地域・市民の視点からみた医療の質・安全・機能の充実度と必要資源の評価・向上に関する研究開発

文献情報

文献番号
200835031A
報告書区分
総括
研究課題名
地域・市民の視点からみた医療の質・安全・機能の充実度と必要資源の評価・向上に関する研究開発
課題番号
H19-医療・一般-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
今中 雄一(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 石崎 達郎(京都大学 医学研究科)
  • 関本 美穂(京都大学 医学研究科)
  • 林田 賢史(京都大学 医学研究科)
  • 徳永 淳也(九州看護福祉大学 看護福祉学部)
  • 桑原 一彰(九州大学 医学研究院)
  • 廣瀬 昌博(島根大学医学部附属病院 病院医学教育センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 当研究は、地域の市民の日常生活と受療行動に密接する医療圏を地域中核医療機関を核の一つとして捉え、地域医療機能の充実度の系統的評価方法と向上に結びつける方法論の研究開発を行うことを目的とする。特に、地域中核医療機関の様々な診療機能の質と医療への地理的アクセスの公平性を可視化し評価した。
研究方法
〔医療の質・安全の充実度の評価〕日本全国の百数十医療機関から京都大学医療経済学教室が主催する「医療の質と経済性の評価プロジェクト」であるQIP (Quality Indicator/Improvement Project)に提供されたDPCデータを解析に利用した。現在の診療を診療ガイドラインとの推奨と照合し評価した。今回検討の対象とした疾患は、卵巣がん・乳がん・子宮頸がん・心不全・肺炎である。さらに薬剤使用、周術期の予防的抗生剤投与および血液製剤使用に関する情報を抽出し、使用頻度や使用量を病院毎・診療科毎に患者リスクで調整した使用量を評価してその適切性との関連を検討した。
〔医療への地理的アクセスと必要資源の評価〕救急車搬送受入実績のある病院を基点とした運転時間アクセス圏と人口の地域分布とを対比させることにより,救急医療への地理的アクセスの公平性を地理情報システム (GIS)にて県境を含めて都道府県別に描写して評価した。
結果と考察
 明確なエビデンスが確立された診療領域では、DPCデータを利用して計測されたガイドラインの遵守率などを、診療の質の評価指標として利用できる具体事例を示した。また明確なエビデンスがない場合でも、血液製剤や抗生剤の使用量のように、適切な方法で患者リスクを調整し、医療機関間比較を通じてこれらの薬剤師用量の多寡を妥当に評価できる。
 また、救急車搬送受入実績病院からの運転時間アクセス圏と人口の地域分布の可視化を行ない、救急医療への地理的アクセスの公平性の評価が視覚的に可能となった。各都道府県において、地理的アクセスの改善が求められる地域や都道府県間の連携が求められる地域が具体的に明示された。
結論
 今回の検討の結果、DPCデータを利用してさまざまな診療領域で診療プロセスや医療資源消費を妥当的に評価できることが示された。また、GISを利用した救急医療への地理的アクセス評価により、アクセスの悪い地域が具体的に明らかとなった。これらの手法は救急医療提供体制等の地域医療システムのあり方を検討するにあたって活用可能である。

公開日・更新日

公開日
2009-04-06
更新日
-