及び塩酸添加の影響,塩析時の塩酸添加の影響等を検証した。4)GC/MSによる通知一斉試験法ならびに上記AcCN抽出法を用いた厚労省で開発中のLC/MSによる一斉分析法が適用できなかった農薬について,簡易法(QuECHES変法)の適用性を7種食品で0.01と0.1ppmでの添加回収率等を基に検討した。4,5)試験指針,研究事例等は公開情報を基にした。

結果と考察
1)昨年同様,しじみで複数の農薬が検出された。2)試験法には不要な操作(セライト添加)が含まれていたほか,汎用性を高める改良の余地が認められた。3)AcCN/ヘキサンを抽出溶媒に用いた簡易法は12農薬成分に適用可能であった。4,5)米国,EU,豪州,国際機関等の作物残留性試験の評価基準等及び加工試験と結果の利用法に関する指針及び関連資料を収集して案に纏めたほか,公表加工データを収集・整理した。
結論
畜水産食品にはしじみのように環境の影響を受けやすい食品もあるため,残留農薬の残留実態把握には,更なるデータの蓄積と継続的な調査が必要と思われる。本研究により,畜水産物の試験法の操作性と汎用性を広げることができた。また,一律基準(0.01ppm)が適用される畜水産食品中の140種近くの残留農薬の一斉分析が可能となった。農産物への残留基準設定に使われる作物残留試験を適切に評価するため及び加工影響を暴露評価に含めるための指針案が纏められた。

公開日・更新日

公開日
2009-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200837010B
報告書区分
総合
研究課題名
食品中に残留する農薬等におけるリスク管理手法の精密化に関する研究
課題番号
H18-食品・一般-010
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 保博(財団法人残留農薬研究所 化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 小田中芳次(財団法人残留農薬研究所 化学部 )
  • 坂 真智子(財団法人残留農薬研究所 化学部 )
  • 飯島 和昭(財団法人残留農薬研究所 化学部 )
  • 根本 了(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
  • 永山 敏廣(東京都健康安全研究センター 食品化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品中残留農薬のリスク管理手法の精密化に役立てる為,畜水産食品中の残留農薬について,1)残留実態を明らかにする,2)公定試験法の汎用性を高めるための検証を行う,3)一律基準が適用される農薬約200種の検査法を開発する。農産食品については,4)残留基準設定の基礎となる作物残留試験の評価基準と最大残留量の推定方法を検討し,前者について指針案に纏めるほか,5)加工の影響を評価する試験法とその結果を暴露評価に反映させる手順を提案する。また,既存の加工データを収集・整理する。6)魚介類への残留基準設定法の指針を作る。
研究方法
約250-300種の農薬について愛知(とH18は東京)で,毎年約60検体の市販畜水産食品を通知一斉試験法(と改良法)で分析した。2)厚労省が開発中のAcCN抽出法における抽出時のセライト及び塩酸添加の影響,塩析時の塩酸添加の影響等を177農薬,4畜産試料で検証した。3)通知のGC/MSとLC/MSによる一斉試験法及び上記抽出法を用いた厚労省が開発中のLC/MSによる一斉分析法の適用性と妥当性を0.01ppmの添加回収率を主な指標にして,7または10種畜水産試料で検証した。
結果と考察
1)しじみでは複数の農薬が検出されるなど,残留実態の一端が把握された。2)試験法を改良して操作性及び汎用性を向上させることが出来た。3)通知試験法(GC/MS)の測定法の改良と,AcCN抽出法の適用(LC/MS)等により,140種近くの農薬の一斉分析が0.01ppmのLOQで可能であった。4,5)米国,EU,豪州,国際機関等の作物残留性試験法とその評価基準等及び加工試験と結果の利用法に関する指針及び関連資料を収集,解析して,指針案に纏めたほか,公表加工データを収集・整理した。6)設定の考え方と方法を指針案に纏めた。
結論
畜水産食品にはしじみのように環境の影響を受け易い食品もあり,実態把握には更なるデータ蓄積と継続的な調査が必要と思われる。畜水産物の試験法の操作性と汎用性を広げることができた。一律基準適用農薬約140種の畜水産品の試験が可能になったが,一斉分析に適さない約60種農薬の試験法が未整備で残った。農産物への残留基準設定に使われる作物残留試験を適切に評価するため及び加工影響を暴露評価に含める為の指針案が出来た。本研究の成果に基づいて魚介類に残留基準値が設定されるようになった。

公開日・更新日

公開日
2009-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200837010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ごく一部の農薬を除いて知見に乏しかった畜水産食品中の残留農薬の実態の一端を明らかにすることができた。一律基準適用農薬への通知試験法の適用を検討する中で,試料マトリックス効果低減の重要性を指摘し,その実用的低減法を見出した。また,畜水産食品中の比較的極性の高い残留農薬に対するアセトニトリル-ヘキサン抽出法の妥当性を実証した。
臨床的観点からの成果
畜水産食品の一斉試験法の適用範囲が広がったほか,効率化でき,検査項目の充実と効率化に寄与すると期待される。蓄水産食品に一律基準が適用される農薬約200種については従来,適切な分析法が無くて検査できなかったが,本研究の成果により140種近くの農薬が検査可能となり,より精密なリスク管理の実現に寄与すると期待される。
ガイドライン等の開発
魚介類への残留基準の設定法報告書は,H19年6月22日の薬事食品衛生審議会食品衛生分科会農薬動物用医薬品部会に報告し,全会一致で原案のまま了承された。
その他行政的観点からの成果
魚介類への残留基準の設定法に基づいた魚介類への最初の残留基準案がH19年8月の薬事食品衛生審議会食品衛生部会で承認され,H21年4月末までに,13農薬の魚介類残留基準が設定され,告示されるに至っている。
その他のインパクト
日本各地のしじみから一律基準を超える農薬が検出され,出荷停止が続くなど社会問題化していたことから,山陰中央新報と日本海新聞は,研究班による魚介類への残留基準の設定法』が部会で了承され,厚労省等は魚介類への一律基準の本格見直しに着手した等とH19年6月22日と23日の連日で,報道した。同設定法については,日本農薬学会の農薬環境科学研究会のシンポジウムで特別講演を行なって,公表した。

発表件数

原著論文(和文)
1件
上野ら:食品衛生学雑誌(2008)
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
4件
加藤:農薬環境科学研究(2007),15,7-14,小林ら:食品衛生学雑誌(2008),49, 249-260,小林ら:食品衛生学雑誌(2007),48, 186-193
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
食品衛生学会96回学術講演会(H20),日本農薬学会25回農薬環境科学研究会シンポジウム(H19),日本農薬学会29回(H18),30回(H19),31回(H20)残留分析研究会
学会発表(国際学会等)
2件
上野ら:第7回欧州残留農薬ワークショップ(2008), 飯島ら:第45回フロリダ残留農薬ワークショップ(2008)
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
成果である『魚介類への残留基準の設定法』に基づき,魚介類に残留農薬の基準が設定されるようになった(H19?)。H18年度成果を基に,畜産品中残留農薬の推定暴露量評価がされている。
その他成果(普及・啓発活動)
3件
ポジティブリスト制度につき,東大,長野県食品加工技術研究会,韓国農村振興庁環境科学研究所にて講演(2008)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
上野英二、椛島由佳、大島晴美、大野 勉
NCIモードGC/MSおよびデュアルカラムGC-マイクロECDによる畜水産物中残留農薬の多成分分析
食品衛生学雑誌 , 49 (6) , 390-398  (2008)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-