基礎工事用大型建設機械の転倒防止に関する研究

文献情報

文献番号
200836006A
報告書区分
総括
研究課題名
基礎工事用大型建設機械の転倒防止に関する研究
課題番号
H19-労働・一般-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
玉手 聡(独立行政法人 労働安全衛生総合研究所 建設安全研究グループ)
研究分担者(所属機関)
  • 末政直晃(東京都市大学工学部都市工学科)
  • 伊藤和也(独立行政法人 労働安全衛生総合研究所 建設安全研究グループ)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
5,733,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は基礎工事用大型建設機械(以下、「くい打機」という)の転倒防止に必要な措置を明らかにすることを目的とする。くい打機は重量100トン、高さ30mを超えるような大型構造物である。その転倒事故は社会的な問題となっており、安全対策の検討は急務な課題となっている。ところが、くい打機は一時的な施工に使用されるものであるため、その安定設置については対策が軽視されがちである。さらにこの機械は軟弱地盤の施工に用いられるため、現場が潜在的に不安定な支持地盤であるという問題も存在する。
研究方法
くい打機は現場内を自走して作業位置を移動させる。災害事例にはこの自走時におけるものが多く見られる。発生原因には現場の不陸や地盤支持力の変動が機械を揺動させ、動的に不安定化させたことが考えられる。この自走による動的な不安定化メカニズムを物理モデル化した実験と数値モデル化した解析により解明を試みた。
結果と考察
地盤側と機体側に存在するくい打機固有の不安定要因を詳細に調査した。その結果、自走に伴う機体の揺動は安定度が5度から10度の場合に0.5から1.2Hz付近に卓越が見られ,地盤の支持力は機体の安定度よりも卓越周波数に与える影響が大きいことがわかった.また、履帯の接地圧力は,自走中に変動することがわかった.その変動は,支持力の安全率と地盤支持力のバラツキに影響を受けることがわかった.実験的に得られた支持地盤と接地圧力の変動係数を用いて,支持力安全率(Fs)と地盤の破壊確率(Pf)の関係を調査した.その結果,現場で慣用的に用いられているFs=1.5におけるPfの値は0.162と0.003と大きく異なり,両変動係数は安全率の選択上,重要なパラメータであることがわかった.なお,本実験では現場地盤に存在する凹凸は考慮されていないため,実際のPfはこれよりも大きくなる可能性があり,引き続き検討が必要である.
結論
平成20年度(2年目)の研究では自走挙動の実験的解明を発展させて検討した。施工現場における支持力安全率とその不確実性を走行地盤にモデル化して履帯接地圧力に与える影響を比較した。その検討から、支持力にバラツキを有する地盤では機体揺動が増幅し、履帯接地圧力の変動係数は増加することがわかった。さらに国内外にの安全基準を調査した結果、その内容には若干の違いが見られることを指摘し、安定設置に必要な支持地盤の定量的な条件が未解明な問題として残されていることを明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2009-06-23
更新日
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